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産後のこころ(マタニティ・ブルー)

Q. 不妊治療までして授かった息子が邪魔に思え、産んだことを後悔しています。 (2015.12)

  • (妊娠週数・月齢)産後

今年8月に男の子を出産しましたが、産んだことを毎日後悔しています。もっと言えば、妊娠したときから後悔しています。たとえば、とてもよい天気の日、「この子さえいなければ自由に好きなところへパッと出かけられるのに」と思ったり、とにかく息子の存在が邪魔です。育児は夫と実母の手助けもあり、「数時間見ているから自由に出かけておいで」とも言ってくれるのですが、そうすると今度は家に帰るのが憂鬱でたまりません。不妊治療までして授かった子なのにどうしてこんなふうに考えてしまうのか、自分でもわかりません。どうすれば気持ちを立て直し、素直に息子を愛せるようになるでしょうか。

回答者: 帆足暁子先生

 毎日、後悔をするだけでも十分につらい日々でしょう。それなのに、どうすれば気持ちを立て直して素直に息子さんを愛せるようになるのかと思っていらっしゃる。こんなにつらいことはありません。

 あなたは、自由になりたい気持ちと息子さんへの気持ちを変えなければならないという両方の思いのなかで、毎日を過ごされているのですね。不妊治療までして授かった子なのに邪魔だと思ってしまう。そして、どうしてそう考えてしまうのかご自分でもわからない。

 でも、あなたが妊娠したときから後悔していること、そして息子さんを邪魔だと思っていることは事実です。そして、あなたがそう思わずにはいられない理由が必ずあります。

 あなたは、なぜ不妊治療をされたのでしょうか。あなたがほんとうに望んだことだったのでしょうか。その治療はあなたにとってどういう体験でしたか。あなたの後悔は、もしかしたら、その頃から始まっているのかもしれません。

 もし、あなたがほんとうには不妊治療を望んでいなかったとすると、いまのあなたの状況は理解できます。なぜなら、自分が望んだ決断でない場合、少しでも予想と違うことが起きてくると、そのこと自体を引き受けていくことが難しくなるからです。反対に、自分がほんとうに望んで出した決断には、予想外の結果が起きたとしても、自分の責任において引き受けていくことができます。

 でも、あなたが望んだ不妊治療だったとしたら、妊娠したときまでに、あなたの決断を変える何かが起きたのだと思います。それは何でしょうか。

 妊娠するために行動の一つひとつに干渉されたり、体調が不安定になって長期に入院安静を強要されたり、あなた自身のことよりも子どものことばかりが優先されたり、あなたの思いを聞かずに子どもの成長イメージが語られ続けたり……現実の生活にはさまざまなことが起きてきます。

 あなたの文面にある「この子さえいなければ自由に好きなところにパッと出かけられるのに」という思いから、いまのあなたにはそれができないのかもしれないと推察します。そして、「育児は夫と実母の手助けもあり」「数時間見ているから自由にでかけておいで」と言われても、「今度は家に帰るのが憂鬱でたまりません」と書いていらっしゃることから、あなたのつらさは「誰かの手助けがあれば楽になる」というような、一般的な子育て支援では解消しないのだと思います。

 では、どうしたらよいでしょう。
 まずは、あなたの気持ちをつらくしていることの理由を探します。そして、あなたご自身が「不妊治療までして授かった子どもであっても邪魔に思ってよい」と受け入れます。なぜなら、それはいまのあなたのありのままの思いだからです。ありのままの思いほど尊重されていいものはありません。

 そして、あなたご自身の「息子は邪魔」という、いまのありのままの思いの根幹にある思いときちんと向き合い、そこにある理由を見つけます。見つけて自分の「つらさ」に正当性がもてると、つらさは解消していきます。

 あるいは、あなたご自身の思いを立て直していくために、「子どもがいても自由に好きなところにパッと行く」ことは「してよいこと」と言い聞かせることを、数回試すのもよいかもしれません。また、「家に帰るのが憂鬱」になりそうであれば、「次に、いつまた出かけられるのか」「次はどこに行こうか」などと楽しい気持ちになれるような計画を立て、シミュレーションすることもよいと思います。

 妊娠されたときからの後悔……長い月日を過ごされてこられました。でも、こうしてSOSが出せるということは、もう、そこから抜け出してよい時期だということです。あなたはちゃんとご自分の進む方向を見つけています。それでよいのです。