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歯とお口のケア

Q. 1歳1か月、まだ歯が生えてきません。 (2016.10)

1歳1か月の子の歯について質問です。いまだに1本も歯が生えてこないのですが、大丈夫でしょうか。10か月健診の時に医師に相談したところ「問題ないです。ゆっくり生えてきます」と言われましたが、心配になってきました。歯が生えないということはありますか? レントゲンを撮れば、生えるかどうかわかりますか?

回答者: 井上美津子先生

 1歳を過ぎても歯が生えてくる様子がない場合は、そろそろ歯科受診を考えてみる必要が出てきます。

 乳歯の生える時期には個人差があり、半年以上の幅があります。生後6〜8か月頃に最初の乳歯(ほとんどが下の前歯です)が生えてくる子どもが多いのですが、早めの子どもでは生後4か月頃に、遅めの子どもでは1歳頃に生えてきて、このくらいは平均的です。なかには1歳4、5か月で生えてくる子どももみられますので、1歳1か月ということですと、まだ平均的な生える時期から大きくはずれてはいないと思いますが、そろそろ心配でしょうね。

 実際には生えていないけれど、前歯の部分の歯ぐきに膨らみが出てきていたり、指で触ると歯ぐきの下に少し硬いものが触れる感じがあるようでしたら、歯が生えてくる前兆と考えられます。もうしばらく様子をみて、歯が生えてくるのを待ってもいいでしょう。

 とくにそのような膨らみがみられないようでしたら、何らかの原因で歯が生えるのが遅れているか、または乳歯が先天欠如の場合が考えられます。そろそろ歯科を受診して、相談してみてもいいでしょう。エックス線写真(レントゲン写真)を撮ってもらうと、乳歯があるかどうかが分かります。ただ、1歳のお子さんのエックス線撮影は、身体や頭部を抑えて動かないようにしなければならないので、難しいところがあります。できれば小児歯科専門医に診てもらえれば、その後の相談もスムーズにできるでしょう。

 エックス線写真で歯が認められても生えてくるのが遅い場合は、全身の発育と関連している場合があります。早産ですと修正年齢に戻して歯の生える時期を考慮した方がいいですし、代謝異常などの全身的な病気があると、全身の発育や歯の発育が遅れることがあります。また、とくに何の原因もなく歯の発育だけが遅れることもありますので、歯があることが確認されたら、まずは生えるのを待ちましょう。ただし、前歯が生えないうちに奥歯が先に生えてくるようなことが起きた場合は、生えない原因が局所的にないかどうか調べる必要があるかもしれません。

 もし、エックス線写真で歯が確認されない場合は、乳歯の先天欠如(もともと歯がつくられなかった)として対応を考えていく必要があるでしょう。前歯を含む多数歯が先天欠如の場合を「無歯症(部分性、全部性)」といい、歯科でのフォローが必要です。全身的な病気(「外胚葉異形成症」という毛髪・眉毛や汗腺の欠如を伴う病気など)と関連している場合もありますし、とくに全身的な問題はなく歯だけに限局している場合もあります。もし「汗をほとんどかかないで、発熱しやすい」などの症状を伴う場合には、小児科を受診してみてください。

 乳歯がない場合の歯科的な対応としては、1〜2歯くらいでしたら乳歯列のうちはそのまま様子をみて、永久歯の生え換わり後に対処します。多数歯の先天欠如が疑われる場合は、定期的にチェックしていき、子どもの協力性が高まったら顎全体のエックス線写真を撮って歯の数や発育状態を確かめ、状況に合わせて義歯(入れ歯)などによる咬み合わせや咀嚼の改善を図る必要があります。乳歯が先天欠如していると、永久歯も欠如する確率が高いため、長期的に経過をみていく必要があります。定期的に受診していくためには、かかりつけ歯科を持たれるとよいでしょう。多数歯欠如のお子さんの入れ歯は、乳歯でも保険が適用されますので、相談してみてください。

 また、乳歯が生えるのが遅かったら、多数歯の先天欠如がある場合には、食事面でも対応が必要です。「前歯で咬み切り、奥歯で噛みつぶす」という「歯を使った咀嚼」がうまくできない子どもに対して、年齢に合わせて食形態をどんどんアップさせてしまうと、うまく処理できないで食べにくい食品が増えてしまいます。それでも食欲が勝ったお子さんは「噛まずに丸飲み」することを覚えてしまいます。舌や歯ぐきで処理しやすい程度の硬さや、適度な大きさに調整してあげる対応が必要でしょう。