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家族関係・夫婦・ママ友

Q. 子どもの前で夫婦げんかをしないようにしています。 (2022.5)

  • (妊娠週数・月齢)1歳2か月

1歳2か月の子どもがいます。「両親がけんかしている姿を見せると、子どもの脳に悪影響がある」という記事を読み、子どもの前でけんかはしないように気をつけようと夫婦で話し合いました。そのため夫婦げんかを子どもに見せたことはありませんが、夫婦関係に悪影響を及ぼしている気がするようになりました。というのも、出産前までは何でも話し合う夫婦で、とくに嫌なことはその場で伝えて即解決。口げんかになっても問題を持ち越したことはありませんでした。けれども、いまは子どもの前では、ヒートアップして口論に発展するリスクを恐れ、お互い言いたいことをぐっとがまんしています。結果、両者とも不満が解消されずに蓄積。あとで話そうと思っても、子育てに追われ夜にはぐったり、夫婦でゆっくり話し合う時間も取れません。話し合いの途中で夜泣きが始まり、そこで中断~終了なんてことも。夫婦げんかを子どもに見せたくないと思うあまり、夫婦のコミュニケーションがうまくいかなくなってしまったと感じています。お互いに、これまでのようなコミュニケーションがしたいと思っているのですが、そもそも子どもの前でけんかをしてはいけないというのはどのレベルのけんかでしょうか。暴力や罵り、蔑み等は当然NGだとしても、討論のようなものでもだめなのでしょうか。

回答者: 高橋惠子先生

 まず、「両親がけんかしている姿を見せると、子どもの脳に悪影響がある」というのは正確な情報ではありません。たしかに、「乳幼児期に親から暴言による虐待を受けていた青年の脳の画像に異変がみられた」という研究論文があります。しかし、この研究を子どもの発達を考えるうえで参考にするには、2点について注意が必要だと思います。

 第1に、この論文の結果を動かぬ証拠だとするためには、同じ結果を示すデータがもっと必要です。データが不足しています。そして、第2に、この論文が問題だとしたのは、子ども自身が虐待されている場合です。質問者が読まれたという記事では、この研究結果を拡大して、面前DV(親が子どもの前で、配偶者に暴力をふるったり、暴言を吐いたりするドメスティック・バイオレンス)を避けるようにと述べていたのかもしれません。いずれにしろ、紹介された論文は夫婦の話し合いを制限するべきだといっているわけではありません。子どもへの虐待や夫婦間のDVを見せたときの危険性について問題にしているのです。

 しかし、投稿された質問を拝見して、「ヒートアップして口論に発展するリスク」のある夫婦の話し合いの仕方を、この機会に変えてみてはどうかと考えました。夫婦間のコミュニケーションは大切ですし、明るく元気なご夫婦間の会話は頼もしいですが、そのような両親の大声が、1歳2か月の子どもには時として不安や恐怖を引き起こすことが案じられます。まず、ご夫婦とも静かに話すことから始めてはいかがでしょう。大声を控え、相手の話の内容をよく聞いて、わかりやすく説明することを心がければ、議論がヒートアップすることもなくなるでしょう。口論ではなくなるのではありませんか。

 1歳2か月というとお子さんはそろそろ言語を使えるようになります。子どもからの発話はまだ少ないでしょうが、聞いた言葉は急速に理解できるようになります。まだ理解しないであろうと子どもの目前で悪口を言っていたら子どもが怒って泣いたという報告もあります。子どもの能力は見かけよりも高いのです。

 お子さんは言語を使う大切な発達の時期に入っています。したがって、親は子どもの言葉に耳を傾け、ゆっくりわかりやすく話しかけたり説明したりすることが必要です。親は言葉をどのように使うかのお手本を見せていることになります。お子さんが言葉を使うことが好きになるように、上手に言葉が使えるように、両親も言葉を大切に楽しく使うことが必要です。夫婦間のコミュニケーションもやめるのではなく、やり方を変えることを心がけてはいかがでしょう。