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病気・予防接種

Q. 生後6か月の子の母。妊娠中の検査でATL値が高いのに気づかず母乳を与えていました。 (2008.12)

  • (妊娠週数・月齢)6か月

生後6か月の子の母親です。先日、母子健康手帳の妊娠初診時の血液検査の結果を見返していたら、ATLの数値が高いことに気づきました。調べてみると白血病になる可能性があり、母乳から感染するとのこと。血液検査をした病院でも、里帰り出産をした病院でも検査結果について何も言われませんでしたし、退院時も母乳を与えるように指導を受けていたので、生後5か月まで混合で母乳を与えていました。子どもに感染させてしまったのではないかと心配です。検査などをしたほうがいいでしょうか。それはいつ、どんな場合に病院に行けばいいでしょうか。

回答者: 多田裕先生

 ATLというのは成人T細胞白血病の略で、血液中のリンパ球に「ヒトT細胞白血病ウイルス」というウイルスが感染して起こります。このウイルスに感染している人はATLウイルスのキャリア(感染は持続しているが症状のない人)なのですが白血病ではなく、血液中の抗体が陽性なだけなので、こうした人を「ATLウイルス(抗体)陽性」を略して「ATL(抗体)陽性」と呼ぶことがあります。B型肝炎やエイズなどと同様に血液や体液を介して感染し、主な感染ルートは輸血と母乳であることがわかっています。

 このウイルスに感染しても必ずしも白血病になるわけではなく、50歳を過ぎてから一部の人(1年間に数百人にひとりといわれています)が発症し、加齢とともにその累積人数が増加します。平均寿命が60歳前後のころは発症せずに亡くなる人が大半で、ウイルスの存在も知られていませんでした。平均寿命が長くなるにつれて問題とされるようになり、1980年代、日本で初めてウイルスが発見されてからは輸血に使う血液は厳重な検査が行われています。また、母子間の感染を防ぐために妊娠初期の血液検査で「ヒトT細胞白血病ウイルス」に対する抗体の有無を調べ、母親が感染している可能性があれば母乳の与え方に注意します。

 というのも、「母乳を1年間飲ませると4分の1の確率で赤ちゃんが感染し、3〜4か月までだと確率が半分になる」ことがわかったからです。同時に、まったく母乳を飲まなくても数%は感染が起こることもわかっています。

 抗体の測定方法はさまざまで、抗体が陽性でも抗体価が低く、精密な検査方法では陰性となる「擬陽性」のこともありますが、ご相談者は抗体が陽性だったものとしてお答えします。

 質問では、生後5か月まで混合栄養ながら母乳を与えていたことを心配しておられますが、母乳の中止は感染を防ぐために有効である一方、とくに新生児期から生後3か月ころまでの赤ちゃんにとって母乳はさまざまなメリットもあるので、お母さんがキャリアでも必ずしもやめなければならないものでもないと、私は考えています。しかし、長く母乳を飲ませることは感染の可能性を高めますので避けたほうがいいと思います。この方は5か月で混合栄養での母乳をやめているので、比較的感染しにくいと考えられます。

 検査は、満1歳頃までは母親からの移行抗体があるので赤ちゃんの検査が陽性でも感染しているとは結論づけられません。ご心配なら、1歳を過ぎてから病院で血液検査を受けると赤ちゃん自身の抗体の有無が判明するでしょう。

 しかし、このウイルスに感染しても若いうちから症状が出るのはごくまれで、発症するのは50歳以降のごく一部の人です。あまり心配しないでよいと思います。

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