令和3年度 受賞者所感

愛知県・歯科衛生士 小栗智江子(おぐり ちえこ)愛知県保健医療局

 このたびは、栄誉ある母子保健奨励賞を賜り、身に余る光栄に存じます。これまで愛知県の母子保健活動の道筋を作っていただいた諸先輩方、そして一緒に歩んできた市町村や県保健所の皆様に深く感謝しております。

 地域保健法全面施行から20年以上経過したいま、愛知県の幼児・学童の歯の健康状況は全国トップレベルを維持しています。住民に身近なサービスは県保健所から市町村へ受け継がれ、さらに市町村による地道な活動の成果であると自負しています。

 愛知県の強みは、歯科衛生士を配置する市町村と県保健所が多いことで、全国の行政機関に勤務する歯科衛生士数の10分の1を占めています。専門職のマンパワーはもちろんですが、日々の活動の積み重ねと県内情報の共有により、母子保健に携わる多職種の意識の高さと連携が大きな推進力となっています。

 特に近年、歯・口腔の視点が欠かせない母子保健ニーズが増えています。そのため、多発むし歯を持つ子どもへの対応や虐待予防の観点を含めた親子支援のほか、口腔機能の評価と支援、医療的ケア児の口腔健康管理、仕上げみがきをする親の増加に向けた調査研究など、市町村と県保健所の役割を発揮した重層的な取り組みを進めているところです。

 今後もこの良好な環境を維持していくために、歯科衛生士の人材育成体制の仕組みづくりが必須です。現在、県保健所では6割、市町村では3割が新任期に該当し、世代交代の波に直面しています。多くの職場で一人職種であり、身近に相談できる同職種の先輩がおらず、専門分野のOJTが成り立たないなどの難しさがあります。また、市町村にとって母子保健活動は最も身近な業務である一方、県保健所は母子に直接関わる実務経験のない中で市町村支援が求められ、伸ばす専門能力が異なります。試行錯誤を重ねながら、時代と地域の要請に応えられる歯科衛生士の後輩を育て、すべての子へ歯と口の健やかな育ちを届ける母子保健活動に貢献していきたいと思います。