令和3年度 受賞者所感

沖縄県・助産師 湯本律子(ゆもと りつこ)公立久米島病院

 このたびは栄誉ある母子保健奨励賞を賜りまして、身に余る光栄に存じます。これもひとえにご推薦いただきました元沖縄県立看護大学の照屋先生はじめ、いつも見守り、ご指導いただいている看護部長、沖縄県看護協会、沖縄県助産師会の諸姉の皆様のお力添えの賜物と深く感謝申し上げます。今回の受賞は、久米島町の現状を知っていただく機会となり、また同僚の助産師5名の恊働、町役場関係各位の栄誉であると受け止めております。

 沖縄本島から西に約100kmに位置する久米島は、人口約7,700人の有人離島で年間出生数は60件前後、合計特殊出生率は2.31と全国平均を上回ります。産婦人科医は常駐せず、島では出産の取り扱いがありません。

 私は、沖縄の綺麗な自然と海に魅了され、11年前に県外から久米島に移住しました。のんびりした島時間を感じたのもつかの間、産婦人科医不在の島で、助産師の役割、使命の大きさにプレッシャーを感じました。

 まったく知り合いがいない環境で、当初は本島の助産師との顔の見える関係作りのため、積極的に島外研修に参加し交流を持ちました。結果、いまでは島の妊婦さんの継続ケアにつながっています。島唯一の病院では全科、各年齢層にオールマイティに関わります。その中で、助産師として妊産婦さんが安心安全な妊娠生活が送れるようにセルフケアサポートはもちろん、異常発生時は、医師との連携、島外専門病院との連携等、スムーズな搬送に心がけます。さらに、久米島町の委託事業である新生児訪問、産後ケアをはじめ、地域でのベビーマッサージや小・中学生を対象とした命の授業など院内のみでなく院外での母子保健の啓蒙活動など積極的に取り組んでいます。

 2020年には地域と病院連携強化を目的に初めて久米島BLSO開催も叶いました。

 今後、島の狭小性を有利に捉え直し、顔の見えるつながりを大切に、他職種とのさらなる連携強化、不可能を可能にする、島の特性を鑑みた包括的妊産婦ケアを発信していきます。