母子衛生研究会からのお知らせ|公益財団法人母子衛生研究会"

新しい日本脳炎ワクチン接種について Q&A

2009年8月 7日

2011年4月追記 日本脳炎の予防接種(平成7年~18年度に生まれた方へ) (HP内リンク)

以前、6月から日本脳炎新ワクチンの供給が開始されたことをこちらでお知らせしました。

今回は、
 ・そもそも、なぜ日本脳炎予ワクチンをを接種したほうがよいのか
 ・1回目に従来の日本脳炎ワクチンを接種した場合、2回目接種はどうすればよいのか
・・・など、いくつかの疑問について、月刊「母子保健」2009年8月号で渡辺博先生(東京大学大学院医学系研究科小児医学講座講師)にご回答いただきましたので、その内容をご紹介します。

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《新しい日本脳炎ワクチンの接種が開始》   回答:渡辺 博先生

 従来のワクチンで副反応の可能性が懸念されたことから、2005年5月から日本脳炎の予防接種は積極的勧奨が控えられていましたが、2009年6月より発売が待たれていた新しいワクチンでの接種が再開されました。

Q. なぜ日本脳炎のワクチンを接種するの?

A.  3歳以降で日本脳炎ワクチンが未接種のお子さんは、すぐにでもワクチン接種を受けることをお勧めします。日本製の日本脳炎ワクチンは優秀なワクチ ンで海外でも高く評価されています。副反応が他のワクチンと比べ著しく多いといったことはこれまでなく、現在広く接種されているDPTワクチンと同程度と 考えて間違いありません。日本脳炎ウイルスは現在も日本国内の多くの豚から検出されています。また日本だけではなく広く東南アジア全体に分布しています。 日本脳炎という病気は今現在も感染の危険が存在します。発病したあとでワクチンを接種しても間に合わないのです。

Q. 感染しても発症する確率は低いから接種しなくてもよい?

A. 日本脳炎はたしかにウイルスに感染しても発病する確率は高くない(1,000人に1人程度)といわれています。しかし発病した場合は死亡する確率、 および助かっても後遺症を残す確率が極めて高いことがわかっています。さらに発病した場合は現代の医学をもってしても有効な治療法が何一つ存在しません。 ワクチンの予防効果は極めて高いので、ぜひ接種するべきワクチンと考えます。
 新しい細胞培養による日本脳炎ワクチンの副反応としては接種局所の発赤や腫れおよび発熱が、臨床試験時に5%以上の接種者でみられています。この辺は DPTワクチンと同程度と考えて差し支えないでしょう。頻度は低いが重篤な副反応に関しては、まだ新ワクチンが多人数に接種されていないので多いとも少な いとも今は言えません(これはすべての新薬に共通の問題です)。今後接種が広まれば正確な頻度が明らかになるでしょう。

Q. 同じ人が新しいワクチンと従来のワクチンを接種してはいけない?
   まだ1度も受けていない場合はどうすればいい?


A. 日本脳炎ワクチンの1期を従来のワクチン(マウス脳ワクチン)で受けて、2期接種が厚生労働省の接種勧奨差し控え処置のためできていないお子さんが 多数存在します。このようなお子さんが新製品(細胞培養ワクチン)で2期接種を受けた場合、期待通りの効果が得られるかどうか(得られると予想されてはい ますが)実証するための臨床試験が行われることになっていて、2010年頃には結論が出る予定です。そこまで待つか、それ以前に接種する場合は従来のワク チンで2期接種を受けることがいまは勧められています。1期に接種したワクチンはすでに体内には残っていないので、従来のワクチンと新製品ワクチンが体内 で混ざり合うことはありません。このために副反応が増強するといったことも予測はされていません。

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 (以上、月刊「母子保健」2009年8月号より)