病気・予防接種
Q. 生後10か月。ときどき白や黄色など色の薄いうんちをします。 (2013.2)
- (妊娠週数・月齢)10か月
生後10か月の娘です。最近、白や薄い黄色など色の薄いうんちをします。でも、普通のうんちもします。ほかに吐いたり下痢したりという症状はなく、いつもと変わらず元気です。心配になり病院で診察を受けましたが、胆汁の出る量が毎回違うから薄くなったりするだけで心配いらないと言われました。しかし、胆汁が流れにくくなっていないか、ほんとうに大丈夫なのかと不安です。10か月の子がこうしたうんちをするのは、よくあることなのでしょうか。
回答者: 多田裕先生
確かに、うんちの色は赤ちゃんの健康状態を知るうえで大切な判断材料のひとつです。まず、その理由から説明しましょう。
赤ちゃんのうんちは通常、黄色い色をしています。というのも、われわれの血液や筋肉は常に破壊され、新たに再生されたものと少しずつ入れ替えられているのですが、その過程でビリルビンという黄色い物質が産生されます。これが肝臓で処理されて胆汁となり、胆のうに溜められ、十二指腸から腸へと流れて便に混じって排出されます。つまり、便の色は便に混じって排出されるビリルビンの色素によるものなのです。
ビリルビンは酸化すると緑色に変わります。このため、腸内の細菌のバランスが変化したことで酸化され、緑色になることがあります。以前はその後に下痢や嘔吐をともなうことがあったので、「緑便」として心配しました。しかし、医療的な環境整備が進んだ現代の日本では、深刻な健康被害を及ぼすようなことにはならないと考えていいでしょう。
それから、生後間もない赤ちゃんのうんちが白っぽくなって、クリーム色や灰色になることがあります。このような赤ちゃんでは、黄疸を伴い前述した胆汁の流れのどこかに問題がある場合があり、ときには「胆道閉鎖症」という病気が隠れていることがあります。この病気は赤ちゃんの命にかかわる重大な病気で、外科的手術など適切な処置を速やかに行わなければなりません。その早期発見に役立てようと、昨年4月から母子健康手帳に便カラーカードが添付されることになりました。
胆道閉鎖症以外にも炎症や腫瘍などにより、肝臓や胆道、胆のう、十二指腸などに何らかの問題が出てビリルビンの処理や排出がうまくいかなくなり、便の色が白っぽくなることがあります。この場合、排出されないビリルビンが血液や皮膚のなかに溜まってしまうため、黄疸などの症状が出ます。このほかに、腸の感染などで白い下痢便が出ることがあります。
また、黄色いうんちに白いプツプツが混じることがありますが、これは脂肪の塊です。脂肪の消化が悪いときや、赤ちゃんの脂肪の消化吸収能力と摂取した量がアンバランスになったときによく起こりますが、あまり心配ない場合がほとんどです。
さて、ご相談の赤ちゃんの場合について考えてみましょう。
生後10か月の赤ちゃんで、最近になって白っぽいうんちをするようになったとのこと。この場合、胆道閉鎖症の疑いはまずないと考えていいでしょう。というのも、胆道閉鎖症は多くの場合、先天的あるいは新生児期に発症するもので、生後10か月まで正常だったのに急に深刻な問題を抱えることはないからです。
次に、肝臓や胆のう、十二指腸など消化器管のどこかに炎症やウイルス感染があり、ビリルビンの処理がうまくいかない可能性があるかどうかですが、このような場合には黄疸が強くなり血液検査で問題が発見されたり、下痢をしたりするので診察した医師が見逃すことはまずないでしょう。
こうしたことから、主治医の先生が言うように胆汁の出る量の変化によるもので、とくに心配のないものだろうと考えます。