病気・予防接種
Q. 生後5か月。解熱剤を使用しましたが不要だったのではと後悔しています。 (2013.4)
- (妊娠週数・月齢)5か月
生後5か月です。38.4℃の熱が出て小児科を受診したところ「突発性発疹だろう」と言われ、アタラックスシロップと頓服のカロナールシロップを処方されました。薬剤師さんから、頓服は38度台の後半になって使用するよう説明を受けました。帰宅後、38.9〜39℃の熱が出てあせって頓服を服用させたところ、1時間後には36.4℃に熱が下がり、強い効き目に驚きました。その後ネットなどで確認すると、頓服はあまり使用せずに免疫をつけたほうがいいとも書いてあり、翌日先生に確認すると服用の必要はなかったと言われました。きちんと確認せずに使用してしまったことを後悔しています。今後、発熱したときの対応の仕方や、解熱剤の正しい使い方を教えてください。また、本来は必要のない薬を使用してしまったことの影響についても教えていただければと思います。
回答者: 横田俊一郎先生
解熱剤を使ってしまったことで悩んでいらっしゃるようですが、後悔する必要は何もありません。解熱剤は熱を下げる薬であって、病気を治す薬ではありませんので、むやみに使うことは控えたほうがよいのは確かです。しかし、使ってしまったから大きな害があるかといえば、そんなこともないのです。
病原体がからだに入ることによっていろいろな免疫反応が起こります。その反応の結果つくられる「発熱物質」が脳の体温中枢に働きかけることによって、感染症のときの熱は起こります。病気によって熱の出方はさまざまですし、解熱剤がよく効くことも、逆にあまり効かないこともあります。
熱は病原体の増殖を抑え、病気を治すのに有利に働くことが多いのですが、あまりに高い熱が続くと、水分がとれず体力を消耗することによって、かえってからだに不利になることもあります。ですから、熱のために困ったことがあったら(眠れない、食事がとれない、頭や身体が痛い……など)、解熱剤を使ってよいのです。
解熱剤を使うと病気の治りを遅らせるといわれることもありますが、学問的にそれがしっかり証明された報告はありません。病気のときに何もしないほうが強い免疫ができるというのも、ある意味で正論ではありますが、それはインフルエンザにかかっても何もしないほうがいい、という考え方につながっていきます。しかし、インフルエンザに何もしないでいると肺炎や合併症が増えることになるので、一概にそれが正しいとはいえないのです。
解熱剤の正しい使い方について、「熱のために困ったことがあれば使ってよい」と私は説明しています。40℃くらいの高い熱でも機嫌が良く、よく寝ているときには使う必要はありません。また、38℃くらいでも頭が痛い、眠れないというときには使ってよいのです。
ただし、子どもに安全に使える鎮痛解熱剤は、アセトアミノフェン(カロナールなど)と、イブプロフェン(ブルフェンなど)に限られています。アスピリン、ボルタレンなど、それ以外の解熱剤は水痘やインフルエンザのときに脳症を引き起こす可能性があり、子どもには使用しないことに決まっています。いわゆる総合感冒薬にもこれらの薬が含まれていることがあるので注意が必要です。
「本来は必要のない薬を使用してしまったことの影響」はなかなか難しい問題です。ご相談の場合、突発性発疹を疑っているのであれば、本来は必要のなかった薬はカロナールではなくアタラックスであるともいえます。アタラックスは鼻水を減らす、子どもを鎮静するなどの効果はありますが、突発性発疹には必要ではありません。しかし、ゆっくり眠れない……などの症状があり処方されたのかもしれません。
一般的なかぜを治す特効薬はありませんので、処方される薬の大半は対症療法を目的としたもので、「本来は必要のない薬」なのです。対症療法が必要かどうかは、子どもの症状の重さにもよるでしょうし、保護者の心配の程度にも関係しているかもしれません。ですから、「本来は必要のない薬」ということを定義するのも難しいのです。
一方で、一般的に使われている薬は、用量を守って使えば問題となる副作用も多くはありませんので、薬を飲むことに神経質になりすぎることもありません。昔は医師の処方するままに薬を服用していましたが、情報化の進んだ現代では、よく説明を聞いて納得して薬を飲むことも大切なことになってきました。医師や薬剤師とのコミュニケーションを増やし、よく理解して薬を飲んでほしいと思います。