発育・発達
Q. 2歳2か月の男の子。自閉症スペクトラムと診断されました。 (2013.5)
- (妊娠週数・月齢)2歳
2歳2か月の息子が、自閉症スペクトラムの傾向があると診断されました。「自閉症と普通の間を行ったり来たりしている状態」と言われ、混乱しています。来月から母子教室に通い、少しずつ集団に慣れていくよう訓練することになっています。母親としてこれからどう子育てしていけばいいのか、わかりません。自閉症と普通の間を行ったり来たりしている状態、というのは、訓練すれば自閉症傾向が落ち着いてくるということでしょうか。また、今後どのように息子に接していけばいいのか、具体的な方法があれば教えてください。
回答者: 帆足暁子先生
いま2歳2か月。診断を受けられたということは、これまで育ててくるなかで何か気にかかることがあったのではないかと推察いたします。「自閉症と普通の間を行ったり来たりしている状態」と言われても、確かにどう捉えたらよいのか、混乱します。不安になられていることと思います。これからどのように考えたらよいのか、整理してみます。
ご質問は3つあると思います。ひとつは「自閉症と普通の間を行ったり来たりしている状態は訓練すれば落ち着くのか?」、そして「母親としてこれからどう子育てをしていけばいいのか?」、最後のひとつは「息子さんへの具体的な接し方」です。
まず、最初のご質問です。「自閉症スペクトラム」は「自閉症状が非常に強く生活に支障がある状態」から「自閉症状は比較的軽く生活に支障のない個性に近い状態」まで連続態のなかで捉えられます。お子さんはたぶん、いわゆる「自閉症状」の特性がすべての面に強く出ているわけではなく、状況や環境によって「自閉症状が出たり出なかったりする」ということだと思います。練習すれば(あまり、「訓練」という言葉は好きではないので)、できるようになることもあります。
たとえば、知らない場所や知らない人など不安の強い環境では「こだわり」の強い状態が目立ち、パニックになることもありますが、自宅や祖父母宅などの慣れた環境では安心して「こだわり」などが目立たなくなります。「慣れる」ことも「練習」のひとつです。
また、極端な偏食があって食べられるものがチョコレートしかなくても、保育園などでの保育士の働きかけや環境の影響によって「練習」し、食べられる種類が少しずつ増えていきます。誰かと一緒に遊ぶことは絶対にダメで、ひとりでプラレールを走らせて「ガタンガタン」と遊んでいるだけだったのに、少しずつ練習することで、お友だちと一緒に遊ぶこともできるようになります。
ですから、ひとつめのご質問の答えは、良い関わりの中で生活に支障のない状態に変わってくること、つまり自閉症傾向が落ち着いてくることはあります。
そして、2つめのご質問の「母親としてこれからどう子育てをしていけばいいのか」です。自閉症の傾向があってもなくても、大切なことは子どもとの安定した愛情の絆です。たくさん愛してください。愛されている実感は、自閉症の傾向がある場合にはなかなか築きにくく、ほかの子どもよりも時間はかかりますが、一貫して穏やかに、繰り返し関わり続けることできちんと絆をつくることができます。お子さんを「自閉症スペクトラムの子ども」として捉えるのではなく、「大切な○○くん」としてかわいがってください。
ほかの子との違いを感じることもあるでしょう。でも、どの子もみんな違ってよいのです。もし、あなたがほかの子といつも比較して「同じことができないとだめ」と言い続けると、どんな子どもでも能力を発揮できず、自信のない子どもになります。でも、自閉症傾向がある子どもでも「いまのあなたでいいよ。あなたのペースで成長していけばいいよ」と言って、「いまの良さ」を認めて育てれば、自信のある、もっている能力以上のものを発揮できるような子どもになります。「発達に問題がある・ない」より、子どもは愛されている実感があればもっとも良く育っていくのです。
お子さんと一緒にいて、あなたご自身も困ることが多いと思います。でも、いちばん困っているのはお子さんだということを忘れないでください。
お子さんを育てていて不安になっても、これから母子教室に通われるのですから、こんなに安心なことはありません。だって、お子さんを実際に見ている専門家がアドバイスをくれるのです。不安になること、教室でのアドバイスでよくわからなかったことをどんどん質問して、お子さんのため、あなたのために役立ててください。母子教室に通うことは良いチャンスです。あなたのお子さんの特権です。十分に活かしてください。
3つめの「息子さんへの具体的な接し方」です。実は、お子さんにお会いしたり、あなたから困っていることなどのお話を聞いたりしないと、具体的な接し方のアドバイスができません。ですから、ここでは来月から開始される母子教室に期待してください、と言うことに留めます。
あなたが求めている「具体的な接し方」という点は、とても大切なポイントです。家庭では、どんな理論や抽象的なことを言われても役立ちません。役立つことは「具体的」なアドバイスです。質問されるときにはその点をきっちり聞かれるといいと思います。
特定の1枚のTシャツしか着ないような洋服へのこだわりは、同じ物の色違いを用意したことで7枚着られるようになったり、偏食の場合に「見た目」に影響を受けることもあるので、盛りつけ方を工夫したり食感を変えてみたりするだけでも食べてくれることがあります。
そして大切なこと。決してがんばりすぎないでください。疲れたら「母親役」はお休みして、休憩しましょう。お子さんを預かってくれる人や場所を前もって調べておくと便利です。同じようなお子さんを育てている親ごさんと話す機会をもつことで、楽になることもあります。
それから母子教室……いまは不安でドキドキだと思います。でも大丈夫。自分たちのために活用してください。