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Q. 1歳の女の子。脂腺母斑と診断され、手術の時期と方法について悩んでいます。 (2013.9)

  • (妊娠週数・月齢)1歳0か月

1歳になる娘です。生まれつき頭部にあざがあり、生後半年の頃、皮膚科で『脂腺母斑』と診断されました。国立病院の皮膚科に紹介されて診断を受けましたが、医師の対応に不安を感じております。医師の判断は、小学校前に局所麻酔で手術を行うのが妥当とのことですが、私たち親としては、局所麻酔は怖がって動いてしまうのではないか、できるだけきれいに治したいので、頭の皮膚が柔らかいうちに全身麻酔で手術をしたほうがよいのではないかと思っています。医師には『全身麻酔は大袈裟すぎる。怖がるうちは手術の時期ではない』と言われましたが、3、4歳頃に全身麻酔で手術をすることは体に負担があるのでしょうか。娘のために最善の方法を見つけたいと思います。ご意見をお聞かせください。

回答者: 多田裕先生

 1歳になるお子さんが「脂腺母斑」と診断されたとのこと。脂腺母斑とは脂肪を分泌する腺(組織)が固まってできた母斑(あざ)のことで、形はそれほど大きくなく、頭部にあることが多いようです。脂肪の分泌腺が固まったもので少し黄色っぽい色をしており、頭部にあるものではその部分に毛が生えません。

 成長するにつれて、表面がゴツゴツしてきたり、褐色に変化したり、思春期になって皮膚の脂肪分泌が盛んになると臭いがすることもあります。盛り上がってくることもありますが、多くの場合は良性腫瘍です。まれに悪性化することもあるようです。年齢が高くなると髪が生えていない部分を気にするお子さんもいるはずです。

 そうしたことから、いまは手術で切除してしまうことも多く、その点については担当の医師とご両親の考えは一致しているものと思います。

 では、その手術をいつ行うのか、全身麻酔と局所麻酔のメリットとデメリットをどう考えるのかという点について考えてみましょう。

 まず、麻酔ですが、近年、全身麻酔は安全に行えるようになっていて、事故や合併症が起こるリスクは少ないと考えていいでしょう。ですから、たとえ乳幼児でも治療のために全身麻酔による手術が必要な疾患があれば、怖がらずに積極的に受けることが大事です。しかし、全身麻酔は局所麻酔よりはリスクが大きく、呼吸の管理など専門の医師が注意して行わなければならない処置であり、患部への侵襲に加えて麻酔による負担もあります。

 一方、局所麻酔は全身麻酔に比べてからだへの負担は少ないのですが、ご質問にあるように小さいうちは怖がって動いてしまう危険があるため手術を行うのは無理でしょう。ある程度、聞き分けがよくなって本人が納得し、協力が得られるようになってから手術を行うことになります。それで主治医の先生は、手術の時期として小学校入学前を目途に考えているのだと思います。

 それから、「きれいに治すには皮膚が柔らかいうちに手術をしたほうがいい」という点については、ご指摘の通りだと思います。しかし、3、4歳頃と小学校入学前で手術の結果に大きな差が生じるとは思えません。

 これらの点を考えあわせると、私は主治医の意見はもっともだと思います。しかし、全身麻酔ででも少しでも早く手術をしたいというご両親の考え方も否定されるものではありませんし、そうした治療方針の病院もあるように思います。その場合には麻酔科も整備された医療機関を選ぶのがよいと思います。手術を実施してくださる皮膚科あるいは形成外科の専門の医師と十分に相談したうえで、納得のいく選択をしてください。