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病気・予防接種

Q. 6歳。蚊に刺されるとひどく腫れ、慢性活動性EBウイルス感染症が心配です。 (2011.10)

  • (妊娠週数・月齢)6歳

6歳の男の子です。以前から蚊に刺されるたびにひどく腫れ、水ぶくれになっていましたが、6歳になったいまも腕の太さが変わるくらい赤く腫れ上がります。3歳のときに伝染性単核球症にかかったのですが、インターネットで「伝染性単核球症」と「蚊のアレルギー」と検索すると「慢性活動性EBウイルス感染症」が出てきて、将来的にそれにかかったり悪性リンパ腫になる可能性が高いと書かれていて、とても心配です。聞きなれない病気で不安が大きいのですが、どんな病気なのか、また、予防法や治療法などについて教えてください。

回答者: 横田俊一郎先生

 蚊に刺されるとかゆみが生じ、赤く腫れてくるのは誰でも経験することです。このような反応が起こるのは、蚊が人を刺したとき、吸血する前に唾液を皮膚に注入し、それがアレルギー反応を引き起こすからです。一般的には即時型反応で数分後から赤味を持って腫れてきますが、数時間後には消えてしまいます。また、遅延型反応というアレルギー反応により、5〜6時間後から赤味やしこりが再燃し、数日で治るということもよく経験します。

 一方、刺された場所が水疱や潰瘍をつくったり、ときには発熱を伴ったりする重症な蚊アレルギーが存在することが知られています。海外での報告は多くありませんが、日本では比較的多く報告があります。これらの重症な蚊アレルギーを持った子どもたちの一部に慢性活動性EBウイルス感染症という病気が潜んでいることが判っています。

 さて、次は「慢性活動性EBウイルス感染症」の説明です。
EBウイルスはヘルペス属のウイルスのひとつで、日本人の90%以上が抗体を持っている、ごくありふれたウイルスです。ほとんどの人は気がつかれないうちに感染していますが、伝染性単核症という発熱、扁桃炎、頚部リンパ節腫脹を中心とした病気として発病することも時々あります。

 EBウイルスは一度感染すると、感染した人のリンパ球のひとつであるB細胞に潜伏感染し、唾液の中などにウイルスが排出されるようになります。以前は思春期に多くみられ、キスなどで唾液を介してうつることが判っていたので、「キス病」という名前で週刊誌に紹介されたこともありました。ごく一部の上咽頭癌や悪性リンパ腫がEBウイルスによって起こることがわかっていますが、ほとんどすべての人が感染していることを考えれば、ことさら心配する必要はないと言えます。

 一方で、EBウイルスがB細胞ではなくT細胞に持続感染することがあり、この場合にはEBウイルスを持ったT細胞が増殖し、さまざまな症状を起こします。3〜6か月以上も続く発熱、リンパ腫脹や肝臓、脾臓の腫れ、繰り返す肺炎や脳炎などの症状が特徴で、「慢性活動性EBウイルス感染症」と呼ばれます。

 診断は必ずしも容易ではありませんが、EBウイルス抗体価が異常に高いことなどが診断のきっかけとなります。この慢性活動性EBウイルス感染症では、10〜20年の経過中に症状が悪化したり悪性リンパ腫を併発したりして亡くなる方が少なくないことも判っています。日本ではおそらく年間数十例程度の発病があるのではないかといわれています。

 慢性活動性EBウイルス感染症と蚊アレルギーの関係については不明な点が多いですが、EBウイルスがT細胞に持続感染した状態で蚊に刺されると、重症なアレルギー反応が起こるのではないかという説もあります。慢性活動性EBウイルス感染症の治療法として確立されたものはありませんが、抗がん剤や免疫抑制剤、骨髄移植などが行われて、ある程度の成果をあげています。原因もよく判っていないので、予防法はありません。

 インターネットなどを検索してのご心配はよくわかります。しかし、蚊に刺されるたびによく腫れたり、水疱をつくったりする子どもはけっして珍しくありません。慢性活動性EBウイルス感染症は極めてめずらしい病気ですので、蚊に刺されるたびに高熱が出たり潰瘍をつくったりするのでなければ、心配し過ぎることはないと思います。

 どうしても心配であれば、大学病院や総合病院の小児科で一度相談してみるとよいでしょう。