家族関係・夫婦・ママ友
Q. 再婚の予定。娘と祖父母を引き離すことに罪悪感を感じます。 (2024.3)
- (妊娠週数・月齢)5歳
未婚の29歳のシングルマザーです。今年5歳になる娘がいます。子どもを産むと同時に実家に帰り、お世話になりっぱなしです。娘は祖父母が大好きで、祖父母からも大きな愛情を注いでもらっています。感謝してもしきれません。そして、私には2年ほどお付き合いをしている相手がいます。このたび同棲することを決心し、私と娘は実家を出て3人で暮らすことになりました。ですが、どうしても娘と祖父母を引き離してしまうことへの罪悪感がなくなりません。私の都合で・・・とばかり考えてしまいます。お付き合いしている相手には娘も心を開いていると思います。ですがいままで5年間、親のように一緒に過ごしてきた祖父母と、これからは別の家で過ごすことになります。もう同棲は決めているのですが、心の罪悪感は消えず、私は自分のことしか考えていないのではないのだろうか、と思ってしまいます。娘は本当に祖父母が大好きです。ですが私も彼との結婚を考えていますし、ずっとこのまま実家に甘え続けるという環境にも限界を感じています。私が進もうとしている選択は正しいのでしょうか。娘の幸せを1番に考えろとよく両親に言われます。娘にとっての幸せとは何なのでしょうか。
回答者: 高橋惠子先生
新しいパートナーとの生活を始めるにあたって、お子さんを連れて実家を出られるという質問者の決心には、勇気がいることでしょう。パートナーも娘さんを受け入れ、娘さんも心を開いておいでのようですから、慎重に、実行されるのがよいと考えます。
お子さんは祖父母にかわいがられて育ち、祖父母が誰よりも好きであることがよく理解できます。心理学的に見ると、子どもは祖父母を“愛着の対象”(困ったときには必ず助けてくれるはずだと信じ、そうしてほしいと頼りにしている人)として、幸せな日々を送り、成長されてきたのだと思います。お子さんの心の状態をよく理解するために、愛着を含めた親しい人々との関係について、次の3つの性質を知っておかれるとよいと思います。
第一に、愛着の対象は子どもが選ぶということです。誰を愛着の対象として選ぶかは、子どもが育つ環境の中で、子どもが決めます。ですから、誰を選んだほうが良いとか、選ぶべきだとかと、強制できません。質問者がされているように「祖父母が大好き」という事実を否定せずに、そのままを受け入れてあげることが大切です。
そのうえで、第二に、特別の“愛着の対象”のほかに、人間は幼児でも、“自分にとっての大切な人”を複数人持っていることです。たとえば、質問者のお子さんの場合には、大切な人として、祖父母のほかに、母親(質問者)も選んでいることでしょう。そのほかにも親戚のおばさんとか、いとこなどから選んだ数人を、“大切な人”としているはずです。“大切な人”が複数になるのは、子どもの周りに好意を持つ人々が多数いるうえに、子どもは大切な人を数人決めている方が安心できるからです。たとえば、祖父母が不在のときには、お母さんでもいいと思えるほうが、安心をより確かにできるからです。
そして、第三には、愛着の対象を含めて子どもの“大切な人”は、子どもの発達や環境の変化によって変わることです。ある人の価値が変わったり、ある人が除かれて別の誰かが加えられたりします。子どもは、成長につれて自分の大切な人間関係を吟味し、変化させていきます。たとえば、質問者のパートナーにお子さんが「心を開いている」ように見えているのは、子どもが、「自分にとって大切なお母さん」の「大切な人」らしいからとか、大好きな祖父母と楽しそうに話をしている男の人だからとか、と安心な人かを判断して、自分の“大切な人”に含めてよいかを吟味しているのでしょう。
以上のような子どもが心に持つ人間関係の仕組みから見ますと、母親の結婚、新しい男性パートナーの出現は、子どもにとっては大きな出来事だと言えます。幸いお子さんは祖父母と良い関係を持っています。子どもの祖父母への気持ちを大切にしながら、決して焦らずに、新しい生活を始められてはいかがでしょう。