Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび
10か月頃の赤ちゃん
~おもちゃのやりとり、気持ちのやりとりができるようになります~
赤ちゃんほど、努力家で研究熱心な存在はいないかもしれません。寝返りからおすわり、はいはいと、コツコツと練習を積み重ねて、ついに自由に移動できるようになった赤ちゃんですが、今度はもっと重心を高くして、これまで手が届かなかった自分の頭の上のものまでとろうと、さらに努力を続けます。
はいはいをして突き当たった台や椅子などに手をついて、足の裏に重心をおいて立ち上がります。生まれてからたった10か月ほどで、背中全体で自分を支えていた赤ちゃんが、小さな足の裏だけで、自分のからだを支えられるようになるのですから、赤ちゃんは本当にすごい存在だと思わずにいられません。
このころには、お母さんとの気持ちのやりとりも、だいぶじょうずになってきます。冷蔵庫まではっていって、扉に手をつきながらお母さんを振り向き、「ジュース?」と聞くと、にっこりしてうなずいたり、公園で、「おうち、かえろう。おいで」と言うと、イヤイヤというように首を振ったり。ことばは出ていなくても、これはもうりっぱな「会話」です。
赤ちゃんには、生活に密着した自然な会話のなかで、「わかることば」がたくさんストックされていきます。絵カードに描かれたりんごや、テレビ画面のりんごより、八百屋さんで見つけた、赤くて、手に持つとずしりと重くて、いい香りがして、食べるとシャリシャリして、甘酸っぱくておいしいりんごの体験の上に、「りんご、おいしいね」というお母さんの声が重なることで、「りんご」ということばが赤ちゃんにしみこんでいくのです。
ちょうだい、どうぞ
おもちゃでのあそびの場面、おやつを食べる場面などで、お母さんと赤ちゃんで、「ちょうだい」「どうぞ」のやりとりをしてみましょう。ときには、大好きなおやつを前にした赤ちゃんに、「ちょうだい」と言って、口をあけてみるのもおもしろいですよ。お母さんの口のなかにおやつを入れてみたいという好奇心と、大好きなおやつをあげたくない気持ち。さあ、どちらが勝つでしょうか。
早い赤ちゃんでは、やりとりのときに、「じょ!(どうぞ)」というように、ことばが出ることもあります。