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性格・親のかかわり・育て方

Q. 4歳の男の子。社会性の発達が遅れていると指摘されました。 (2014.1)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

幼稚園年中の息子(4歳8か月)が、社会性が3歳8か月相当だと言われました。家庭でどのようにフォローしたらいいでしょうか。転勤族で核家族です。息子は年中から幼稚園に入りましたが、まわりの子より幼く感じていました。言語の理解のわりに自己表現が弱いようです。たとえば、お友だちと遊んでいても自己主張はあまりせず言いなりですし、団子になって走り回る子たちのあとにくっついて走っている感じです。息子は弱視、乱視のために眼鏡をかけています(矯正視力は1.0)。緊張が強く、集団に入ったばかりの頃は何かするにも手が震えていたようです。この子に何か自信をつけてあげたいのですが、どうすればいいでしょうか。また、自己表現ができるようにも手助けしてあげたいと思います。

回答者: 汐見稔幸先生

 幼い子の社会性の調査というのはいくつかありますが、決められた尺度があって、それがどの程度できているかを見て判断するのが基本です。たとえば「他の子どもと協力できる」「協力して仲良く遊ぶ」「友だちが困っていることがわかる」「友だちが困っているとき、慰めたりする 」「意見が対立したとき、解決策を見つけられる」「おもちゃを貸してあげて一緒に遊べる」「遊びのなかで順番を待てる」などを聞き、どの程度できるかを判断して得点を出し、それが何歳何か月の子の平均と同じかを調べるものです。

 ご質問のお子さんは、弱視のためか自分に自信があまり持てず、集団のなかでイニシアティブを取るような行動がまだ少ないように見受けられます。だから、こうした調査をすると当然点数が低く出てきます。

 でも、お母さんが自覚されているように、親がこの子の弱いところを知っていて、その改善を図ろうとする姿勢があるなら心配はありません。いけないことは、「もっと自己主張しなさい!」などとこの子の苦手なことを強制することです。この子はそのたびに、いまの自分が苦手にしていることを強要されて、ますます自信をなくしていきます。すると自己主張がもっとできなくなり、また叱られるという悪循環に陥ります。しかし文面に見る限り、ご相談者はそういうタイプではないようなので心配はないと思うのです。

 こういうタイプのお子さんの場合、自分が「いまできること」を少しずつ伸ばしていくことが肝要です。いちばん良いのは、家で何かをするときには必ずお母さんやお父さんが、「あなたはどうする?」「あなたはどうしたい?」と聞いて、お子さんが意見を言うまで気長に待つことです。

 お子さんが「どっちでもいい」などと答えても「どっちでもということはないでしょ!」などと詰問せず、「じゃあ、こっちでいい?」などと、いつも子どもの意見を聞くのです。そして、子どもが意見を言ったら、できるだけそれを尊重して対応します。やがて親とあれこれ意見を交換できるようになったらしめたものですね。
 それから、大きくなるにつれてお子さんが自分だけでできることを増やしていくように、親として努力します。たとえば、買い物に行って何かを買ってきてもらう、親が買い物に行く間留守番をする、さして遠くないところに1人で出かけて親に頼まれた用事をする、等々です。こうして自分に自信が持てるようにしていきます。

 あとは、幼稚園に慣れてくると気に入った友だちができる可能性がありますが、「この子となら仲良く遊べる」という関係をつくっていくことです。大人数だとみんなに付いていくだけだけど、少人数ならそれなりに主体性を発揮して遊ぶ、ということはよくあります。私の2番目の息子がそうでした。私の息子の場合はマイペースの傾向が強くて人と合わせて行動するのが苦手だったのですが、そのことを園の先生に詳しく話して、大人数の集団に合わせて行動できなくてもあまり強制しないでほしいとお願いしました。先生はよくわかってくれて、やがて「少人数の仲間となら遊べますよ」と教えてくれたのを思い出します。

 そのほか、基本は、親が子どもの前で人が困っていたときはこう行動するというような見本を示す努力をしていけば、やがてそれが子どもの行動のモデルとなっていきますので、そういうことも気をつけるといいと思います。

 社会性というのは、簡単に伸びるものではありません。私個人も、いまでもそういうことを意識している気がします。じっくり育てていきましょう。幼い頃の自信のなさが一生続くことはあまりありません。それに、自分で自分の弱点をよく知っているので、人の弱さにも共感できる優しい人になる可能性も高いのです。