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性格・親のかかわり・育て方

Q. 2歳9か月の男の子。気に入らないとものを投げたり、注意されると口答えします。 (2014.2)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

2歳9か月の男の子です。おもちゃで遊んでいるときに突然投げ出したり、食事で嫌いなものを勧めると食器を投げたりします。こうしたことは以前からありましたが、最近目立つように思います。そういうとき私は、「いけないよ、物は大切にしてね」と言うのですが、「やだよん」「物はたいせつにしません!」などと言い、口が達者になって真剣に伝わらない始末です。夫は、このままではキレる小学生になるのではないかと心配し、もっと真剣に怒らなくちゃだめだと言います。キレる子どもにしないために、親としてどんなふうに対処していけばいいでしょうか? 何歳ぐらいから、わがままを言ってはいけないということがわかるようになるのでしょうか?

回答者: 高橋惠子先生

 おそらくこのお子さんも、近くに母親がいないときにはこのような“悪さ”をしないことでしょう。この“悪さ”には心理的な意味があると考えられます。“悪さ”が母親とのコミュニケーションの方法、とくに、自分が愛されているかを確かめる手段として使われているのではないかと思われます。

 母親が視界に入るとわざわざ“悪さ”をして、母親の注意を自分に引きつけているのだと予想されます。母親がそれを注意したりすれば、子どもは母親の関心を引くことに成功し、それから書いておいでのような一連の「だめよ」「いやだ」という言葉のやりとりや、ときにはキレたりすることになるのです。

 このように、わざと“悪さ”をして他人の注意を引くことを、心理学では「悪さによって関心を引くこと(ネガティブ・アテンション・シーキング)」と名づけて注目しています。このような用語があるのは、よく見られる行動だからです。

 この“悪さ”への対応として、まず重要なことは、この行動は自分に注目してほしいという子どもの心がさせているのだと理解することです。幼児のネガティブ・アテンション・シーキングは、意図的にしているというよりも、子どもが親の関心を引くためにできる精一杯の行動だ、それ以外にはよい方法がわからないせいだ、と考えましょう。

 したがって、“悪さ”という「現われている行動」を叱ると、子どもの「心の状態」は深く傷つきます。自分は大事な子ではないのだ、愛されてはいないのだとがっかりし、ときには無力感を持つようにもなります。

 幼児のネガティブ・アテンション・シーキングへの対応として、何よりも肝心なことは、“悪さ”をしても「あなたが大好きよ」と伝えようという親のぶれない覚悟です。

 そして次には、子どもが“悪さ”をしたときにとりわけ親が反応していたのではないか、これまでの日常の親子のつき合い方を点検してみることをお勧めします。できるだけ子どもの“悪さ”には関心を示さずに、“良いこと”をしたときに反応することで、“悪さ”をしなくても親は注目しているよ、と伝えることが大切です。
たとえば、子どもにちょっとしたお手伝いを頼んで「ありがとう」「助かったよ」と伝える、ひとりで何かが少しでもできたら「すごいね」「うれしいね」と伝えるなど、ネガティブな行動ではなくポジティブな子どもの行動に注目し、素晴らしいことだと言葉で伝えるようにして、親子のコミュニケーションの内容を変えていくことです。子どもにはネガティブ・アテンション・シーキングの癖がついているのですから、気長にがんばってみましょう。

 さらに心しておきたいことは、2、3歳はいわゆる幼児期の反抗がピークになるときだということです。反抗しているように見えますが、成長してきた子どもの自己が自分の気持ちや考えを主張しているのです。親の立場からは“悪さ”にしか見えないことでも、子どもには思いもよらない理由があることが多いものです。何を主張しているのか聴いてみようという姿勢が親には必要です。幼児にも守ってほしいルールはもちろんありますが、何を守るかは親子のコミュニケーションを通して伝えましょう。わがままだと力で押さえつけることではうまく伝達されません。