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家族関係・夫婦・ママ友

Q. 1年前に再婚しましたが、4歳の夫の連れ子との関係がうまくいきません。 (2014.4)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

4歳男の子2人の母です。1人は私の連れ子、もう1人は夫の連れ子です。子どもが3歳のときに再婚しました。自分の子は常識やマナーを小さいときから伝えてきました。彼の実母は2歳半のときに男を作って出て行きました。その点で、彼が愛情を注がれていたかは不確かだと思います。夫と彼が2人で暮らしていた期間は半年もなく、私と出会ったころ、彼が食べられたのは肉とお米。言葉数も少なく言葉の理解も遅い。仕方ないと思います。彼がそういう生活をしてきたことは大人の都合。自己主張は成長していくのに、気持ちが成長しきらないのです。食生活、携帯依存、DVD依存、あいさつなど、いろいろなことをこの1年で直しました。でもやはり、思いやりがないのです。こちらの言うことを理解してもらえないのです。イライラしてしまい手が出てします。彼には母親の愛情で満たしてあげることが必要なのもわかっています。それでも、うまくいかないのです。

回答者: 帆足暁子先生

 あなたは再婚され、夫の連れ子とも生活を共にして、1年かけてお子さんの食生活、携帯依存、DVD依存、あいさつ等々を直してこられた。それはお子さんの生活が大人の都合の結果だということがわかっているからです。そして、母親の愛情で満たしてあげることが必要だということもわかっている。あなたは、ほんとうにたくさんのことがわかっています。それなのにうまくいかない。

 本来、ここまでお子さんのことがわかっていたら、うまくいくはずなのです。でも、現実はうまくいっていない。このように筋が通らないときには、結果から考えていきます。つまり「うまくいかない」結果があるということは、何かうまくいくことを邪魔している要因があるということです。その要因を見つければ、うまくいく方向を見出すことができます。

 たとえば、「わかる」ということは2つの面があります。文面からは、あなたの理解力が高いことがわかります。お子さんの状況をとてもよく理解しています。でも、お子さんの気持ちへの共感があまり読み取れません。2歳半で母親がいなくなったとき、どういう気持ちだったでしょう。父親と2人の生活をどのような気持ちで過ごしたのでしょうか。新しい母親と同年齢のきょうだいができたとき、お子さんはどのような気持ちになったでしょうか。そして、お子さんはいま、母親であるあなたに何を求めていると感じていますか。

 それから、「自己主張は成長していくのに、気持ちが成長しきらない」「思いやりがない」「こちらの言うことを理解してもらえない」という文面からは、あなたがお子さんに「気持ちが成長してほしい」「思いやりをもってほしい」「こちらの言うことを理解してほしい」と求めていることが感じられます。それは、あなたのなかの「子ども」のイメージにお子さんを近づけたいと思っているからだと思います。あなたが育ててこられたお子さんのように、ちゃんとした子どもに育てたいというあなたの願いを感じます。そのあなたの願いや期待にお子さんが応えないことが、イライラの原因になっているようです。

 なぜ、応えてくれないのでしょうか。
 安定した親子関係のなかで育つ子どもは、親の願いや期待に応えようとします。応えられたときの親のうれしそうな反応は、子どもを安心させ、幸せな気持ちにさせますし、もっと期待に応えたいという思いを強くします。でも、お子さんのように2歳半で母親がいなくなってしまうと、このシステムは成立しなくなります。応えても母親は消えてしまい、安心感は得られなかったからです。その結果、応える意欲が失せてしまったり、応えたらまた母親が消えてしまうという不安を抱える場合もあります。もしかしたら、母親の期待に応えるという経験がなく、応えることのうれしさや幸せ感がわからないのかもしれません。あるいは、母親の期待に応えなくても自分を愛せるのかという、子どもとしてもっとも大切で根本的な保障を得ようとして、親の覚悟を試しているのかもしれません。

 このように考えてきますと、うまくいかない要因として、次の2つのことが考えられます。ひとつはあなた側の要因として、お子さんの状況を理解できているのに「お子さんの気持ち」への共感が十分ではない可能性、そして、もうひとつはお子さん側の要因として、母親喪失の心の傷が癒えていない可能性です。そこから見えてくるのは、お互いの「思い」はあるのに、あなたとお子さんの関係がまっすぐにつながりにくくなっている現実です。

 ですから、いまできることは、お子さんがあなたに何を求めているのかをお子さんの気持ちになって考えて、お子さんの期待にあなたが応えること。そして、お子さんがあなたの期待に応えられないほど心の傷が深いということを理解して、その傷が癒えるために、一貫してお子さんの望む「母親」であり続け、長い目でお子さんの成長を見ていく覚悟をされることが必要です。「お子さんの望む母親」というのは、甘やかすということでは決してありません。もちろん、楽しさの共感は大切です。でも、あなたが人間としてお子さんにしてほしくないことはきちんと穏やかに説明し、いやなことは「いや」と伝えていいのです。

 最後に大切なこと。子どもは、自分を守ってくれると信頼できる大好きな人ができると、その人との心の絆……愛着を基盤に、ありのままの自分の気持ちを表現したり、要求したり、行動したりします。それは、わがままのように思えることもあります。ですから、お子さんの「自己主張が成長」しているとすると、あなたを信頼できるようになっているのだと思います。自己主張が成長する時期は、一般的によく言われる2歳代の「イヤイヤ期」と同じです。お子さんの心は、いま育ち始めているのかもしれません。どうそご自分に自信をもってください。

 思いやりは、思いやりを受けることによって育まれます。お子さんにはあなたからの思いやりが必要です。そして、同じくらいあなたも思いやりを受けることが必要です。あなたががんばっていることをわかってくれて、あなたを支えようとしてくれる人を見つけてください。