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妊娠中の気がかり(体重・食事・病気・体調など)

Q. 妊娠29週。胎児の脳室拡大を指摘され、将来の発育が気がかりです。 (2014.12)

  • (妊娠週数・月齢)妊娠8か月 (28〜31週)

現在、妊娠29週の妊婦です。27週の妊婦健診の際に、胎児の脳に黒い影があると指摘され、同じ病院でスクリーニング検査を受けたところ脳腫瘍か頭蓋内血腫の疑いがあり、大学病院で検査を受けることになりました。その結果、脳腫瘍や血腫ではなく第三脳室が少し(1.3cm)拡大しているとのことでした。胎児に他の異常はありません。医師に水頭症ですかと尋ねたところ、「はっきりとは言えない」と言われ、毎日心配の日々です。この脳室拡大が水頭症ではないということもあり得るのでしょうか? また、この脳室拡大によって将来の発育にどのような問題が起こりますか? 出生後の治療法やその効果についても教えてください。

回答者: 多田裕先生

 妊娠27週のときに、胎児の脳に少し拡大している部分があると指摘されたとのこと、さぞご心配なことでしょう。心中をお察しします。

 胎児の病気や障害の診断と治療は産婦人科医療の領域で、小児科医である私は門外漢でもあるのですが、出生後の赤ちゃんの発育や発達を念頭に、多少でもお役に立てればと思い私なりの意見をお伝えしてみます。

 近年、胎児の心拍やからだの動きをモニターしたり、超音波で画像を見たりすることができるようになり、出生前から赤ちゃんの健康状態が詳しくわかるようになりました。心拍やからだの動きがわかると出産時のトラブルに早く対応ができますし、超音波検査で胎児の様子がわかると発育状況や、病気や障害の有無がわかり、症状によっては胎児期に処置したり、出産を早めて治療したり、母子にとって最善の医療を選択することが可能になりました。非常に喜ばしいことだと思います。

 しかし一方で、超音波検査でわかることには限界があることも、ぜひ知っていただきたいと思います。超音波検査とは超音波を胎児にあててその反響を画像にし、赤ちゃんの発育状況などを判断するもので、いわば太陽光線によってできる影を見て判断するような検査方法です。赤ちゃんの発育や患部などを直接見ているものではありません。そのため、短期間に行われた数回の超音波検査で、病気を確定診断するのは難しい場合があります。

 加えて、赤ちゃんの発育は柔軟であるうえ個人差が大きく、経過中に変化することもあり、経過観察を続けていかなければ正しい判断がつかないことが多いものです。

 検査を受けた大学病院の医師が、水頭症かどうかについて「はっきりとは言えない」と答えたのも、今後の経過観察をしていかなければ水頭症かどうかを含めて正しい判断ができないという意味だろうと推察します。

 万が一、今後の経過観察のなかで水頭症だと診断されることがあっても、たとえば脳室と腹部を管でつないで髄液を腹腔に流す「シャント」と呼ばれる処置をするなど適切な治療を行えば、脳への圧迫を防いで症状を軽減させることは十分に可能です。現在では、症状の進行が速い場合には母親の胎内で治療を始める試みも行われています。また、ご相談の赤ちゃんはすでに在胎29週になっているので、必要があると判断されれば出産を早めて治療を開始することも可能です。
 あるいは、経過観察を続けていくだけで大きな問題はないと判断される可能性も大いにあるでしょう。

 いずれにしても、赤ちゃんの発育状況や病気かどうかについては、専門の医師が経過を診たうえで判断してくれるでしょう。大学病院で検査を受けておられるので、今後もしも症状が進んでいったときには産婦人科医や小児科医、脳外科医など複数の医師がチームを組んで最善の治療を行ってくれるはずです。

 将来の発育への脳室拡大の影響についてもお尋ねですが、原因や程度、治療などが影響するので「いまはわからない」と申し上げるよりありません。しかし、生まれる赤ちゃんにたとえ何らかの問題があった場合でも、症状が少しでも軽くなるようにご両親と医療関係者が協力していくことがもっとも重要です。まずは主治医を信頼し、疑問点があれば説明を受けながら、心安らかに日常生活を送るよう心がけてください。お母さんがストレスを少なくし、安定した暮らしを送ることが赤ちゃんの発育や健康に良い影響を与えるものと思います。