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Q. 生後4か月。夫は子どもを怒鳴ったり脅したり、ひどい言葉で叱ります。 (2015.1)

  • (妊娠週数・月齢)4か月

4か月の子どもの母です。夫は子どもを叱ったり、自分が抱いても泣きやまないと子どもを怒鳴ったり脅すようなことを言います。本人いわく、父親は優しいときもあれば怖いときもあることを教えていると言うのですが、私から見れば、ただ感情的に言っているようにしか見えません。ひどいときは「クソガキ」とか「俺の子じゃない」とか、まだまだ酷い言葉を投げつけていました。いまはだいぶ治まったのですが、まだまだ不安定です。私は子どもに対して諭すような対応をしてほしいのですが、この時期から子どもを叱ったりしてもいいのでしょうか? 普段は子どもの面倒をみたり、お風呂に入れてくれたり、子育てにはとても協力的です。2人目を望んでいますがいまの状況では考えられません。

回答者: 汐見稔幸先生

 率直に申し上げますと、生後4か月の赤ちゃんに対して「クソガキ」とか「俺の子じゃない」というような言葉を発するのは、少し心配です。善意に解釈しますと、あなたの夫は赤ちゃんという「人間」に対してまったくイメージがもてずにいて、はじめて実際の赤ちゃんに接して「こんなに泣くとは思わなかった」とか「夜も起こされるとは思わなかった」とか、戸惑ったことが理由かもしれないとも考えられます。抱いていたイメージとあまりに違っていたので、頭にきたということでしょう。こういう場合は少しずつ慣れてくれば、赤ちゃんというのはみんなそういうもので、親が赤ちゃんの泣き声や仕草、表情などから求めているものを読み取ってそれに応えていくことで育っていくものだと、理解できるようになる可能性があります。小さいから乱暴な言葉を使ってもわからないだろうという判断も手伝って、イライラした気持ちを乱暴な言葉にしているのかもしれません。

 しかし、ご質問の文面からすると、父親は怖い存在でもあるべきだという考えがあるようで、それが幼い子どもに乱暴な言葉を使うことを正当化させている可能性もありますね。この点が少し心配です。感情的に体罰気味の子育てをする父親のなかに、こうした言い分で自らの体罰を正当化してしまう人がいるからです。こうしたやり方は子どものメンタルヘルスの育ちをゆがめますので、要注意です。

 おそらく、あなたの夫自身も育ちの過程で怖い父親の体験をしていて、それがモデルとなっているのかもしれません。幼いときに親に厳しい対応をされた体験がある場合、あるいは似たような例で、中学高校などの部活で指導の先生から体罰を受けて、それが偶然に自分の“サボり心”を変えてくれたなどの体験がある場合、それを一般化して、「子育てはときどきバチッとやらなければならないのだ」と考えている可能性があります。

 確かに、子どもが悪いことをしたときには叱ってやる必要がありますが、それはときどきでいいのです。とくに2歳ぐらいまでは、なぜ叱られているかという理由がわからないので、厳しく叱ることは原則的に禁止です。理由がわからないまま親の厳しい叱責に接すると、子どもは自分は親に愛されていないように思ってしまい、それが成長後の自尊感情の低下や人に対する嫌悪感などにつながっていくからです。基本は、子どもがいたずらをしても「面白い子だね」と温かく見守ってやることです。それが自信のある温和な人柄を育てます。

 あなたの夫はそうではなく、自分もときどき親の感情にまかせた厳しさに接して育ってきたのかもしれません。そういう場合、ほんとうはあなたの夫自身が自分の幼い頃のことをよく思い出して、それを人に語ることが必要です。カウンセラーが相手だといいのですが、夫婦がお互いにじっくりと向き合って、感情的にならず、自分の育ちを語り合う時間がもてるだけでもかなり違います。信頼できる他者に話すということでもかまいません。

 そういうことをせずに「叱りすぎないで!」と夫を責めるだけでは、なかなか解決に向かいません。他者に自分を語り、そこで「ほんとうはいやだった」という感情が出せれば、あなたの夫は自分の優しさを取り戻すことができるはずです。急いでそうした努力をしてください。私に相談したらそう言われた、と言ってもかまいませんから。