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教育・保育

Q. 4歳の男の子。保育園の待機児となってしまい、集団生活を体験させられません。 (2015.4)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

4歳の男の子です。家庭の事情で幼稚園に入れられず、保育園に預けて仕事をする予定でしたが、「待機児童」になってしまいました。認可外の園は料金が高すぎて入れることができません。支援センターなどに行っても同年代の子はおらず、1〜2歳の子とばかり遊ぶため、小さい子をまねて叫んだり駄々をこねたりします。たまに近所の同年代の子と遊ぶことがあってもうまくコミュニケーションがとれず、最終的には仲間はずれのようになります。集団生活をしたことがない息子が心配です。私は息子に何をしてあげればよいでしょうか。数字とひらがなは読めて字は半分くらい書けます。

回答者: 汐見稔幸先生

 少し事情がわかりにくい点があります。
 4歳で「待機児」というのは、いまはあまり多くないはずです。待機児と呼ばれる、保育園に入園を希望しながら入れない子どもの大部分は0、1、2歳児、とくに1歳児で、4、5歳児は保育園でも定員が空いているところがかなりあるからです。希望する園は無理でも、近所の別の園を第2、第3希望として申し込めば入園が可能になる可能性はないでしょうか。

 それともうひとつ、幼稚園でも、夕方あるいは夜まで「預かり保育」をしているところが多いはずで、そういう幼稚園では、現在は保育園と預け方はあまり変わりないはずです。平成27年4月から始まる新制度に移行する幼稚園では「預かり保育」といわず「幼稚園型の一時預かり」という呼び方に変わりますが、夕方あるいは夜まで見てくれるという点では同じです。

 一度役所の子育て関係の部署に行って相談されてはどうでしょうか。自治体によりますが、今年の4月からそういう相談に応じることを専門とする部署をつくる「利用者支援」制度がスタートします。国で予算化しているので、やがて全国で置かれるはずですが、今年はスタートの年なので、自治体ごとに差があります。が、いずれにしても、困っている親ごさんの世話をすることを自治体の責任とするという方向で施策が変わってきていますので、遠慮なく、役所で困っていることを訴えるべきだと思います。

 それでも無理な場合には、日頃の育児で、できるだけお子さんの遊びに干渉せず、好きな遊びを存分にできるように対応することが肝要だと思います。土日など、できる限り自然の中に連れ出して、自由に自然を楽しんだり花や虫、星などの自然に興味をもてるように自由に遊ばせてあげてほしいですね。

 といいますのは、3、4歳まで同年齢の子とあまり遊ばずに育った子はコミュニケーション能力の育ちや社会性の育ちが心配といわれることが多いのですが、コミュニケーションの力や社会性のベースにあるのは、社会的なスキルのほうではなく、自尊感情というか、自分は自分のありのままを大事に育てられたという感覚だからです。自分のありのままを大事にされたというのは、たとえば以下のようなことです。好奇心旺盛でいたずら好きの子なら、いろいろないたずら行動をすることをおおらかに認められ、あれこれ指図や指示をされないで大きくなってきた。また、引っ込み思案のタイプの子なら、周囲から「いつも慎重派ね」と面白がられ、「もっと積極的になれ」などと言われることなく(つまり、ありのままの自己を否定されることなく)育った……などということが、ありのままの自分でいい、それが私なのだという自己肯定の感情を育て、それが人と接するときに卑屈になったり逆に人を上から目線で見るようなことを防いでくれるからです。

 これがいい意味での社会性で、社会性というのはたくさんの人と接するから身につくというよりは、ありのままの自分でいいという感覚があって他人と接するから身につくものなのです。

 ご相談のお子さんの場合、4歳で読み書きの力をすでに形成しているようですが、それが自分からいつの間にか覚えたというのでしたらまったく問題ないのですが、そうではなく、親が必死で覚えるように動機づけをしてそこまでもってきたという場合は、子どものなかには、「ありのままの自分の興味・関心に沿って生きればいい」という感覚ではなく、できるだけ親の期待に沿って生きることが大事だという感覚を身につけてしまうことが多くなります。

 その場合、ありのままの自分ではダメで、親の期待に応えられる自分でなければいけないと思ってしまい、結果として自尊感情を下げてしまう可能性があります。そうなると自分のありのままに自信がなくなり、人と接することをおっくうに思ったり、疲れたりすることが多くなります。

 もちろん、4歳でも同年齢の子たちと日頃から接することで、友だちができたり、コミュニケーションのチャンスが増えたりしますので、そのことが大事ではないと言っているのではありません。しかし、それ以上に大事なのは、コミュニケーションが大好きだと思う心性を育てることであり、コミュニケーションのためのスキルは小学校などに行けばやがて身につくものと考えることです。

 長々と書ききましたが、育ての姿勢を鮮明にすればあまり心配しなくていいと思うことがポイントです。子どもが自分の興味にまかせて自由にその内的世界を広げていくことをいまは大事にしてあげてほしいと思います。