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性格・親のかかわり・育て方

Q. 4歳の女の子。好奇心旺盛で自分を制御できないようで、忘れ物も多く心配です。 (2015.5)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

4歳の女の子です。小さい頃から好奇心旺盛で、気になるものがあると吸い寄せられるように触りに行きます。乳幼児健診では、「まだ自分を制御できない。大きくなるとバランスがとれてきますよ」と言われていました。意思疎通ができるようになってからは、ますます言い聞かせるようにしてはいますが、いまでも絵本の読み聞かせでは先をめくりに来るし、食事の際は最後まで座らせておくのに何度も注意しなければなりません。2歳違いの弟が遊んでいると、叱られている最中でも目がキョロキョロしています。保育園では先生の話や読み聞かせに集中しているようですし、4歳になってからひらがなの読み書きや足し算もできるようになり、興味のあるものへの集中力はあるようです。が、最近はかばんやかさなどをどこかに忘れてくることがしばしばあります。小学校入学を視野に、どんな声かけをすればいいのか迷っています。

回答者: 汐見稔幸先生

 興味深いお子さんですね。一般に、わが子がみんなとちょっと違ったタイプですと、親ごさんは、みんなと同じであってほしいと思うあまり、その子のその子らしいところ、その子にしかないようなところを「この子の個性で、いいところかも」と思って、それを伸ばしていくという姿勢が弱くなりがちです。ご相談のお子さんの場合もそういう気がします。

 人間には、いろいろなものにじっと注意を向け続ける力、もののうしろにある意味を感じる力、社会のルールを大事だと思って守る力、自分の感情を抑制する力、相手の気持ちを感じとってそれと協働しようとする力、論理的にものごとを考える力などなど、数え上げればキリのないくらいの多くの力が必要です。

 それらを幼い頃から少しずつ身につけることで子どもは大人になっていくのですが、それらのさまざまな力がどれも同じように上手に発達していく子は、実はめずらしいのです。ある力は比較的早く身につくのに、別の力はなかなか身につかない、というようなことがほとんどです。いえ、すべての子がそうだといってよいと思います。その育ちのでこぼこの様を難しい言い方で、「個性」と呼んでいるのです。

 ご相談のお子さんは、目の前の、ある何らかの関心を引くものや事柄に強く注意が向き、新奇なもの、めずらしく思ったことにはもうじっとしていられないほど関心が発生してしまうタイプのように思います。その対象が次々と出てきても、そのすべてにエネルギーを注ぐことができる。しかも最近は、興味のあるものが見つかるとそれに注意を一定時間持続的に集中させることもできるようになってきている……。

 ただ、なぜ、あることやものに興味を持つのか、ということの中身は、大人が期待しているようなことと異なっている可能性もあります。この子の独自の論理での興味かもしれません。でも、そこにこの子の個性があるのです。
忘れ物をするのは、あることに興味をもってしまうと、それにこころのエネルギーが向かってしまい、他のことに注意が向かなくなってしまうからでしょう。でも、それだけ何かに注意を向けるときは集中しているともいえます。

 こういうお子さんの場合、その強い集中力が将来どういう方向に伸びていくだろうか、楽しみにしていよう、というスタンスで育てていただきたい。けっして否定的に見ないようにしてほしいですね。忘れ物をして困るときは、あれもこれも指示するのではなく、ひとつだけ確認して「それだけは忘れないでね」と指示して、できるようになる練習をしてあげてほしいですね。「〇と△と□とを持って帰ってね」ではなく、「〇は必ず持って帰ってね」と指示し、それができたら「よくできたね」と評価する……このスタンスです。それを1つひとつ確認しながら、やがてそれが2つになり3つになればいいのです。

 それから、すべきことを文字などで書いて張り出して、それを見て確認できるような環境をつくってやることも大事でしょう。おつかいに行くときも、メモを渡すことを忘れずに。そういう工夫もせずに苦手なことをさせて、できないと叱るというやり方はこの子の自信を奪っていきますので、いつまでも忘れ物がなくならなくなる可能性が高くなります。

 おそらく健診で言われたように、やがて、いまよりもバランスがとれてくるでしょう。これはこのお子さんの性格、個性なのですが、性格や個性はなくなるものではありません。この子の個性的なところだと思って肯定的に見ていけば、やがて自己コントロール力も身につくようになっていくので安心してください。