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性格・親のかかわり・育て方

Q. 2歳の娘の母。夫の仕事の都合で海外に越してきましたが、娘も私も馴染めません。 (2015.7)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

2歳の女の子を育てています。夫の仕事の都合で、2か月前に海外へ引っ越してきました。私は仕事を、娘は保育園を辞めました。娘は自己主張が強く、癇癪を起こすと1時間以上も泣き続けます。ここは子どもが3か月になると保育園に預けて仕事に復帰するお国柄で、公園には遊び相手もおらず、日本人の少ない地域で頼る人もコミュニティもなく孤立無援です。支援センターもありません。雨が多く、部屋で2人きりで過ごすことも多いです。娘は言葉が早いほうですが、現地語で話しかけられるとあからさまに嫌な顔をします。最近、寝る前に「〇〇ちゃんさみしい」「おかあさんさみしい」と言うようになりました。私も言葉もわからない土地で暮らすのがすっかり苦痛になってしまいました。これからどのように娘を育てていけばよいのでしょうか。

回答者: 帆足暁子先生

 大変な思いをされていますね。海外での生活が2か月とのこと。たぶん、いちばん大変なときを過ごされているのだと思います。最初は手続きや住居の整理、生活環境を把握するのに必死ですが、だんだん身辺が落ち着き始める2か月過ぎくらいから、どうやって「生活」をしていこうかと考えるようになっていきます。

 でも、娘さんの遊び相手もなく、日本人のコミュティもない地域で孤立無援な状態。支援センターもなく、雨も多い。そのうえ、娘さんも現地に馴染めていないのでは、すっかり苦痛になってしまうのもよくわかる気がします。

 どのように娘さんを育てていけばよいのか、ということですね。
いちばん大切なのは、娘さんが「安心できるように」です。「さみしい」と言うようになったのは、安心感が足りなくなったからのように思います。大人は、なぜここに来たのか、いつまでいるのかなど、知識で理解することができます。でも2歳の娘さんにはまだ無理があります。あなたが仕事を辞めたように、娘さんも保育園を辞めました。いつまでも変わらないと思っていたことが、変わってしまったのです。不安にならないはずがありません。

 まずは、寝るとき、娘さんが「さみしい」という前に「ママの大好きな〇〇ちゃん、おやすみなさい」といってぎゅっと強く抱きしめてあげてください。そして朝起きたときも同じように「ママの大好きな〇〇ちゃん、おはよう。今日はどんな楽しいことをしましょうか」といってやさしく抱きしめてあげてください。

 そして、1日にひとつは2人で「楽しいこと」をします。買い物だったり、動物園だったり、おもちゃ屋さん、パン屋さん、本屋さん……娘さんとあなたが出かけてみたいところに行ってみてください。そうやって、1日1日、楽しい思い出をつくっていきます。アルバムにするのも楽しい方法です。

 もし、雨で外出できなかったら、家でクッキーを焼いたり、保育園のお友だちや先生に送る絵を描いたり、帰ってくるパパにお手紙を書くこともできます。抱っこをしながら絵本を読んだり、あなたの知っている昔話を娘さんに伝えていくのも楽しいかもしれません。

 周囲に知人が誰もいない、ということは寂しいかもしれません。でも、娘さんと2人きりの貴重な時間にすることもできます。こんなにお互いを独り占めすることは日本にいたらできなかったかもしれません。

 そして、娘さんの安心感と同じくらい大切なことがあります。
 あなたの気持ちです。あなたは寂しくないですか。あなたはどう気持ちを切り替えて、いまの土地に来られたのでしょうか。仕事を辞めるということは大きな決断だったのではないでしょうか。娘さんと同じように、あなたも大切な人です。あなたはいまの生活をどうしたら楽しいと思えるようになりますか。あなたはどうしたら安心感をもてるでしょうか。

 子どもは母親の気持ちを敏感に察します。2歳であってもそうです。あなたがご自分の不安を隠して明るくふるまっても、子どもはちゃんと感じ取っています。もしかしたら、「さみしい」と言うのは、あなたの寂しさも感じ取っているのかもしれません。

 子どもが幸せだと感じるのは、母親が笑っているときだそうです。そうしますと、どのように娘さんを育てたらよいのかを考えるということは、すなわち、あなたが笑えるようになるためには、どうしたらよいのかを考えることでもあるのです。

 いまの土地にいるからこそ、できることはないですか。有名な美術館とか、世界遺産とか、美味しい食材とか、美しい景色など。楽しめることが見つかるかもしれません。

 「友だちがほしかったら、子どもか犬を連れて歩けば良い」という諺があります。つい、話しかけたくなるということだと思います。公園に子どもはいなくても、日向ぼっこをしている高齢の方はいるかもしれません。その人たちと友だちになったら、お孫さんと遊ぶ機会ができるかもしれません。

 2歳は言葉の発達が著しいときです。それが知らない言葉に出逢うのですから、不安になって拒否したくもなります。でも、その言語環境のなかでいろいろな人と出逢い、つながりたいと思えたら、きっと言葉が早い娘さんならあなたよりも早く現地語を話しているかもしれません。そうやって未知のものを自分に取り込んでいくことは、必ずこれからの生活を豊かなものにしていきます。

 いまの海外での生活が何年になるのかはわかりませんが、あなたはこうやってSOSを発信する力をもっています。あなたのステキなところです。もしまた、不安なことがあれば、いつでもSOSを出せばよいのです。必ず誰かがあなたに応えます。大丈夫。あなたはひとりではありません。