赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバーことば

ことば

Q. 2歳10か月。突然、吃音が始まり、子どもへの対応に悩んでいます。 (2015.9)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

子どもの吃音について相談します。2歳10か月の息子が、2週間前から突然、「こ、こ、こ、これ……」と、吃音が始まりました。しばらく様子を見ていましたが、日増しにひどくなり、本人も言いづらそうにし、言えないときは「わからない」と言ったり、違う言葉で置き換えたりするようになりました。ネットなどで調べたところ、「吃音は治らない」ともあって心配しています。心因性のものもあるとのことですが、最近、睡眠時無呼吸症候群と診断されて病院に通院しており、保育園の先生にはそれが原因ではないかとも言われました。いまは、子どもの言い方をそのまま受け止め、何となく言いたいことを私から伝えているような状況です。子どもへの接し方などについてアドバイスをいただけたらと思います。

回答者: 汐見稔幸先生

 確かに、急に吃音が出てきたということならば、睡眠時無呼吸症候群の影響かもしれませんね。

 一般に吃音は男児に多く、2〜3歳頃に発症するといわれています。よくわかっていない部分もあるのですが、理由は次のように考えられます。脳は、「ラテラリティ」といって右脳と左脳の優位を分担する必要があります。右脳と左脳に同じような刺激が入ってきたとき、どちらもその刺激に反応すると両方から違った指示が出てくる可能性があるので、混乱を防ぐためにどちらかを優位(メイン)にし、どちらかをサブにするという分担をします。優位のほうが利き手とか利き足とか利き目などといわれています。

 小さな子どもはまだその分業が安定せず、右利きになったり左利きになったりしながら3歳頃に安定するといわれますが、この頃にたとえば、左利きを無理に右利きに直そうとすると、脳が自然にやろうとすることと外からの圧力とのバッティングが起こり、言語中枢のうちで筋肉運動を司る部分に混乱が起きてしまう。それで吃音になるというのです。これはひとつの説ですが、それなりの説得力があります。もしも今回そのようなことがあるのなら、強制(利き手の矯正のようなこと)をやめると少し改善するかもしれません。

 ただし、今回ご質問のケースでは睡眠時無呼吸症候群も関係している可能性があります。無呼吸症候群というのは、以下のメカニズムで起こるといわれています。

 呼吸の基本は、鼻から吸った空気をのどの管を通して気管支に送るのですが、近年、人間は固いものを食べなくなってあごが小さくなり、空気が通る管も狭くなっているらしいのです。すると寝ているときなどに、その管の上方の肉が重力で落ちてきて管を塞いでしまうということが起こります。それでも空気を通すとその部分が振動していびきとなるのですが、もっと塞がれると空気が通れなくなり、一時的に呼吸が止まります。

 それでも心臓はがんばって血液を頭などに送り続けますが、酸素がどんどん減っていきます。長く呼吸が止まると死んでしまうので、それを脳が感じ取り、これはいけない、管を空けろと命令して、再び管を空気が通るようになりますが、その間の心臓の無理などで血圧が上がったり、糖尿病になりやすくなったりという問題が生じるといわれています。太った人は当然脂肪が多いので塞がりやすく、お相撲さんにそういう人が多いことは有名です。

 子どもの無呼吸症候群の場合は、先天的に管が狭いためと思われます。根本的には骨を削って管を広げる手術があるそうですが、手術後は口から食事をとれない時期がありますし、顔を自由に動かすこともできないのでたいへんです。大人は少なくともそうした手術は無理だといわれています。

 ご相談のお子さんが、もしも管が狭くて、そこで管が塞がれがちだということであれば、それが発声を邪魔している可能性もあるかもしれません。いずれにしても、専門的な判断を仰ぐことが肝要で、無呼吸症候群の治療とあわせて、吃音への対応を考えることが大事でしょう。成長とともに克服されていくものかもしれません。

 吃音への対応で大事なのはプレッシャーを与えないことだといわれています。いずれの場合も、あまりに「大丈夫、大丈夫」と言い過ぎることにも注意し、子どもに「ゆっくり言っていいよ」とか、「はじめにひと息吸ってから話してみたら」とか、あれこれ応援してあげてください。その際、呼吸器科の先生とは別に、言語聴覚士のところで吃音の子どもへの接し方についてアドバイスをもらうようにするといいと思います。ともかく、いまは専門家の意見を参考にしたほうがいい局面だと思います。

 子どもはいつか吃音を克服していきます。周囲で大人の吃音者をあまり見ることがないのは、克服している人が多いからでしょう。ですから、基本的には「何とかなる」と思っていていただきたいのですが、お子さんのためにも、ていねいな対応をしてあげてほしいと思います。