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母乳とミルク・授乳

Q. 生後1か月。おっぱいを嫌がり飲みません。吸わせる努力を続けるべきですか? (2015.11)

  • (妊娠週数・月齢)1か月

生後1か月になりますが、いままでほとんど母乳を飲んでもらえていません。生まれた日からおっぱいをくわえもせず、たまに吸ってくれたときは奇跡だとも思います。吸うといっても多くて1日に片側を3回くらいです。産院で乳首の形も問題ないと言われましたし、母乳も出ています(ただ、最近は出にくくなってきました)。よく「赤ちゃんはおっぱいが好き、母乳が好き」と言いますが、信じられません。夜中以外は母乳を飲んでほしくてチャレンジし続けていますが、正直、ミルクタイムが苦痛です。おっぱいをあげようとすると泣き声がひどくなり、激しくのけぞります。こういう状況でもおっぱいを吸わせるチャレンジを続けるべきでしょうか?

回答者: 市川香織先生

 生後1か月、母乳は出ていて乳首の形も問題ないのに、赤ちゃんがあまりおっぱいをくわえてくれず、苦労されているのですね。これまで1か月間、何とかおっぱいをあげようとがんばってこられましたね。

 赤ちゃんにとっても、この1か月は新しい世界に出てきて、この環境に慣れていくためにたいへんな期間でした。赤ちゃんにとって、胃にモノを入れること、うんちをすること、抱っこされること、重力さえもすべてはじめての経験です。つまり、生後1か月半くらいまでは、赤ちゃんもお母さんのおなかの中の環境からの移行期といえ、いろいろな反応をするのです。

 大人の感覚で赤ちゃんを見ると、赤ちゃんがこちらの思いもしない反応をするので、イライラしたりあせったりしますね。でも、赤ちゃんとの生活は「起こったこと」が「正解」なのです。まずは赤ちゃんのあるがままを受け入れるしかありません。

 そうはいっても、おっぱいをあげようとすると泣かれ、激しくのけぞられるとつらいですよね。赤ちゃんがおっぱいを嫌がる原因はいくつか考えられますが、次のようなことはなかったでしょうか。
 おっぱいをくわえさせるために赤ちゃんの頭を押さえて授乳しようとしていた、おっぱいをくわえさせようとするときお母さんが乳房をゆすっていた、などです。赤ちゃんは自分で自由に飲みたいのです。

 また、赤ちゃんのからだに痛みや不具合があるときもおっぱいを嫌がることがあります。とくに出産直後は、出産時に赤ちゃんに何らかの負担がかかって体のどこかに痛みがある場合や、胃食道逆流がある場合などがあります。

 はっきりと原因がわかれば、その原因を取り除いたり、対処したりすることでうまくいくこともありますが、原因がはっきりわからない場合も多いもので、まずは次のような対応をしてみるのもひとつの手です。

 まず、お母さんは、赤ちゃんから離れる時間を減らし、「スキンtoスキン・コンタクト」をたっぷりとります。スキンtoスキン・コンタクトとは、お母さん(上半身)と赤ちゃんが裸の状態で、赤ちゃんを胸に抱いてその上から服を着たり、布団でくるんだりする方法です。母子ともに裸になってスキンシップする方法は、育児で何か困ったときにはとても効果的のようです。なるべくほかの人のいないところで、誰にも邪魔されず、赤ちゃんと密着することがポイントです。

 また、同じような意味で、スリングや抱っこ紐などを利用して、できるだけ長時間、裸で密着した状態で過ごし、いつでも赤ちゃんのそばにおっぱいがある状態にして、常に直接おっぱいにトライできる環境が作れるとうまくいく場合もあります。お風呂に入り、湯船で赤ちゃんを胸に乗せて密着したときにおっぱいがうまく飲ませられたというお話もよく耳にします。普段の授乳でも、お母さんが少しリクライニングした姿勢で十分にリラックスして、胸の上に赤ちゃんを乗せるようにしてあげると同じような効果があります。

 おっぱいをあげるタイミングも、少し変えてみるといいかもしれません。しっかりと目覚めているときにはおっぱいを嫌がる赤ちゃんも、とても眠そうにしているときにはうまく吸いついたりします。
 また、哺乳の準備ができた赤ちゃんは、まだ目が覚める前からサインを出します。最初は、体の一部をぴくぴく動かしたり、くねくねさせたり、頭の向きを変えたり、睡眠中にもぞもぞと落ち着きをなくしたりします。手が顔の近くにあれば、手で顔をこすったり、手や口の近くにあるものを吸おうとしたりもします。この初期のサインが出たときにおっぱいをあげると、吸いついてくれる可能性が高まります。

 その後、赤ちゃんは鼻をくんくん言わせたり、少しイライラした様子を見せたりし始めます。徐々に泣き始め、最終的には最大音量になるまで泣いて、とっくに栄養が必要になっていることを知らせようとします。こうなると“ストライキ”に入ってしまう赤ちゃんもたくさんいるのです。いつも赤ちゃんの近くにいて要求をすぐに察知して、初期のサインのうちに授乳を開始できれば、赤ちゃんが不機嫌になる前におっぱいをあげることができるでしょう。このとき、乳房をゆすったり乳房のほうを向くように頭を押さえつけたりするのは避けましょう。

 もしも、これらの方法をまだ試していないようであれば、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。お住いの地域で、母乳育児支援で開業している助産師もいますので、相談しながらチャレンジするのもひとつの方法です。ミルクのみに切り替えるのは、いろいろ試したあとでも遅くないのではと思います。

 ただし、ミルクで育てたからといって、赤ちゃんの成長や発達に違いが現れるわけではありません。赤ちゃんへの対応に疲れきってしまっているなら、まずは休息をとることも必要かもしれません。でも、ミルクで育てている方のなかには、母乳育児がもっと楽にできるのに、適切な支援を受けていないため、あるいは、おっぱいをあげるタイミングなどの情報が得られなかったため、母乳で育てる機会を奪われてしまった方もいるようです。

 母乳で育てたいと思うのはヒトという動物の本能なので、無用なこだわりや母親のエゴなどではありません。どうぞ、赤ちゃんとの触れ合いを十分楽しんで、その先にある母乳育児をしていただければと思います。