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性格・親のかかわり・育て方

Q. 3歳の長男が生後6か月の妹を叩いたりつねったりするようになりました。 (2016.3)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳の長男について相談します。6か月の妹がかわいくてたまらない様子でベタベタしていたのですが、最近、叩いたりつねったりするようになりました。最初は軽く叩いていたのがどんどんきつくなり、大人の私でも痛いほどなので、「やめてあげて。痛いよ。悲しいよ」と注意してもやめません。また、寝かしつけた途端にラッパを吹いて起こしたり、私に怒られることばかりをしつこくやり続けます。言葉で諭しても何をしてもダメで、最終的には大きな声で怒り、あまりにも言うことを聞かないときは息子を叩いてしまいます。ほんとうにしつこくてなかなかやめず、やさしく抱きしめても叩いてもダメで、どう対応したらいいのかわからず、行き詰まっています。赤ちゃんが生まれて寂しいのかな、やきもちなのかなと思い、「大好きだよ、大事だよ」と言って抱きしめていますが、まだ足りないのでしょうか?

回答者: 帆足暁子先生

 あなたはいろいろ考えて一生懸命お子さんに関わっておられますね。あなたの関わり方の基本は適切です。それなのに、お子さんが変わってくれない……。

 一生懸命に関わってもお子さんが変わらないとき、そこには必ず理由があります。つまり、お子さんには理由があって、まだ変われないのです。

 お子さんは、妹さんのことを「かわいくてたまらない様子」だったのですね。よい兄妹の関係なのでしょう。でも「かわいくてたまらない様子でべたべたしていた」のに、妹さんを「叩いたりつねったり」「最初は軽く叩いていたのがどんどんきつくなり、大人の私でも痛いほど」だったり、「寝た途端にラッパを吹いて起こしたり」「しつこくてなかなかやめない」となってくると、まるで妹さんへのマイナスの気持ちが生じているようです。「最初は軽く叩いていた」ように妹さんへの配慮があったのに、なぜ変わったのでしょうか。

 「私に怒られることばかりをしつこくやり続け」たり、「言葉で諭しても何をしてもダメ」「ほんとうにしつこくて、なかなかやめず、やさしく抱きしめても叩いてもダメ」というお子さんのあなたへの態度は、なぜでしょうか。

 いちばん考えられることは、あなたも感じているように「赤ちゃんが生まれて寂しい」ということです。あなたに、妹さんよりも自分を愛してほしいのです。子どもは、なぜ不安になったのか自分ではわかりません。でも、あなたに向ける思いは強くなる一方です。どうしてよいかわからないのは、お子さんも同じです。決して、あなたを怒らせたいわけではないし、あなたに叩かれたいわけでもありません。どうしたらいいのかわからないお子さんの不安な思いが、結果として、あなたを怒らせてしまうのです。怒りのエネルギーはとても強いものです。その強さはネガティブなものですが、あなたとの強い繋がりでもあります。ですから、そのネガティブな関わりが固着してしまうのです。

 でも、そうしたお子さんの気持ちは理解できても、「やさしく抱きしても叩いてもダメ」となると、どうしたらよいのかわからなくなります。「『大好きだよ、大事だよ』と言って抱きしめていますが、まだ足りないのでしょうか?」という思いは、当然起きてきます。

 確かに、あなたに愛されている実感が足りなければ、お子さんは不安ですから、自分の思いだけでいっぱいで妹さんにやさしく関わるゆとりはもてません。この「足りない」という判断基準は、お子さんを見ているとわかります。足りなければ、安心できないから妹さんにやさしくできない。でも足りれば、妹さんにやさしくできたり、あなたの指示に従ったりできます。お子さんにあなたに愛されている実感がもてれば、ゆとりが生まれるからです。

 お子さんへの関わりがわからなくなったときは、次の3つを考えてみてください。
 まず、お子さんがお母さんに怒られるような関わり方をするときはどういうときですか。そのことを観察していくと、お子さんなりの理由があることに気づくはずです。それに気づけるとお子さんの気持ちをちゃんと受け止められます。受け止められれば、お子さんに愛されている実感が育まれます。

 また、どういうときにお子さんは楽しそうにしていますか。楽しそうにしているときに一緒にその場面を共有することは、あなたとつながっているという思い、すなわち、愛されている実感につながります。

 そして、あなたはどういうときにお子さんを愛しいと思いますか。1日に1回でよいので、愛しいと思える時間をつくってください。その時間はあなたとお子さんを幸せにします。
これらの3つを実践していくなかで、お子さんとの関係を安定させていくことができます。

 子どもとの間で問題を抱えるとき、いちばんのきっかけは不安です。自分の立場が脅かされる不安。その不安は小さなきっかけから生まれることもあります。たとえば、お子さんがいつもよりも悪気はなくふざけて妹さんに関わったときに、お子さんに「止めなさい!」と少し強く言ったとします。そのときのちょっとした語調の違いにお子さんが「はっ」として、「もしかしたらママはぼくよりも妹がかわいいのかもしれない」という疑問が生まれ、その後の何気なく妹を守ろうとするあなたの対応すべてに疑問を感じてしまい、お子さんに不安が生じて悪循環になってしまうということもあるからです。

 あるいは、同じように妹さんにしつこくしても、あなたがあるときはやさしかったり、あるときは怒ったりというように、お子さんへの関わり方に一貫性がないと、お子さんはどう反応してよいのか混乱して不安になるため、あなたを試して一貫性をつくるために攻撃性が活性化されることもあります。

 大切なことは、お子さんに愛されている実感をもたせ、安心感を育むことです。これまでもお子さんのことを考えて工夫されてきたあなたです。大丈夫です。