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性格・親のかかわり・育て方

Q. 自己主張が極端に強い3歳の息子。好奇心を保ったまま落ち着いた子に育てるにはどうしたらよいでしょうか? (2017.1)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳2か月の息子です。1歳頃から他の子よりうるさく行動も激しいと感じ、手におえずに小児科で発達相談もしてきました。現在、更にエスカレートし、自分の要求がかなわない、着替え等さまざまなことでうまくできないとき、大泣きして暴れひどいありさまです。外出先でも同様です。多動を疑いましたが、いろいろな話をちゃんと理解し悪いことも理解できています。ただの3歳の自己主張で個性が強いだけでしょうか? 当たり前の行動でしょうか? 怒ることは、自己主張を妨げ、好奇心をなくし、何も言わない子どもになるとも聞きます。
なぜダメなのか理由をいい聞かせ、息子の言い分も聞いていますが、常にその状況となるので、息子が嫌気をさして内気になりそうで心配です。好奇心等をなくさずに落ち着いた子に育てる方法はありますか?

回答者: 汐見稔幸先生

 子どもは生まれつき、脳の活動タイプがひとりひとり異なります。脳が簡単に興奮する子もいれば、なかなか興奮状態にならない子もいます。興奮した脳を収めることがうまくできる子がいれば、それがなかなかできない子もいます。脳の中心部には、人間の基本的な感情である情動を司っている部位が多くあります。その中心に視床下部という部位があり、いわゆる自律神経をコントロールしています。この自律神経には、神経が興奮するのを司る交感神経と、脳の興奮を収める(抑制)のを司る副交感神経があります。この交感神経と副交感神経の活動の交代がうまくいかなかったり、興奮は激しいが(交感神経はよく働くが)、抑制が苦手(副交感神経がうまく働かない)というように生まれついた場合には、すぐに怒ったり癇癪を起こすうえに、それを抑えることがなかなかできない、という子になりがちです。

 赤ちゃんの場合、それを昔から「疳(かん)の虫がいる」のだといい、激しく泣く子や夜泣きの激しい子などは、そういう虫がいるからだと説明してきました。これも基本は同じ理由で、たぶん、自律神経の交代がうまくできなかったり(幼い子の自律神経の失調)、ホルモンのバランスがよくなかったりするからと言われています。そうした子には薬を飲ませたり、疳の虫を退治してくれるという寺などでおまじないをもらったりしてきました。

 アメリカなどでは脳の活動のパターンをいくつかのタイプに分け、興奮しやすいが抑制は苦手という子を「扱いにくい子(difficult child)」、興奮も抑制も上手という子を「扱いやすい子(easy child)」、なかなか興奮しない子を「火がつくまで時間がかかる子」などと医学的に分類しています。ある研究者がこの基準で調べると、日本では30%以上の赤ちゃんが扱いにくい子に分類されたというデータもあります。「扱いにくい子ども」は、その後、次第にそうした傾向を克服していくものですが、根本的な傾向は、例えば切れやすいなどの性格となって一生続く可能性もあります。

 さてご相談のお子さんですが「自分の要求がかなわない、着替え等さまざまなことでうまくできないとき、大泣きして暴れひどいありさまです。外出先でも同様です」とありますように、興奮過程がとても強いのに、うまくいかない等とわかって収めなければならないときに、うまくそれを抑制できないわけですね。この傾向が3歳になっても強く残っているタイプだと思います。こうしたお子さんは、集団生活を始めて友人とぶつかったり、ときに失敗して落ち込んだりしながら、次第に見通しを持てるようになることで感情をコントロールできるようになるのを期待するしかないと思います。理屈で感情をガマンする力の育ちを待つということです。親としては困ると思いますが、こうしたお子さんへの特効薬はないと考えたほうがいいということです。

 もともと生理的な背景があって生じていることを、心理的に克服していくわけですから時間がかかります。ただし、興奮して人を寄せつけない状態のときに、それを頭ごなしに叱ると逆効果になる可能性があることは知っておいてください。頭ごなしに叱るのではなく、お子さんの目をしっかり見ながら、ダメなときはダメといい続けることで、自分のやっていることはダメなことなのかと感じとらせていくのです。今はまだ3歳になったばかりですから、理由をあれこれいってもあまりわからないと思います。そこはケースバイケースで時間をかけて収めていくしかありませんが、ともかくお母さんは「それはダメといっているのだからわかってちょうだい」と粘り強く続けるわけです。

 時間がかかりますが、いずれ丸くなります。こうしたお子さんは、長じても、自分に苦労した分、人のことも分かる人間になる可能性があります。そういうことを見越して、しばらくがんばってください。