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性格・親のかかわり・育て方

Q. 2歳1か月の男児です。人をたたくことが増え困っています。どう対応すればよいでしょうか? (2017.3)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

2歳1か月の息子がいます。1歳くらいから徐々に手を出す行動が出てきました。1歳半の時期に保健師さんに相談して様子をみてきましたが、最近はお友だちを追いかけてたたいたり、日常的に夫の顔や頭を遊ぶようにたたいたり、外出先でも息子のテリトリーに入る子どもを中心に、押したりたたいたりしています。また怒っているときや、楽しくて興奮しているときも、私や夫に手を出すことが増えました。そして、たたいた後に私の反応を伺っているときがあります。「ダメだよ」「やめようね」と優しく注意することを心がけていますが、つい感情的に怒ってしまうこともあります。今はイヤイヤ期で、手を出すことを注意することにも反抗しています。
どのような対処をしたらよいかわかりません。人見知りや指しゃぶりをする息子です。私が息子の気持ちを汲み取ってやれなかったことや、愛情不足からこのような反動が出ているかとも悩んでいます。

回答者: 高橋惠子先生

 幼児の攻撃行動は、深刻な心理的理由による問題行動というよりも、たたいたりして攻撃すると、親やまわりの人たちが注目してくれるという経験からきた“困った癖”だと考えるのがよいでしょう。たたくことが周囲の人たちの関心を自分に向ける便利な方法だと学習してしまったのです。相手のいやがることをわざわざして他人、特に、自分を愛してくれている人、あるいは、愛してほしい人の関心を自分に引きつける行動を、心理学ではネガティブ・アテンション・シーキングと名づけています。このような用語を必要とするほどよく見られる行動なので、それほど深刻に考えなくてもよいと思います。

 しかし、他人に手を出すという癖は、本人にとってもまわりの人にとっても良いこととは言えません。この状態が続くと「乱暴な子だ」と誤解されたり、子どもたちに嫌われて仲間に入れてもらえなくなったりする恐れもあります。
この癖を克服するには、まず、第一に、攻撃行動は悪いと親がしっかり考え、それを子どもに伝える決心が必要です。子どもの攻撃行動を父親がふざけているとして許したり、母親が「やめようね」と優しく諭したりするのでは、親の考えは伝わりません。まず、しっかり考えてください。

 第二に必要なことは、親に対する攻撃行動に注目しないこと、無視することです。攻撃をして関心を引こうとしているのですから、それが通じないことがわかれば、子どもは「これは有効ではないな」と知ります。ただし、攻撃が幼い子どもに向けられたり、重大な結果(けがや物の破損など)が生じたりする場合には、攻撃行動をすぐに「ダメ」と制止し、その理由を言葉でしっかり伝えましょう。親がこの事態を真剣に考え、禁止していることをしっかり伝えるチャンスです。1、2歳では言葉ではよくわからないであろうからと、いい加減にしないことが重要です。細かいことは理解できなくても、親がどれほど真剣に伝えようとしているかは子どもの心に届きます。ただし、その際に子どもをたたいたり、罰を与えたりはしないことが重要です。暴力を暴力で制するのでは、子どもの攻撃の癖をさらに増長させることになります。

 第三に重要なことは、子どものよい行動に注目し、励ますことです。子どもが何かを我慢できたとき、ちょっとしたお手伝いを頼んでみてそれができたときなどの機会をとらえて、「よくできたね」「あなたのことが大好きよ」などと、言葉で伝えましょう。頭をなでたりハグしたりするのも有効です。ちょっと大げさかなと思われる賞讃や励まし、つまり、ポジティブ・フィードバックが子どもには非常に有効です。

 一度できた悪い癖が消えるには時間が必要です。あせらずに、上記の3つのことを試みてはいかがでしょう。悪い行動を起こりにくくし、望ましい行動を起こりやすくすることを助けるのが親の役割です。そのためには、どのような行動を望ましいとするか、その決心が、親には必要だと私は考えます。