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歯とお口のケア

Q. 1歳2か月の娘。赤ちゃんのむし歯について教えてください。 (2019.3)

  • (妊娠週数・月齢)1歳2か月

1歳2か月になった娘の歯で心配事があります。朝夕しっかり歯磨きをしており、昼も磨いているのですが、歯と歯ぐきの境目が、他の歯に比べてクリーム色っぽいような状態になっている歯があります。3か月前、歯の一部だけが白くなっていたときがあり、心配で受診しましたが、そのときは、むし歯でも歯の病気でもないと言われました。赤ちゃんのむし歯は白いというので、とても心配です。白くなっているむし歯と、白くてもそうでないものの違いがわかりません。見分け方はあるのでしょうか?

回答者: 井上美津子先生

 生えてきたときからみられる歯の白い部分は、形成不全といって、歯があごの骨の中で形成された時期の問題で生じることが多く、生えた後にだんだん白くなってきた歯は、初期むし歯の可能性があります。
 
 1歳2か月ですと、前歯が上下で4本ずつ計8本の乳歯が生えていて、そろそろ第一乳臼歯と呼ばれる奥歯が生えてくる子どもも出てくるころですね。まだむし歯はごく少ない時期ですが、離乳が完了を迎え、いろいろな食べ物が食べられるようになり、糖分を多く含むジュースやお菓子などをとり始める子どももでてくるため、むし歯のリスクは高まりやすい時期でもあります。

 歯の一部や歯ぐきとの境目の色が他の部分と違っていると、心配になる保護者も多いかと思います。歯科受診して、むし歯ではないと言われたということですので、3か月前の白い部分は形成不全の可能性があります。
 形成不全は、歯が作られるときに構造上の問題が生じたもので、軽度だと白斑といって透明感のない白色となります。表面が滑らかでツヤのある形成不全なら、むし歯にならないようにケアして経過をみていけばよいと思います。形成不全が重度ですと、歯の表面が欠けたり、褐色になってきめが粗くなることもあるので、歯科での管理が必要です。

 初期むし歯ですと、歯の表面からカルシウムやリンなどのミネラル成分が溶けだして「脱灰」が生じた状態なので、歯が白くザラザラした感じになります。この時期ですと、歯の汚れ(プラーク)が付きやすい歯ぐき寄りの部分や歯と歯の間、また少しくぼんだ上の前歯の裏側に、初期むし歯がみられがちです。
 歯と歯ぐきの境目がクリーム色っぽいというのは、もともとの色か、または歯石の可能性もあります。1歳を過ぎると乳歯の前歯は長さもしっかり生えてきます。歯の表層のエナメル質は、歯ぐきとの境目近くでは薄くなるので、エナメル質の下の象牙質の色を反映して、少し黄色味を帯びて見えることがあります。また、1日に何度も歯磨きを行っているようですが、歯ぐきとの境目がうまく磨けていないと、そこに歯石が付着することもあります。もし歯石でしたら、次に歯科受診したときに取ってもらえるので心配いりません。

 1歳代は、食生活習慣に気をつけながら、歯磨きの習慣化(まだ保護者中心の歯磨きです)を図って、むし歯予防を行っていく時期です。この時期に気をつけたいのは、食生活の規律性と、糖分の多い飲食物の取り方です。「離乳を完了して、3回の食事でほぼ必要な栄養がとれるようになる」とはいっても、1歳児はまだ胃の容量が小さいため、3食に加えて午後1回、または午前・午後2回の間食(おやつというよりは補食)が必要になります。食事と間食の間隔を適度にあけて(できれば2時間くらい)生活リズムを整えていくことが望まれますが、就寝が遅く、起床も遅い子どもでは、生活リズムが不規則になりがちです。寝不足や運動不足で食欲がないと、食事量が少なくなって、かわりに食後すぐおなかが空いて何か食べたがったり、ジュースや牛乳を頻繁に飲むような食生活になりがちです。このような頻繁な飲食は、むし歯のリスクを高めます。

 また、3食で足りないカロリーや栄養を補うための間食としては、食事に近い内容のものや乳製品、果物、いも類などがお勧めです。一方、この時期から甘い菓子類や糖分の多い飲み物などを与え始めると、むし歯のリスクは一気に高まります。汚れがたまりやすい乳歯の奥歯が生えて、砂糖を含む飲食物を取り始めると、むし歯菌(ミュータンス菌)が伝播・定着する子どもがぐんと増えてきます。そこに、糖分の多い菓子類やジュースなどを頻繁に与えると、むし歯ができやすくなるわけです。

 とくに「寝る前の飲食」と「哺乳びんでの糖分を含んだ酸性飲料の摂取」は要注意です。就寝中は唾液がほとんど出なくなるため、寝る前に飲食したものが長時間口の中に残りやすく、むし歯の原因となりやすいのです。母乳やミルクでも、授乳後すぐ寝かせることが習慣になってしまうと、むし歯のリスクを高めます。また、市販のジュース(果汁飲料)、乳酸飲料、炭酸飲料、イオン飲料(スポーツ飲料)などは、ほとんどがpH4.0以下の酸性の飲料であり、飲みやすくするために糖分が加えられています。歯の表層のエナメル質は、pH5.4以下でミネラル成分が溶けだします。通常は、唾液の働きで時間が経つとミネラル成分が元に戻るのですが、哺乳びんでこれらの飲料を長時間飲んでいると、飲料の酸とむし歯菌の作った酸の両方でミネラル成分の溶けだしが続き、脱灰が進んでむし歯が発生しやすくなるわけです。哺乳びんでなくても、水代わりにしょっちゅう飲んでいると、同じようにむし歯ができやすくなりますので気をつけましょう。

 むし歯予防のためには、家庭における食生活の管理や歯磨きの実施がもちろん大切ですが、できればかかりつけの歯科を定期的に受診することをお勧めします。むし歯のチェックばかりでなく、歯の生え方に合わせた歯磨きの仕方を教えてもらったり、希望すればフッ化物の塗布などもしてもらえると思います。