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歯とお口のケア

Q. 4歳の息子。使用していたフッ素入り歯磨きジェルの影響が心配です。 (2019.4)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

現在4歳の息子ですが、1歳ごろから就寝前の歯磨きで、フッ素入り歯磨きジェルを毎日使用していました。最近になってから、フッ素の取り過ぎはフッ素症になったり、斑状歯になったりすると知りました。ジェルを飲み込んでしまったりする時期から長期にわたり使用してしまったことと、年齢に対してフッ素濃度が高かったのではないかと心配しています。使っていた歯磨きジェルは濃度が950ppmでしたが、大丈夫でしょうか? いまから気をつけることがあったら教えてください。

回答者: 井上美津子先生

 たしかに乳幼児には500ppm以下のフッ化物配合歯磨剤が勧められていますが、これはおいしいからと歯ブラシにつけてなめたり、チューブから直接食べてしまう可能性まで考えてのことです。乳幼児用の小さい歯ブラシにつける程度の歯磨剤の量や、就寝前1日1回ということでしたら、950ppmでもそれほどフッ素の過剰摂取ということにはならないと思いますので、ご心配はいらないと思います。

 1歳ごろから就寝前の歯磨きを実施されていたとのこと、お子さんの口の健康に早くから関心を持っていただき、小児歯科医としてはありがたいです。ただ、950ppmの歯磨きジェルを使っていたことで、飲み込んでしまって何か影響があるのではないかとご心配なのだと推察されます。小さなお子さんの歯磨きは、すぐ飽きてしまうので充分時間をかけて行うことが難しく、むし歯予防も多面的に行う必要があります。フッ化物の利用はエビデンスのあるむし歯予防手段であり、フッ化物配合歯磨剤も効果的です。一方、歯の形成期のフッ素の過剰摂取は、歯のフッ素症(斑状歯)のリスクがあることも事実です。そこで、どのくらいから過剰になるのかが問題になるでしょう。

 成人用の大きな歯ブラシで、ブラシの半分くらいの量の歯磨剤を使うと0.5~0.8gくらいなので、950ppmとしてフッ素量は0.48~0.76mgとなります。しかし、子ども用の歯ブラシにピーサイズ(エンドウ豆くらい)の歯磨剤をつけた場合は0.25~0.4gくらいなので、フッ素量は0.24~0.38mgとなります。おそらく赤ちゃん用の歯ブラシでしたら、もっと使用量は少なかったのではないかと思われます。

 米国の歯科医師会や小児科学会では、水道水のフッ素化をしていない地域の子どもの1日のフッ化物推奨投与量を、3歳以下の小児では0.25mg、3~6歳の小児では0.50mgとしています。また日本でも、1日に摂取するフッ化物の安全上限値(フッ素症などのリスクがでてくる値)を体重1kgあたり0.1mgとしています(10㎏の子どもで1.0mg/日、15kgの子どもなら1.5mg/日)。水道水のフッ素化が行われていない日本では、お茶や海藻など食品からとるフッ素をあわせても、この上限値に達することはほとんどないと考えられます。成人量の歯磨剤を全部飲み込んでしまうと、推奨量は超えてしまいますが、1日1回なら安全上限値は超えません(推奨量を超えると過剰摂取といえるでしょう)。子ども用の歯ブラシでこれだけの量を使うのは難しいと思います。

 上記の理由で、少し濃度が高めのフッ化物配合歯磨剤でも、親の管理下で使う場合は、幼児期でも大きな問題はないかと思われます。ただ、永久歯の形成不全(白斑ができたり、歯の表面がザラザラになる状態)はフッ素以外の原因でも起こり、白斑などは原因が不明のことも多いので、永久歯が絶対大丈夫という表現は、残念ながらできません。