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歯とお口のケア

Q. 2歳の子。歯みがきに時間が掛かり顎の負担になっていないか不安です。 (2019.6)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

16本の歯が生えている2歳の子です。奥歯と犬歯が生え始めた1歳8か月ころから歯みがきに時間がかかるようになり、最低でも15分はかかります。子どもの機嫌が悪いときや丁寧にみがいたときは25分ぐらいかかることも。1日3〜4回歯をみがいているため、口を開けている時間が長く、顎に負担が掛かって顎関節症になっていないか不安です。どういう症状があったら歯科を受診すべきですか? また、歯みがきの適切な所要時間、1日の回数、タイミングについて教えてください。

回答者: 井上美津子先生

 あまり長時間の歯みがきは、親にも子どもにも負担が大きいものと思われます。むし歯予防は、食生活なども含めて行っていき、歯みがきは習慣づけを第一に考えて実施していきましょう。

 子どもの顎関節は、下あごの骨の関節頭(耳の前方にあります)を受け止めるくぼみが大人より浅めなため、下あごが動きやすくなっています。特に、低年齢児ではくぼみが浅く、顎の動きの自由度がより高くなっています。関節部分が、顎の開閉時に痛むとか、カクカク、ギシギシと音がする、顎が開きづらくなるなどの顎関節症は、成長とともにくぼみが深くなると起こりやすくなります。小児期の顎関節症は、幼稚園児での発症は5%前後で、中学生から高校生以降に発症者が増えてくることが報告されています。

 乳歯が生え揃う前の2歳ころには、少し長く口を開いていても顎関節に大きな負担がかかることはあまりないと考えられます。ただ、1日3~4回の歯みがきを毎回15分以上行っているとのことですが、顎への負担ということより、お子さんやお母様自身の負担が大きいのではないかと心配です。

 子どもの歯みがきについては、初めのうちはそれほど嫌がらずみがかせてくれても、1歳半ころになると急に口を開かなくなったり、自分でやるからと親の歯みがきを嫌がる子どもが増えてきます。歯みがきだけでなく、他の行動でも「いやいや」が目立つのは、子どもの発達の一面とも考えられます。子どもをなだめながら歯みがきしていると、時間がかかってしまうのでしょうね。でも15~25分は、大人でもなかなかみがいていられない時間です。もう少し短時間でみがくやり方を工夫してはいかがでしょうか。

 歯科医院や保健所・保健センターなどでの歯みがき指導では、歯ブラシの当て方や動かし方、それぞれの部位をみがくときの注意などを説明しながらみがくので、15分近くかかってしまうこともありますが、それを家庭で毎回実行するのは難しいと思います。また、毎食後の歯みがきが望ましいのは確かですが、もう少し余裕を持ってもよろしいかと思います。2歳ですと、徐々にうがいができるようになる年齢ですので、子ども自身に食べたらうがいをすることを習慣づけ、親の仕上げみがきは朝・昼は簡単に(2~3分以内で)終わらせるようにし、夕食後または寝る前の仕上げみがきを少し丁寧に(それでも3~5分以内で)行うようにしたらいかがでしょうか(寝ているあいだは唾液の分泌が少なくなるので、むし歯ができやすくなります)。奥歯は噛む面・頬側・舌側、前歯は唇側・舌側と各部位を10~20回ずつみがいても、手際よくみがけば3~5分以内でみがけると思います。一定時間でみがき終えたほうが、子どもの協力も得やすくなると思います。具体的なみがき方は、かかりつけ歯科医院などで教えてもらうとよいでしょう。

 むし歯予防のためには、様々なアプローチが考えられます。食生活面では、食事や間食の規律性や甘味飲料・甘味食品の摂り方の工夫が重要で、時間を決めて与えたり、糖分の多い飲食物を控えることなどが効果的です。また、フッ化物の応用(歯科医院でフッ素を塗布してもらったり、フッ素入りの歯磨剤を使うなど)も有効です。幼児期は、規律性のある食生活や歯みがきなどの生活習慣が身についていく時期であり、また「親にやってもらう」から「自分でやる」に変わっていく時期でもあります。歯みがきとともにこれらを上手に組み合わせてむし歯予防を行っていくことで、歯みがきを徐々に日常の生活習慣として子どもに身につけてもらえればいいですね。子どもが、うがいができるようになったり、自分でみがこうとしたときなどに、しっかりほめてあげて、その後「自分ではみがきにくいところを仕上げみがきしてあげようね」というようなアプローチをしていくといいでしょう。また、子どもにも歯ブラシを一緒に持たせてみがくやり方もあります。3歳ころになると言葉による理解も進むので、「きちんとお口を開くと早く終わるよ」というような言葉かけも有効でしょう。どうしても機嫌の悪いときは、うがいで済ますくらいの気持ちの余裕が必要です。食生活に気をつけて、歯みがきをノルマとして考えるより、子どもとのやり取りを楽しむくらいの気持ちで対応していただければと思います。