赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバー家族関係・夫婦・ママ友

家族関係・夫婦・ママ友

Q. 小学生の娘。離婚による精神面への影響が心配で迷っています。 (2019.6)

  • (妊娠週数・月齢)7歳〜

海外在住、小学生の娘の母です。単身赴任中の夫に女性関係で裏切られ、離婚を考えています。ただ、娘が父親を好いているため、迷ってもいます。夫は離婚に反対ですが、女性とは赴任先で家を買って子どもを授かる気でいます。彼女の存在も私たちに隠していません。娘は、お父さんとお母さんが一緒にいて欲しいと言っています。父親と彼女との関係をよく理解できない年齢だと思いますし、夫と3人でいる時間は、少なかったなりに楽しく過ごせていたと思います。
ただ、婚姻したまま娘が思春期を迎えると、父親に嫌悪感や軽蔑の気持ちを覚え、傷つくのではと思います。私に対しても不信感を持つ気がします。そういった悪影響と、離婚して、たとえ面会はあるにしても父親不在となる悪影響では、どちらがより深刻なものでしょうか?
離婚しない場合、生活はいまと変わらず保障すると夫は言います。ただ、離婚してもこちらの法律では、女性が手厚く守られるので財産分与など有利であり、日本には私の両親も健在なので身を寄せることもできます。娘の精神面だけが心配です。

回答者: 高橋惠子先生

 子どもがいる夫婦が離婚に踏み切るには勇気がいります。そして、親がもっとも心配するのは、質問者のように、子どもへの影響です。しかし、親の離婚前後の子どもの状態の観察や、離婚を経験した子どもの面接などによる研究は、離婚そのものの子どもへの影響はそれほど大きくはないと報告しています。離婚を受け容れることは、子どもにとってさして難しいことではないようです。しかし、離婚に際して注意するべきことがあります。問題を検討してみましょう。

1.離婚の過程で傷つく子ども
子どもにとってつらいのは、離婚そのものではなく、離婚するまでの「過程」だと報告されています。離婚するまでの過程では父母の険悪な関係に巻き込まれつらかったが、離婚が決まって解放されたと、子どもは報告しています。両親がもめたり、母親が不安定になったりする状況で、子どもは悩み傷つくのです。親が不安定になり、家庭の雰囲気が暗いという状態は、子どもにとってつらいものになります。愛情に満ち、安心・安全がもたらされるべき家庭でトラブルがあるのですから、子どもは「これから自分はどうなるのだろう」と心を痛めることになります。したがって、離婚の過程を長引かせないことが必要だといえます。

2.子どもに離婚の了解を取る問題
子どもは親が離婚するのは自分が「悪い子」だからではないか、自分のせいではないかと思いこんでしまうと報告されていることです。したがって、離婚するのは子どものせいではないことを、よく伝える必要があります。離婚を経験した子どもは、離婚の理由を隠さないでほしいと訴えています。そしてそのうえで、離婚は親たちの事情なのだから、子どもに「離婚の了解」を取らないでほしいとも訴えています。まして、「子どものために」離婚する、あるいは、離婚しない、などと子どもに任せるのは酷なことです。親が自分のするべき決断から逃げていることになります。

3.親を尊敬したい子ども
子どもは離婚した親の悪口を聞かされることを非常に嫌っています。親を否定されると、自分が誕生したこと、自分が存在することそのものを否定されていると感じるのです。たとえ許せない事情があったとしても、子どもの親についてとやかくいうことは、避けなくてはなりません。母親から見て許せない父親でも、子どもは父親にかわいがられ、楽しい思い出を持っている場合が少なくありません。離婚しても親子であることは動かせない事実ですし、親子であることは今後も続きます。そこで、民法で保障されているのが、別れて暮らす親との「面会交流」です。面会の方法や時期などは父母が話し合って決めることになっていますが、家庭裁判所が調停するような事例も多く、子どもの幸せを重視した内容になるように、しっかり決めておく必要があります。

4.「母が重くてたまらない」
心理カウンセラーの信田さよ子さんは豊富な事例にもとづいて、日本の母子関係についていろいろな問題を指摘しています。特に注目しているのは、自分を犠牲にして「娘のために」と子育て最優先で生きてきた母親は、娘に「私のために生きてきた母親に申し訳ない」という精神的な負担感を持たせ、自由に生きることをあきらめさせ、やがて、「母が重くてたまらない」と嘆かれるようになるという指摘です。子どものためにと離婚をとどまったり、子どものために現状を受け容れようというのは、実は子どもには迷惑になるであろうという問題です。母親は子どもの「世話」だけをする人ではなく、人間としてしっかり生きることを子どもに見せる人であってほしいと考えます。「人生百年時代」は、母親としてだけでは生きられません。子ども以外の何かを見つけて、しっかり自分の人生を生きなければ、やがて子どもの重荷になります。それは、親としても望むことではないでしょう。

最後に
質問者の記述から推し量るしかないのですが、質問者が検討されている家族や家庭のあり方は、現在の日本の常識や法律から見ると、理解が難しいと思われます。上述したような心理学の観点からの検討を参考にしていただけるとよいと思います。そして、同時に、父親の一時の言い逃れにならないように、子どもの将来の幸福や権利をしっかり守れるように、親権、養育費、面会交流などの内容を検討することも考えてはいかがでしょう。難しければ、弁護士などの専門家の支援を受けるのもよいでしょう。