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歯とお口のケア

Q. 舌突出癖のある1歳5か月。将来の歯並びや滑舌が心配です。 (2020.6)

  • (妊娠週数・月齢)1歳5か月

1歳5か月の子です。1歳を過ぎたあたりで気づいたのですが、寝るときや、日中眠いときに、上下の歯で舌を挟んで舌を吸っています。寝ているときに閉じている口を開けて見ると、上下の歯に挟まって舌がはみ出ている状態のときもあります。いろいろ調べてみると舌突出癖のようです。舌突出癖だと将来、歯並びが悪くなったり滑舌が悪くなったりしてしまうと書かれていました。この癖は成長とともに改善されるのでしょうか? 小さいうちは様子見で大丈夫でしょうか。それとも癖を直す治療などが必要でしょうか。自分自身が歯並びが悪くて虫歯になりやすく、小さいころからよく歯医者に通っていたのでとても心配です。

回答者: 井上美津子先生

 1歳児にみられる吸う行為は、まだ習癖として捉えて心配する必要はないかと思われます。乳歯が生え揃うまでは、歯並びや噛み合わせへの影響も出にくいものです。食事やおしゃべりを一緒に楽しみながら様子をみていってください。もし心配なら、かかりつけ歯科を探しておくのも一案です。

 1歳児には、さまざまな「吸う」行為がみられます。指しゃぶりやタオルしゃぶり、玩具しゃぶりなど、乳児期からみられる行為も多いのですが、母乳や哺乳びんの使用をやめたころからみられ始める行為もあります。これらの吸う行為は、哺乳の代償的な行為とも考えられており、吸啜本能を満たそうとする行動とも解釈されています。また、吸う行為には精神安定の効果もあるため、1歳を過ぎて離乳の完了や卒乳の時期になっても、就寝時や日中の眠いときには気分鎮めのための吸う行為がみられることが多いようです。ご質問の1歳5か月児の「上下の歯で舌を挟んで舌を吸う」という行為は、このような吸う行為の一環ではないかと考えられます。

 舌突出癖は、長期間続くと歯並びや噛み合わせに影響を及ぼしやすい口腔習癖です。また、歯並び・噛み合わせの不正や舌の動きの異常が、発音や食べ方などの機能的な問題を生じることもあります。ただし、このような問題が明らかになるのは、乳歯が生え揃ってからのこと(3歳ころから)であり、乳歯の最初の奥歯(第一乳臼歯)が生えたばかりで、噛み合わせも完成していない1歳児では、形態的・機能的な問題は起こりにくいと考えられます。そのため、1歳児の舌や唇を噛んだり吸ったりする行為は、まだ口腔習癖としての捉え方をする必要はなく、見守っていけばよいかと思われます。

 さらに、舌突出癖が歯並び・噛み合わせや発音などに影響を及ぼしやすいのは、口呼吸や口唇の閉鎖不全を伴っている場合です。食べ物や唾液を飲み込むときに唇が閉じていないと、舌が前方に突出しやすくなり、それが日常的に繰り返されることで歯並びや噛み合わせへの影響が生じやすくなるわけです。このお子さんは「寝ているときに閉じている口を開けてみると、…」とあるように、無意識に寝ているときにも口は閉じているようですので、口唇閉鎖にいまのところ問題はなさそうです。また、成長とともに食事やおしゃべりなどで舌の使い方が上手になると、自然に改善する可能性もあります。日常生活のなかで、鼻呼吸や口唇閉鎖を習慣づけるアプローチをして、様子をみていきましょう。

 幼児期は口腔機能の発達も著しい時期ですので、早めにかかりつけ歯科で診てもらうようにしてもいいでしょう。かかりつけ歯科は、むし歯ができたから通うところではなく、定期的な歯科健診やむし歯予防のための保健指導などをしてもらうところであり、乳歯の生え方や歯並びをチェックしてもらったり、歯や口に関するいろいろな相談に乗ってもらえるところでもあります。最近は小児の口腔機能発達に関心の高い歯科医師も増えてきています。

 3歳を過ぎても、舌を噛んだり突出する癖が続いていたり、発音に気になるところがみられるようでしたら、対応を歯科医師と相談しましょう。4歳ころになると、子どもの理解力や協力性が高まるので、舌の機能訓練(トレーニング)を始めることもできます。