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歯とお口のケア

Q. 生後7か月になる子。5か月ころから生えてきた歯が伸びません。 (2021.3)

  • (妊娠週数・月齢)7か月

生後7か月になる子どもがいます。生まれたときから下の前歯が2本生えており、抜歯をしました。5か月ころになって、下の前歯を抜いた片方の部位から歯が生えてきました。ところがその歯は黄色く、歯ぐきから上に伸びてきません。生えてきたのは乳歯で間違いないでしょうか? それとも、永久歯がすでに生えてきたという可能性はあるのでしょうか? また、歯は伸びきっていませんが、歯医者さんで診察してもらえるでしょうか?

回答者: 井上美津子先生

 生まれたときにすでに生えていた歯は先天歯と呼ばれており、余分な歯(過剰歯)のこともありますが、本来の乳歯が早く生えてきた(早期生歯)場合もあります。5か月時に生えてきたという歯は、おそらく永久歯ではないと思われますが、先天歯の残遺物なのか、新たな乳歯なのか不明です。歯科受診して、エックス線写真などで調べてもらうとよいでしょう。

 先天歯は、出生時にすでに生えている歯(出産歯)と生後4週以内の新生児期に生えてくる歯(新生児歯)の総称です。発現頻度は1,000人に1~2人程度で、下顎の前歯部に1本あるいは2本生えてくることが多く、まれに上顎の前歯部や犬歯部に見られます。本来の乳歯が何らかの原因で早期に生えてきた場合もあれば、余分な歯(過剰歯)の場合もありますが、多くは乳歯の早期萌出です。お乳を吸うことで栄養を摂取する新生児期に歯は必要なく、かえって哺乳の邪魔になることもあるため、かつては「鬼歯」とか「魔歯」と言われていました。

 先天歯は、まだ歯根が形成されていないことが多く、生えてきてもグラグラになりやすいため、誤飲・誤嚥の危険性がある場合は抜歯が必要です。また、動揺は著しくなくても、歯の先端で舌の裏側が傷ついて潰瘍ができ、痛みで哺乳に支障が生じることもあります。歯の先端を削って丸めたりして、傷つきにくくすることで歯を保存できることもありますが、傷が治らず哺乳がうまくできない場合は抜歯が必要となります。動揺もなく、哺乳障害もなければそのまま保存しますが、先天歯は歯質の形成も不完全なことが多く、歯の表層のエナメル質が薄かったり、形成不全となり黄褐色でややもろいことがあります。このような場合は口腔ケアへの注意が必要になるため、定期的な歯科健診や保健指導を受けることが望まれます。また、抜歯した場合でも、周囲の乳歯の生え方の経過を見ていったり、歯並びをチェックしていき、必要に応じて対応を考えることが望まれます。

 ご質問のお子さんの場合、先天歯はすでに抜歯されていますので、そのあとに生えてきた歯に関するご心配だと思われますが、これは先天歯が過剰歯だったのか、本来の乳歯だったのかで変わってきます。
 下顎の乳中切歯の標準的な生える時期は生後5~9か月ですので、5か月で生えてきた歯が、先天歯(過剰歯)のあとに生えてきた本来の乳歯の可能性もあります。ただし、その歯は黄色く歯ぐきから上に伸びてこないということですので、形成不全が疑われるため、今後の経過を見て対応が必要になるかと思います。また、先天歯が本来の乳歯だった場合には、形成途中であった歯根組織が抜歯後も歯槽骨の中に残って発育を続け、歯根様の組織が形成された可能性もあります。まれですが、歯根未完成の歯が外傷などで抜けてしまった場合に、残った歯根組織が発育を続けたという報告もあります。しかし、これらはあくまでも推測ですので、やはりきちんと検査してもらうのがよいでしょう。歯科受診して、口腔内の診査だけでなく、できればエックス線写真を撮ってもらうとよいでしょう。伸びてこない歯の形や、顎の中で発育中の永久歯の状態などを確認してもらったうえで、今後の対処について歯科医師と相談しましょう。乳児の歯科の診察は、一般の歯科医院よりは小児歯科の専門医療機関で診てもらうことが勧められます。