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ママ・パパの気持ち

Q. 難聴の可能性がある息子を受け入れられません。 (2021.10)

  • (妊娠週数・月齢)3か月

3か月になる第一子の息子は、生まれたときに右耳の外耳道閉鎖および小耳症と診断されました。新生児聴覚スクリーニング検査では、両耳ともにリファーでした。これから大学病院で詳しい検査を行いますが、息子は大きな音にも反応せず、「やはり聞こえていないんだろうな」と思って落ち込む毎日です。最近、少しずつ表情が出てきてかわいいはずなのに、「なぜ耳が形成不全なのか」「なぜ難聴なのか」「どうして私だけ・・・」と、息子を見るたびに憂鬱になってしまいます。「普通の子がよかった」「むしろ産まなければよかったのか」とさえ思ってしまうようになりました。母親失格な私のところに生まれてきた息子が、本当にかわいそうです。最近では「次の子はちゃんと産みたい」とか「この子はいらない」などと、ふと思い、そのたびに「何を思っているのか! そんなはずないだろう!」と叱る自分もいて、とてもつらいです。私はどのようにすれば、前を向いて、ちゃんと息子を受け入れられるようになるでしょうか。

回答者: 帆足暁子先生

 あなたは、こんなにつらい思いを抱えているのに、前を向いてお子さんを受け入れられるようになりたいと思っていらっしゃるのですね。
 そう思えるあなたの「母親としての思い」と、そう思えない、あなたの中にあるさまざまな思いに挟まれることほどつらいことはありません。

 どうしたら、あなたがお子さんをちゃんと受け入れられるようになるか、一緒に考えたいと思います。

 お子さんは生まれたときに診断されたのですね。出産した喜びが不安に変わるつらさ。そして、新生児聴覚スクリーニング検査でリファーと出たときや、聞こえていないと感じたときもつらかったと思います。3か月。どれほどの思いで過ごされてきたのでしょう。

 誰でも健常の子どもが生まれると思って出産します。ですから、あなたにも「なぜ耳が形成不全なのか」「なぜ難聴なのか」「どうして私だけ・・・」「普通の子がよかった」「むしろ産まなければよかったのか」「次の子はちゃんと産みたい」とか「この子はいらない」というようなさまざまな思いが次々と起きてきます。こうした思いがあなたに起きるのは、母親失格だからではありません。思っていたことと違うことが起きたときの、人間としての正常な反応です。現実を否定し、乗り越えようとする本能です。ですから、まずは、あなたの思いは正常な反応だということを理解してください。

 とは言え、現実を否定するということは、お子さんを否定することにつながりますから、その思いを整理することが必要になります。

 「思い」を整理する一番の方法は「言葉」にして、自分の中から外に出すことです。

 「思い」は個人の中にあります。ですから、どのような思いを抱いても自由です。「この子はいらない」という思いであっても、個人の内部に留まっている限りは安全です。でも、それが「言葉」となって個人から他者に「この子はいらない」と発信されると、その「言葉」は他者を傷つけ、自分を傷つけます。それは強いマイナスの感情と共に脳に記憶されます。つまり、不安な状況になると、常にその記憶が引き出されてつらい思いを再体験することになるのです。

 ただ、矛盾するようですが、個人の内部にある「思い」は内部の中で出口を求めてぐるぐる巡り続けます。「思い」はぐちゃぐちゃになり、その「思い」を整理することができません。「思い」は個人の内部から出ることで、自分の「思い」を客観視し、整理することになるのです。

 ですから、あなたへの提案は、守秘義務をもつ心理士や医師、子ども支援センター等の専門職に、あなたの「思い」を「言葉」にして吐き出して、あなたの内部をかけ巡っていた「思い」をあなたから解き放つことです。「この子はいらない」と思ったあなたの「言葉」を受け止め、「なぜそう思ったのか」その理由を専門職と一緒に整理し、そう思わざるを得ない自分を見出したとき、きっと自分で自分を労る気持ちが起きてくると思います。前を向くことができるようになります。

 いまのあなたに必要なことは、あなたが信頼でき、あなたの「言葉」を受け止めてくれる専門職です。その人に、「言葉」にしたあなたの「思い」を受け止めてもらうことで、少しずつあなたはお子さんを受け入れられるようになります。ゆっくり時間はかかると思います。でも、3か月がんばってきたあなたです。否定しようとする自分を叱るあなたです。大丈夫です。自分を信頼してください。