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Q. 夫が新型コロナに感染。妊活はいつからできますか? (2022.8)

そろそろ第二子の妊活を始めようと思っていた矢先に、夫が新型コロナウイルスに感染しました。夫は30代、ワクチンを2回接種していました。39℃の発熱と倦怠感がありますが、基礎疾患はなく、おそらくこのまま軽症で経過すると思います。私と3歳の息子はいまのところ症状は出ておらず、濃厚接触者として自宅で過ごしています。夫の療養終了後、いつから妊活を開始してもよいでしょうか。新型コロナウイルス感染後は、精子の欠乏や損傷が見られるとのニュースを見たことがあり不安です。また、新型コロナの感染に限らず、精子の損傷があった場合、子どもにどんな影響が出るのでしょうか。

回答者: 安達知子先生

 新型コロナウイルスに感染すると、精子数の減少(乏精子症)や精子の運動率の低下が一定期間見られることが種々の国々から報告されています。

 世界的な学術雑誌に掲載されたベルギーの報告では、新型コロナウイルスに感染した120名の男性(平均年齢35歳)に対して、発熱などの症状と治った後の精液中の新型コロナウイルス(RNA)、精液所見(精子数、精子運動率、精子形態、DNA損傷)、血液中の新型コロナウイルス抗体などを調べていますが、乏精子症の頻度は、感染後1か月未満では37%であったものが、2か月以上経つと6%に減少し、精子の状態は回復しています。なお、コロナ治療後には精液中にウイルスは検出されませんでした。

 精子数の低下あるいは、運動率の低下は男性不妊につながるものですが、この影響は一時的なものであり、流行性耳下腺炎、いわゆるおたふくかぜに思春期以降の男性が罹患した際の精巣炎などのように永久的な男性不妊となる後遺症が認められるわけではありません。なお、精子の形態異常などは健康な男性でも一定の割合で認められており、精子に問題があった際には、射精された場である腟内から、受精の場である卵管の先端まで17~20cmほど移動するための運動能力や受精能力も低下します。そのため、問題を起こした精子が正常精子との競争に打ち勝って受精できる可能性は低く、精子の質が低下したことによって先天異常児の出生が増加する心配はまずないでしょう。

 妊娠できるのは1か月に1回の排卵周辺期の数日しか可能性がないことからも、COVID-19の治療が終了し、夫の体調がよくなれば、性交を持っても安全であり、妊活をはじめてよいと思います。