ママ・パパの気持ち
Q. 生後5か月の子の父親。息子のことが好きになれません。 (2023.3)
- (妊娠週数・月齢)5か月
生後5か月になる息子がいる父親です。息子を好きになることができなくて悩んでいます。初めのころは、夜に泣かれることによるストレスが原因だと思い、時間が解決してくれると思っていたのですが、それがなくなっても好きになることができません。息子と接する時間をものすごくストレスに感じてしまうようになり、少し泣き声を聞くだけでイライラして、叫んだり、自分の頭を殴ったりすることもあります。妻を大切にするためにも、私が心から息子を好きになりたいです。アドバイスをお願いします。
回答者: 帆足暁子先生
息子さんが好きではないのに好きになりたい、のですね。あなたの妻を大切にするためにも好きになりたい、と思っているのですね。
あなたは息子さんと接することをすごくストレスに感じています。そして、そのストレスはかなり大きくなってきているようです。
大切なことは二つあります。ひとつは、なぜそんなにストレスなのかを整理していくこと。もう一つはこれからできることを考えてやってみること。
まず、なぜ生後5か月の息子さんがそんなに大きなストレスをあなたに与えてしまうのかを考えましょう。あなたは「少し泣き声を聞くだけでイライラして、叫んだり、自分の頭を殴ったりする」のです。あなたのすべてが拒否しています。でも、それは生後5か月の息子さんに、ではありません。
「息子さん」によって引き出されるあなたが抱えている心の傷です。「赤ちゃん」なのか「泣き声」なのか、あるいはそれにまつわる怖かったり無視されたり、守ってもらえなかったりといったようなことなのか、いずれにしてもあなたにとってつらい記憶です。
人間は自分で抱えきれないくらいつらい体験が起きたとき、それを包みこんで心の底にしまっておくという、自分を守る方法を持っています。ですから、大人に成長していくときにはそのつらい記憶は潜在意識の底にあるので気づかずに前向きに生きることができます。でも、大人になって抱えている心の傷に直結するような出来事が起きてくると、その記憶が「いま」とは関係なく引き出され、それをコントロールすることができなくなるのです。あなたの息子さんへの反応は、単なる「好きになれない」という気持ちからだけでは考えられないくらい、強い拒否です。あなたは子どものころに何かつらいことがあったのではないでしょうか。
そして、次です。過去の記憶を整理するには時間がかかります。ですから、同時に、いま、できることを考えましょう。
あなたの素晴らしいところは妻を大切にしたいという思いです。そのために「息子さん」を好きになりたいという思いです。それを実行することを考えましょう。
どういうときなら、まだ息子さんにイライラしないでいられますか?
これは消去法です。あなたが息子さんをいやにならないシチュエーション(場面)を見つけます。楽しくなくても、叫ばないでいられたり、自分の頭を殴ったりしないでいられるくらいの状況で大丈夫です。それは時間や生活の節目かもしれませんし、場所かもしれません。眠っているときかもしれません。それを記録していくと、あなたが「息子さんを(まだ)受け入れられるシチュエーション」ということが見えてきます。そして、そのシチュエーションのときに息子さんと一緒にいたリ、関わったりするようにすると、結果として、「イライラしないで一緒にいられる体験」を蓄積することができます。その記憶が今度はあなたに「息子さんと一緒にいられる自分」という思いに自信を持たせてくれます。
あるいは、「泣く」ことが恐怖であれば、息子さんが「泣く」前の環境と、泣いた後の環境を分析することで、その条件を変えれば「泣く」ことを少なくすることができるかもしれません。これは応用行動学のABC分析と言われるものです。あるいは、母親に抱かれると安心して泣き止むことが多い時期ですから、できるだけ一緒にいるときには、妻に息子さんを抱いてもらうこともよいかもしれません。
これらはやってみなければ、効果があるのかわかりません。ですから、無理だと思ったとしてもチャレンジしてみてください。効果がなかったら、次は違う方法を考えればよいのです。一番つらいのはどうにもできないとき、自分にやれることが何もないことなのですから。
それから、最後に。
いまは、つらいと思います。あなたの気持ちとは違う気持ちにならなければならないと思っているからです。でも、もしかすると、あなたの心の底にしまってきた心の傷を整理するときなのかもしれません。あなたは大きなストレス状態になったときに、自分を傷つけるようです。たぶん、これまでもそういう傾向があったのではないでしょうか。それはつらいことです。そうしなくてもストレスを対処することができるようになるチャンスでもあります。
ひとりでは厳しいかもしれません。そう思ったときには、ぜひ専門家に一緒に考えてもらってください。息子さんがいることのメリットは、子ども家庭支援センターや保健センターのスタッフが対応してくれるということです。
妻を大切にしたいと思っているあなたです。自分を信頼して大丈夫!