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仕事と子育て

Q. 転園・転校などが子どもにもたらす影響について教えてください。 (2023.7)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

2歳4か月になる娘がいます。娘は1歳半ころから保育園に通っていますが、引っ越しや親の仕事の関係で2回転園し、現在3つ目の保育園に途中入園したところです。今後も、夫婦の仕事の関係上、国内海外問わず、引っ越しや転園、転校が多くなることが予想されます。いまのところ、どの園でも毎日楽しそうに過ごしてはいますが、やはり今回の転園の際は、1回目の転園のときとは違う娘の心の動きを感じました。成長したからだと思いますが、たとえば、登園時の涙や朝のかんしゃくも一時的に増えました。今回のようすを見て、今後、環境の変化が続くことに対して、娘が困難を抱えることもあるかもしれないと感じました。生活環境の変化があったときは、両親も忙しくなりがちなため、子どもの気持ちを置き去りにしてしまうのではないかと不安です。転園や転校など、生活環境の変化が子どもにもたらす影響について、また、親として気をつけるべきこと、声がけのコツなど子どもの心に寄り添うためにできることがあれば教えてください。

回答者: 高橋惠子先生

 両親ともが「海外も含めて引っ越しが多くなることが予想される」お仕事とのこと、子どもさんの成長について心配があるのは理解できます。実際、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「企業の転勤の実態に関する調査」の報告書(2017年10月)によると、全国の企業(正社員が300人以上)での転勤経験者約6,000人が、転勤に伴なう困難として挙げたのは、第一に「親の介護がしにくい(75%)」でした。そして、次には子どもについての問題が多く挙げられています。「子どもが持ちづらい(32%)」「育児がしづらい(53%)」「進学時の教育がしづらい(66%)」などが、親としての切実な問題であると報告されました。また、2019年に約10,000人が回答した別の調査では、6割を超える人が「転勤は退職のきっかけになる」と報告したということです。

 これらの調査結果は、転勤が働く人と家族の人生設計に大きく影響することを示唆しているといえるでしょう。たしかに、親の仕事の都合で生活環境が急に変わることは、子どもには予期できないことであり、時にはリスクにもなりうるとも考えられます。

 親の都合での転居を子どもにとってのリスクにしないために必要なことは、何よりも、両親の転居が多いという人生設計が、子どもの生活を含めて、よく納得できていることだと思います。親の都合による転居が自分にとってもプラスの意味があると子どもが納得できたら、「がんばろう」と元気が出ることでしょう。両親がポジティブでなければ、新しい環境に慣れなければならない子どもは、リスクだけを負うことになります。2歳児にも、両親が子どもの生活も人生設計に入れていることは、伝わると思います。 
         
 そのうえで、子どもが新しい環境で暮らしやすくなるために親が心がけるべきことを、3つ挙げておきましょう。                       
 第一に、転居時は、親は多忙を極めるでしょうが、できる限り子ども中心に生活するように心がけましょう。子どもに無理をさせないことです。子どもが新しい環境に慣れるには、時間が必要だと考えましょう。たとえば、通園を嫌がる日は休んでもよく、通園後しばらくは親が園に留まったりすることも子どもを安心させるには有効です。そして、保育園や学校への編入の時期を、学期の切れ目に合わせるようにすると、園や学校にも始まりの雰囲気がありますので、なじみやすいでしょう。

 第二に、子どもの心身の状態に注意しましょう。まず、子どもの笑顔が減っていないか観察してください。加えて、食欲をはじめ体調はどうかもチェックしましょう。また、園に迎えに行くと喜んで親のもとにやってくるかも確かめてください。親を愛着の対象だと認めているかがわかります。再会時には「がんばったね」としっかり抱きしめてください。そして、子どもの一日の報告には耳を傾けましょう。2歳児でもおとなが補えば十分に会話が成立するはずです。 
                                         
 第三に、保育者や教師との連絡を密にすることです。たとえ国内の移動であっても、保育の仕方をはじめ、言葉使いや生活習慣などにはさまざまな違いがあるはずです。これらを含めて、子どもについて伝えるのは親の役割です。そして、保育園や学校での子どものようすもよく聞きましょう。喜んで通園・通学しているようでも、適応しすぎて無理をしていることもありますので、注意が必要です。