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出産について

Q. 妊娠36週。里帰り出産を産院に断られ、怒りがおさまりません。 (2023.8)

  • (妊娠週数・月齢)妊娠10か月 (36〜39週)

妊娠36週の妊婦です。里帰り先の産院から「メンタル状態が危険でハイリスク妊婦のため、うちでは分娩できません」と言われ、きちんとした説明もなく、分娩予約金を返金されて追い出されてしまいました。院長、助産師、受付の方々の失礼で思いやりに欠けた対応に、とても腹が立っています。改めて話し合いの場を設けたところで謝罪されるとは思わないですし、いまさら謝罪されたところで自分の気持ちが落ち着くとも思えないのですが、このまま自分が一方的に傷ついた形で終わってしまうのが納得できません。この場合、私が取れる最善の方法は何でしょうか? 全部忘れるように努め、お産に集中することでしょうか?

回答者: 帆足暁子先生

 大変な思いをなさいましたね。あなたが今回のことにとても腹が立っているのもわかる気がします。そのあなたが取れる最善の方法ですね。ひとつずつ考えていきます。

 あなたは里帰り先の産院を調べて、その産院を選ばれたのだと思います。それなのに「きちんとした説明もなく」「予約金も返金され」「失礼で思いやりに欠けた対応」で追い出されてしまいました。
 「メンタル状態が危険でハイリスク妊婦のため、うちでは分娩できません」ということは、つまり「産院として私たちはあなたの大切なお産をお引き受けできる能力が不足しています。申し訳ありません。」ということで、「お返しします」というのはわかります。でも、それでしたら、あなたは傷つかなかったと思います。
 そのやりとりであなたは傷ついたわけですから、あなたを尊重し、大切にする気持ちも欠けていたのだと思います。そうだとしたら、あなたにとってその産院はダブルでマイナス要素をもっています。

 「改めて話し合いの場を設けたところで謝罪されるとは思わないですし、いまさら謝罪されたところで自分の気持ちが落ち着くとも思えないのですが、このまま自分が一方的に傷ついた形で終わってしまうのが納得できません」というあなたの思いは、もちろんです。理不尽に傷ついた心は、修復しないとそこから抜け出せなくてつらいからです。では、この産院にあなたは何を求めますか。あなたの傷が癒せる何かがあれば、それを要求することであなたの気持ちは落ち着くかもしれません。でも、あなたがわかっていらっしゃるように、それはとても難しいことなのです。

 あなたは「全部忘れるように努め、お産に集中すること」がよいのかと書かれていますが、それはお勧めしません。なぜなら、あなたの心の傷に蓋をして見ないようにすることは、あなたの心に無理があるからです。無理をすると必ず他の部分に負担が増えます。たとえば、お産を完璧なものにしようとして全エネルギーを集中させてしまうとか。

 私のお勧めは、少し今回のことに距離を取って俯瞰的に眺めることです。

 あなたがその産院を選ばれた理由は、プラスの要素があったからだと思います。でも、実際には能力不足とあなたを尊重する姿勢の欠如という、ダブルのマイナス要素がありました。こういうことは、ネット情報ではわかりません。もし、最後までその産院でお産をされたら、もっと怖い体験やさらに傷つけられることが起きたかもしれません。そのあげくに返金もされなかったかもしれません。
 今回のことがあったからこそ、気づくことができてもっと大変な思いをせずに済んだように思います。そう考えますと、あなたがその産院でお産をしないで済んだことは、あなたにとって、とてもラッキーだったと思いませんか?

 この考え方は、あなたの心の傷を癒すためではなく、事実の分析です。俯瞰的にというのは、視点を変えるということでもあります。傷つき、とても腹が立っているときには、そうは思えないと思います。自分を守ろうとする感情の嵐の中にいますから。でも、少し時間がたつとこの考えがあなたにはとても合理的に思えてくると思います。そして、そう思えたら、無理がなく、あなたは穏やかな気持ちでお産に気持ちが向いていくと思います。大切なことはあなたがお産を楽しめることです。

 もし、ひとりで整理することが難しかったら、担当の保健師さんや信頼できる心理士と一緒に考えてみるのも良いと思います。
 いかがでしょうか。