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Q. 生後11か月の息子の歯が欠けました。今後の歯の形成に影響はありますか? (2023.11)

  • (妊娠週数・月齢)11か月

 11か月の息子がいます。先日「エナメル質形成不全」の疑いがあると診断されました。上の前歯2本がエナメル質の部分が短く、象牙質がむき出しの状態となっています。重症の部類に入ると認識しています。まだ幼いため具体的な対処法はないそうで、日々のホームケアでようすを見ることとなりました。ところが2本のうち1本が、むき出しになっていた象牙質の部分が欠けてしまいました。むき出しとなった象牙質が欠けてしまった場合、今後の歯の形成にどのような影響がありますでしょうか? 前歯が短いままになってしまうのでしょうか? また、ホームケアでようすを見ると言われましたが、具体的なことが聞けないままだったので、どんなことに気をつければよいのか教えてください。

回答者: 井上美津子先生

 生後11か月というと、上下の乳前歯が生えてきているころだと思いますが、上の前歯がエナメル質形成不全の疑いとのこと、ご心配でしょうね。まだ、前歯も完全に生えきった状態ではなく、奥歯も生えていない段階では歯科治療も難しいため、現状では経過をみることになると思われます。象牙質が欠けてきたとのことで、今後の歯の形成への影響をご心配のようですが、欠けた歯が元に戻ることは望めませんが、歯髄感染さえしなければ(欠損やむし歯が神経の方まで達しなければ)歯根の形成は継続して、1歳半頃には歯根も完成すると考えられます。状況に応じて、歯科治療の時期を検討してください。ホームケアでようすを見ることになったとのことですので、食生活や歯みがき、日常の遊びなどで注意した方がよい点などをお伝えしたいと思います。

 エナメル質形成不全は、乳歯でも永久歯でも比較的発現しやすい歯の異常です。乳歯のエナメル質形成不全は、主に妊娠期(胎児期)のさまざまな原因(母体の疾病や栄養障害、ウィルス感染や薬物・ホルモンの影響など)で発現する可能性があり、また早産低出生体重児にも発現しやすいと報告されていますが、原因がはっきりしない場合も少なくありません。歯のエナメル質が、石灰化が不十分で白濁したり茶色く変色して見える場合と、部分的に薄くなったり欠損する場合があり、乳歯の場合は左右対称に発現することが多いです。
 エナメル質は人体の中で最も硬い組織ですが、石灰化が不十分だったり、薄かったり欠損していると、歯はもろくなってしまい、力が加わると欠けやすかったり、汚れが溜まるとむし歯になりやすくなります。
 乳歯のエナメル質形成不全が軽度な場合は、定期的に歯科医院でチェックしてもらいながら、むし歯予防に気をつけてフッ化物の利用などをしていけばよいかと思われます。しかし、形成不全が重度な場合は、乳歯でも歯科治療が必要になる可能性があります。ただ、乳歯にかぶせ物などの処置をするには、歯の萌出が完了して、奥歯のかみ合わせがある程度できてきてからになります。それまでは、やはり歯みがきや食生活でむし歯を予防し、フッ化物で歯質の強化を図る対応になるでしょう。
 ホームケアで気をつけたい点は、まずは糖分の多い飲食物(菓子類やジュースなど)をできるだけ控えることです。また、むし歯予防だけでなく、酸蝕を防ぐためにも、ジュースやイオン飲料などの酸性の飲料を哺乳びんやストローマグなどで与えるのは避けた方がよいでしょう(酸が直接歯に接している時間が長くなり、歯が酸で溶けやすくなります)。歯みがきのときにフッ化物配合歯磨剤を使用するのはお勧めです。うがいができない間は、歯みがきのあとで軽く拭き取ってあげるとよいでしょう。
 上下の前歯が生えてくると、それまでは口遊びとしてなめしゃぶっていた玩具を、歯で噛んで遊ぶようになってきます。硬い玩具ですと、象牙質はすり減りやすく、欠けてしまうこともあるので、弾力性があって硬すぎない玩具を与えるようにしましょう。
 これから生えてくる乳歯も含めて、かかりつけの歯科で定期的に歯科健診や歯みがき指導、フッ化物の歯面塗布などをしてもらいましょう。歯の生え方に応じて、アドバイスを受けたり、気になることを相談していくとよいと思います。

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