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歯とお口のケア

Q. 頻繁に指しゃぶりをしている2歳の娘。歯並びへの影響が心配です。 (2024.1)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

2歳になった娘の指しゃぶりが気になります。以前は寝入るときだけだったのですが、食べているときや両手を使って遊んでいるとき以外、気づくと指しゃぶりをしています。親指の第1関節まで口の中に入れて吸っている状態で、歯並びに影響するからやめさせようとしているのですが、実母から「無理にやめさせようとすると気持ちが不安定になるし、幼稚園に行くようになったらやらなくなる。あなたもそうだった」と言われました。どれくらいまでにやめさせれば、歯並びに影響せずにすみますか? 目安が知りたいです。

回答者: 井上美津子先生

 お子さんの頻繁な指しゃぶりで、歯並びなどへの影響をご心配のようですね。1~2歳ころはまだ言葉でうまく自分の気持ちを表現できないので、不安な気持ちを鎮めたり、手持ち無沙汰なときなどに、指しゃぶりが見られやすいものです。歯並びや噛み合わせへの影響は、乳歯の奥歯が生え揃って噛み合ってくる3歳以降も指しゃぶりが続くと、発現しやすくなります。3歳を過ぎると、幼稚園に入園して友達遊びが増えたり、おしゃべりをすることで自分の意思表示や気分解消なども徐々にできるようになるので、指しゃぶりの時間も減ってくることが多いと思います。様子を見ながら対応していきましょう。

 乳児期の指しゃぶりは生理的な行為と考えられており、手や口の協調動作や口の機能発達を促すものとしての必要性も認められています。しかし幼児期になって乳歯が生え、離乳も完了するころには、しゃぶる行為の機能発達的な意義は失われてきて、外遊びでエネルギーを発散したり、言葉を覚えて周りの人たちとおしゃべりができるようになると、指しゃぶりの頻度は減少してくることが多いようです。
 ただし、1~2歳ころは自立への第一歩を踏み出す時期なので、未知の世界で新しい経験をして、不安や緊張が高まりやすい時期でもあります。指しゃぶりなどのしゃぶる行為が、不安や緊張を鎮めて精神的安定を得るための手段となっていることも少なくありません。また吸啜本能の強い子どもでは、卒乳や哺乳びんをやめることで、乳首の代わりに指をしゃぶる行為が増える可能性もあります。まだ歯科的な影響は少ない時期ですので、見守っていく対応でよいかと思われます。
 指しゃぶりの歯並びや噛み合わせへの影響は、乳歯が生え揃う3歳ころから見られやすくなります。最初の奥歯(第一乳臼歯)が生えてくる1歳半ころまでは、指しゃぶりが歯科的問題につながることはほとんどありませんが、第二乳臼歯が生えて噛み合うようになる3歳以降も継続すると、上の前歯が突出したり、上下の前歯が噛み合わなくなる(開咬)などの歯科的な影響が徐々に見られやすくなります。しゃぶる指やしゃぶり方、しゃぶっている時間などで影響は異なりますが、指しゃぶりが4~5歳まで継続すると、歯並びや噛み合わせに問題が出てくる子どもの割合が高くなります。親指を第一関節までしゃぶる指しゃぶりは最も多く見られるタイプですが、歯並びへの影響はやや出やすい傾向もあります。
 2歳児ですと、まだやめさせるというより様子を見ながら頻度を減らしていくことが大切でしょう。この時期の指しゃぶりは、「不安なとき」「手持ち無沙汰なとき」「眠いとき」などに見られやすいことから、手を使う遊びに誘ったり、手や顔を中心にスキンシップを図ったり、やさしく声がけをして一緒におしゃべりをするなど、指しゃぶりより楽しいことを子どもと共に探していきましょう。就寝時には(保護者に余裕があれば)手を握ってあげたり、添い寝するなどもよいかもしれません。
 集団生活の体験から、友達と遊ぶ機会が増えたり、社会性が発達することなどにより、幼稚園に入ると指しゃぶりをやめる子どもが増えるというのも事実です。ひとりで指をしゃぶっているより、活発に遊んだほうが楽しいとか、他人に見られる自分を意識して自らやめようとする子どもも出てきます。しかし、感受性の強い子どもの場合、慣れない幼稚園での生活で不安や緊張が生じやすくなり、指しゃぶりが続いてしまうこともあります。この場合、やめさせようとすると不安の解消手段がなくなり、より精神的に不安定になることもあるので、園での生活が楽しめるような対応を、園の先生と一緒に工夫する必要があるかもしれません。
 3~4歳になると言語理解も進んでくるので、言葉かけなどで不安の解消も図りやすくなります。指しゃぶりについても、叱ったり、やめるように注意したり、「続けていると出っ歯になる」など脅かすのではなく、「お口を閉じて鼻で呼吸(いき)をすることが大事(健康によい)」ということをやさしく説明して、子どもが自分からやめようという気持ちを育てることが望まれます。4歳を過ぎても継続している場合は、歯科受診して歯科医から説明してもらってもいいかもしれません。また、本人がその気になってもなかなかやめられない子どももいますので、周囲の人達からのサポートも重要と思われます。