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妊娠中の気がかり(体重・食事・病気・体調など)

Q. 妊娠24週。トキソプラズマ感染が心配です。 (2024.3)

  • (妊娠週数・月齢)妊娠7か月 (24〜27週)

妊娠24週の妊婦です。先日、アメリカ産の分厚い牛タンを購入し、焼いて食べました。2切れ目を食べようとしたとき、外側はよく焼かれていましたが、中が少しピンク色だったことに気づきました。1切れ目はソースでわからなかったので食べてしまいました。トキソプラズマに感染しなかったかが心配です。検査をいますぐにでもしたい気持ちですが、どれくらい期間をあければ検査ができるのでしょうか? もし陽性だったらどんな治療があるのでしょうか?

回答者: 安達知子先生

 妊娠中の女性がトキソプラズマという原虫に初感染した場合、トキソプラズマが胎盤を通過して胎児に垂直感染する可能性があります。トキソプラズマは、猫の排泄物や食用の生肉などに含まれるオーシスト(虫卵)を経口摂取することで感染します。胎児への感染率は、妊娠初期は数%から25%程度、妊娠末期になると60〜70%くらいですが、胎内感染が起こった場合でも無症状に経過することは多いと言われます。ただし、妊娠初期の感染ほど重症になる率は高く、重症では流死産となったり、先天性トキソプラズマ症(網脈絡炎による視力障害、脳内石灰化、水頭症、精神運動機能障害など)を発症します。
 現在24週とのことですので、食べた牛タンに明らかにトキソプラズマの虫卵があったとして、感染率は30%程度、そのうち重症になる可能性は10%程度と考えられます。
 ご心配であれば、まずは速やかに血液からトキソプラズマ抗体の検査を受けてください。IgG、IgM抗体検査(ELISA法など)、あるいはIgGアビディティ(avidity、結合力)検査を追加して、胎児の感染リスクを評価します。すでに過去に感染していて、最近の感染ではないと考えられる結果が出れば、心配はありません。まったく抗体が陰性であるか、あるいは最近の感染が疑わしい場合には、2〜3週間空けてもう一度検査を行い、抗体価の上昇などを見て胎児感染のリスクを評価します。ここで高リスクの場合はさらに羊水などからの精密検査を行うことはありますが、専門家による診療が勧められます。胎児に対しては、脳を中心にエコー検査などで状況を観察していきます。検査の結果、胎内感染を強く疑う、あるいは胎内感染と診断された症例では、駆虫薬による治療もあります。
 一般的にトキソプラズマ感染の予防対策として、食用肉はよく火を通して調理すること、果物や野菜は調理時によく洗うこと、野菜などの調理で生肉調理と同じまな板を使用しない、公園の砂場やガーデニングで土などに触れるときは手袋を着用し、よく手を洗うことなどが必要です。なお、人から人へ感染することはありません。