赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバー歯とお口のケア

歯とお口のケア

Q. むし歯になりかけの1歳5か月の娘。夜の正しい歯みがきの方法は? (2024.3)

  • (妊娠週数・月齢)1歳5か月

1歳5か月の娘がいます。奥歯の歯石が気になり歯科医院を受診したところ、前歯の歯間がむし歯になりかけていると指摘を受けました。それまでは、100ppmのフッ素入り歯みがきジェルを使っていたのですが、今回から500ppmのジェルに替えて、歯間ブラシも取り入れるようにしました。
そこで、インターネットで使い方について調べていたら、夕食後の歯みがきのタイミングとジェルの拭き取りについて以下のような情報があり、何が正しいのかわからなくなってしました。

①夕食後は水を飲むだけで、寝る前にジェルをつけてみがき、拭き取らずその後 20〜30分あけて水を飲んで寝る。
②夕食後に歯みがきをして、拭き取らない。寝る前に水を飲む。
③寝る前に水分補給させてから、ジェルをつけてみがく。拭き取らずそのまま寝る。

上記の①~③のうち、どれが正しいのでしょうか? またこれ以外に方法があれば教えてほしいです。

回答者: 井上美津子先生

 歯科を受診して、むし歯のなりかけ(初期むし歯)を指摘されたとのこと、治療が必要なむし歯に進行しないように、歯みがきなどに注意を払っているようすが推察されます。子どもの歯みがきについては、時代とともに指導方法も変化しており、むし歯予防のためのフッ化物の応用の考え方なども少しずつ変わってきているため、どれが正しく、どれが誤っていると言い切れない状況があります。現在、推奨されていることの中から、歯科医とも相談して、自分のお子さんに適した実行しやすい方法を選んでいくとよいかと思われます。
  
 1970年代ごろの子どものむし歯が蔓延していた時期には、乳歯が生えてきたら子どもを押さえてでも無理に歯みがきをする指導が行われていたことがあります。しかし、むし歯予防は歯みがきだけではないことが理解されてきたことで、哺乳習慣や甘味飲料・間食に注意し、フッ化物などを上手に利用することで、できるだけ無理なく子どもに歯みがき習慣を身につけさせる対応になってきています。
 最近でも、「う蝕(むし歯)予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」の2023年版が、歯科の4学会の合同見解として発表されました。以前は6歳未満の乳幼児には低濃度(100~500ppmFくらい)のフッ化物配合歯磨剤が勧められていましたが、2023年版では、よりフッ化物濃度の高い歯磨剤を使用量を守って使うことが推奨されています。2023年版では、2歳以下でも「フッ化物濃度900~1000ppmFの歯磨剤をごく少量(米粒程度)使用する。歯みがきの後にティッシュなどで軽く拭き取ってもよい」と記載されています。ただ、小児歯科医の中には、低年齢児を寝かせて仕上げみがきを行う場合、唾液とともに歯磨剤を飲み込んでしまうリスクもあるということで、500ppmFの歯磨剤の使用を勧めたり、歯ブラシだけで一通りみがいたあとでフッ化物配合歯磨剤を少量付けてみがき、ティッシュなどで軽く拭き取ることを勧める歯科医もいます。歯磨剤のフッ化物濃度や、みがいたあとの拭き取りなどは、フッ素の効果と使用時の安心のどちらを重視するかという面があるので、かかりつけ歯科の先生とも相談して決めていただくことでよろしいと思います。ちなみに、米粒程度の歯磨剤の量では、飲み込んでも大きな問題はありません。また、もう少し年齢が上がって、唾液の吐き出しや、軽く1回うがいができるようになったら、拭き取りは不要です。

 夕食後の水分摂取と歯みがきのタイミングについても、フッ化物配合歯磨剤の効果を高めるためには、歯みがきのあと30分くらいは水分摂取を控えた方がよいとされています。寝る前に水や麦茶を飲ませてから、フッ化物配合歯磨剤を用いて歯みがきをして(必要なら拭き取って)寝かせれば、そのままフッ素の効果が維持できるので合理的です(寝てしまうと唾液の分泌が減少するので、フッ化物がより長く歯の表面に留まります)。ただし、眠くなると機嫌が悪くなったり、何かされるのを嫌がる子どももいます。その場合は、夕食後にフッ化物配合歯磨剤を用いて歯みがきをして、30分は水分摂取を控え、その後は水か麦茶だけにするというやり方でもよいでしょう。お子さんの状況に合わせて、どちらでもよろしいと思います。
 また、歯みがきをしない食後には水を飲ませて食べかすを減らし、2歳ごろになったらうがいの練習を始めるとよいと思います。はじめは、水を口に含んでから「ぺっ」と吐き出す練習をし、少しずつ「ブクブクうがい」の練習をしていきましょう。歯みがきをしない食後やおやつのあとには、ブクブクうがいをすることが望まれます。

 前歯の歯と歯の間がむし歯になりかけているということから、歯ブラシによる清掃ばかりでなく、デンタルフロスなどの補助用具の使用も効果的と思われます。とくに歯間部に隙間がなかったり、歯と歯が重なって生えているような場合、歯ブラシだけで歯間部の汚れを取り除くことは困難ですので、デンタルフロスやホルダー付きのフロスなどを使って、歯間部の清掃を行うことは大切です。

 このようなフッ化物の応用や歯みがき方法への配慮とともに、食生活への配慮も、むし歯の進行抑制には重要です。前歯の歯間部のむし歯は、飲食物の摂取状況との関連も高いものですので、水や麦茶以外の飲み物の摂取状況などを含めて、食生活面での問題はないかもチェックしていただくとよいかと思われます。