産後のこころ(マタニティ・ブルー)
Q. 産後4か月。公的支援も受けましたが、産後うつになり、つらいです (2024.10)
- (妊娠週数・月齢)産後
生後4か月の息子がいます。産後ケアなど公的支援を利用しましたが、息子が2か月のころから産後うつがひどくなり、1か月間乳児院でお世話になりました。現在は、自宅養育の許可が出て、乳児院を退院しました。頼れる親族はいませんが、夫は育児休業をとってくれていて、とても協力的です。これ以上できることが思いつきません。でも息子といることが、毎日苦痛で仕方ありません。「つらいのも眠れないのもいまだけ」とよく言われますが、私は今晩生きるのがやっとです。1年不妊治療をして妊娠がわかったときは、とてもうれしかったのに、勝手な自分も許せません。どうしたら前向きな気持ちになれますか。
回答者: 帆足暁子先生
いま、一番大切にしたいことは、あなたがつらい、ということです。あなたはつらくて今晩生きるのがやっとで、なんとか前向きな気持ちになりたいと思っています。そのつらさを何とかできないか、考えてみましょう。
まず、あなたがつらくない時を見つけます。そして、あなたがつらくないシチュエーションの生活が続けられるようにします。
あなたは息子さんが2か月ころから「乳児院を1か月利用」されました。乳児院を利用されていた間、あなたはどのような気持ちでしたか?
1か月で、自宅養育の許可が出たということは、1か月であなたは子育てができるゆとりをもてたと乳児院で判断されたのだと思います。そして、あなたご自身もその時期はつらくなかったとするならば、乳児院を利用しながら子育てをする方法はあなたに合っているのかもしれません。「今晩生きるのがやっと」なくらいつらいのです。乳児院に連絡をして、いま、利用できるようにしませんか?
また、「あなたの夫は育児休業をとってくれていて、とても協力的」ですね。
その事実は、あなたにとって気持ちが楽になることにつながっていますか? もし、あなたの気持ちが楽になることつながっていたら、あなたに協力している夫のいまのやり方を続けてもらいましょう。でも、あなたの気持ちを楽にすることにはつながっていないとするならば、いまの夫の協力はあなたに合っていないのかもしれません。その場合には、夫にどうしてもらったら、あなたが楽になるのかを探すことであなたが楽になれるかもしれません。
次に、あなたの苦痛がどこから来ているのかを考え、あなたがつらくならずに済む方法を考えます。あなたの苦痛の捉え方を変えたり、違った視点でのアプローチを考えたりします。
あなたは、「息子といることが、毎日苦痛」と書かれています。その苦痛の中で、一番あなたをつらくしているのはなんですか?
息子さんがよく泣くこと? 息子さんが寝てくれないこと? 息子さんがよく飲んでくれないこと? あなたを息子さんが求め続けること? あるいは、初めての子育ての不安? あなたの生活リズムが崩されること? 良い母親になろうとしているのにうまくいかないこと? 子どもを見ているとイライラしてしまうこと?
息子さんのことが一番つらいことでしたら、もしかしたらお子さんは育てにくい気質をもっている子どもかもしれません。生まれてくる子どもの10%は、育てにくい子どもだという研究結果があります。
もし、息子さんが育てにくさをもっているとしたら、これはあなたにも息子さんにもどうすることもできません。産後ケアのような公的な支援ではなく、あなたの息子さんに特化した支援をしてもらいましょう。子育て支援の専門家に相談して、育てるコツを聞いたり、あなたの地区担当の保健師さんに定期的に家庭訪問を頼んだり、保育園やこども家庭センターの一時保育を利用したり、ヘルパーさんを利用して息子さんを見てもらったりなど、できるだけ子育ての専門職にチームを組んでもらって、息子さんの子育てを共育てしてもらいましょう。
また、未就園児のいる子育て家庭の方には、 身近な保育園や幼稚園等を 「かかりつけ園(=マイ保育園等)」として登録すると、 その園で子育ての相談や支援等を受けられるサービスもあります。
あるいは、あなたの気持ちが一番つらいとしたら、子育てではなく、あなたの心の傷が子育てをしている中でフラッシュバックしてつらいのかもしれません。
あなたの心の傷があなたをつらくするのであれば、それはあなたにとってのチャンスと捉えることもできます。たぶん、これまで心の傷にふたをして、がんばって大人になったのです。無理をし続けてきたので、心身のバランスが損なわれてしまったのです。でも、人間はいくつになっても心の傷を癒して安心して生きていきたいと思っています。
ですから、あなたがこれから本当に安心して幸せに生きていくために、このつらさがあるのかもしれません。できれば、あなたひとりで心の傷を抱え込まずに、心理職の専門家で、あなたが信頼できる人を探しましょう。あなたと一緒にあなたの心の傷からあなたを開放してくれると思います。
それから、あなたの「1年不妊治療をして妊娠がわかったときは、とてもうれしかった」思いは真実です。ただ「妊娠できた」うれしさは想像力の世界ですが、妊娠・出産は自分の生活の中で直面する「妊娠した現実」や「子どもを産む現実」「子どもを育てる現実」なのです。イメージと現実との間には、かなりのギャップがあることが往々にしてあります。それは、あなたが勝手だということでは決してありません。
前向きな気持ちになろうとしているあなたです。そう思うあなたなら大丈夫です。