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歯とお口のケア

Q. 2歳。下の歯が上の歯にかぶさっていて気になります。 (2025.9)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

2歳の娘は歯並びはきれいなのですが、ニコッとしたときなどに、下の歯が上の歯にかぶさった状態になります。小さい子は、受け口気味なものだと聞いていたので気にしていなかったのですが、親戚から「上の歯には下の歯と顎を抑える役割があるんだから、このままだと下顎がどんどん成長して顎の出た子になるんじゃない?」と言われました。気になったのでインターネットで検索すると、乳歯のうちにマウスピースでかみ合わせの矯正をしたほうがよいと書いている体験談を目にしました。いずれ生え換わるのに、いまのうちから矯正したほうがよいのでしょうか。

回答者: 井上美津子先生

 乳歯のうちに治すといっても、2歳ではまだ早いかと思います。
 乳歯のかみ合わせの診断は、通常は乳臼歯が生え揃う3歳以降に行います。ですから乳幼児歯科健診でも、1歳6か月児ではかみ合わせの判定は行わず経過をみることとし、3歳児になってから不正咬合の判定をすることになっています。

 「小さい子は受け口気味なものだ」と言われるのも、1~2歳ごろの子どもでは、前歯だけかまたは最初の奥歯(第一乳臼歯)までしか生えていないのでかみ合わせが不安定なため、口を開けて笑ったときなどには下顎を前に出して受け口状態になる子どもが少なくないからです。
 2歳半から3歳ごろに一番奥の第二乳臼歯が生えてきて、乳歯の奥歯がしっかりかみ合ってくる3歳を過ぎると、乳歯列でのかみ合わせが完成します。その時点でも「下の歯が上の歯にかぶさった状態」、すなわち反対咬合が明らかでしたら、乳歯のうちに治療が必要かどうかを検討することも選択肢だと思います。

 乳歯の反対咬合にはいくつかのタイプがあり、その原因もさまざまですが、主なタイプは2つあげられ、1つは骨格性の問題によるもの(上、下の顎の大きさや位置関係に不調和があり、下顎が上顎より前に出て反対咬合になっているもの)、もう1つは歯の生え方などの問題によるもの(上の歯が内側に傾斜していて、下の歯が外側にかみこんでいる場合などで、上唇を下の歯でかむくせが関連していることもあります)です。 また、むし歯と違ってかみ合わせの問題には遺伝的な要因が関わっていることも少なくありません(家族や親戚など近親者に反対咬合の方がいると、発現率が高まります)。

 上下の顎の大きさや位置関係、前歯の傾斜や奥歯のかみ合わせの状態などを診断するためには、歯型を取ったり、頭部のエックス線写真を撮影して検査・分析する必要があります。また装置を用いた治療には、子ども自身の理解、協力が不可欠です(とくに取り外し可能な装置では、一定時間装着しないと効果が期待できません)。かみ合わせの治療を検討する際には、現時点で子どもの理解、協力が得られそうかをよく見極める必要があるでしょう。

 乳歯の反対咬合は、発育の経過とともに自然に改善することもあります。先ほど述べた乳歯が生え揃うまでの3歳ごろまでは、歯や顎の発育によってかみ合わせの改善がみられやすく、乳歯列完成後でも2~3歯くらいの前歯だけが反対にかんでいたり、上下の前歯の先端でかめるような浅い反対咬合の場合には、永久歯に生え換わるころには改善する場合もあります。

 しかし、3歳を過ぎて乳歯のかみ合わせが完成したあとも下の歯が上の歯に深くかぶさっている状態ですと、自然な改善は難しいかもしれません。時には下の歯が上の歯や上顎の発育を抑制してしまう可能性もあります。そのような影響が危惧される場合は、早めにかみ合わせを治したほうが、顎の発育のうえからは好ましいと考えられます。とくに、咀嚼や発音にまで影響がみられる場合は、早期の対応が望まれます。

 かみ合わせの治療についての相談は、3歳児歯科健診を待ってからでも遅くはないと思いますが、できれば早めに歯科受診して、かかりつけの歯科で口腔管理の一環としてかみ合わせの変化などをみてもらっておくといいでしょう。かみ合わせの検査や診断が可能になって、子どもの理解・協力度が向上したら、治療の相談を行ったり、または小児歯科、矯正歯科の専門医への紹介などをしてもらいましょう。

 ただし、前歯のかみ合わせを治すだけでなく、上下の顎の成長発育をコントロールするとなると、永久歯に生え換わったあとまで治療や経過観察が必要になることもあります。とくに、骨格性の問題や遺伝的要因の関わりが推測される場合は、二次成長期(思春期)に下顎の成長が促進する傾向もあるため、長期間の成長発育の予測や対応が必要になります。子どもの負担なども考慮して、治療の時期などについても十分相談、検討するとよいと思います。