歯とお口のケア
Q. 3歳半の子。1歳ごろからフッ素入り歯みがき粉を推奨量より多く使用してしまいました。 (2026.2)
- (妊娠週数・月齢)3歳
現在3歳半の息子がフッ素症にならないか心配です。私自身が子どものころから虫歯や歯並びに苦労したので「息子には絶対にきれいな歯を」と思い、毎日ブラッシングしていました。しかしフッ素の過剰摂取によってフッ素症になることを知らず、1歳ごろから1日3回、950ppmFの歯みがき粉を推奨量よりはるかに多く使用してしまいました。3歳ごろまでは、うがいができなかったので、毎回拭き取りはしていたものの結構な量を飲み込んでしまったと思います。いまさら後悔しても遅いのですが、毎日心配でたまりません。
回答者: 井上美津子先生
1~2歳のころに、推奨量より多くのフッ素入り歯みがき粉(フッ化物配合歯磨剤)を使用していたことで、永久歯に対するフッ素症(歯の形成不全)を心配されているのですね。1~2歳児の使用量としては「米粒大」が推奨されていますが、それより多くの量を使用して、拭き取りも十分ではなかったので、過剰なフッ化物を摂取してしまったのではないかとご心配なのだと思います。
「歯のフッ素症」は、フッ素の過剰摂取によって永久歯の表面に現れる白斑や褐色斑のことで、通常は飲料水のフッ素濃度の高い地域に発現しやすいものです(以前は「斑状歯」と呼ばれていました)。また、歯のフッ素症は健康面での障害ではなく、審美的な障害とされています。フッ化物は化学的にカルシウムと結びつきやすいため、歯の形成期に過剰のフッ化物が作用すると「歯のフッ素症」が生じやすいと考えられています。
フッ化物配合歯磨剤については、うがいや吐き出しのできない低年齢児が使用した場合に口の中に残留する量が問題とされていて、6歳以下の小児(とくに永久歯の前歯の歯冠部が形成される4歳までの小児)に関しては、歯のフッ素症の発現に対してのリスクを回避するために配慮が必要とされています。
WHO(世界保健機関)が2020年に示したフッ化物配合歯磨剤使用へのガイドラインによると、濃度は年齢に関係なく1,000~1,500ppmFが望ましいが、6歳以下の小児では使用量の管理と保護者の監督が重要であるとされています。3歳未満では米粒大(0.1g)で誤飲防止を徹底し、3~6歳では豆粒大(0.25g)で飲み込まないよう監督する、とされています(ちなみに6歳以上や成人の使用量は歯ブラシの植毛部の長さの2㎝位で1.0gとされています)。この使用量ですと、3歳未満児が1,000 ppmFの歯磨剤を全量飲みこんでも、フッ素の体内摂取量は0.1mgとなり、リスクを回避できるといえるわけです。米国医学研究所による1~3歳児(体重13kgとして)のフッ素の摂取許容量は1日に1.3mgとなっています。
ご質問のお子さんの場合で考えますと、乳幼児用の小さい歯ブラシを使用していれば、歯磨剤の使用量は米粒大ではなくても豆粒大程度ではないかと思われ、また拭き取りもしていたので、全量を飲み込んでしまっていたとは考えられません。それらから考えると、摂取許容量に達するリスクはないかと思われますが、まったく問題が生じないと明言することも難しいです。歯のフッ素症ばかりでなく、さまざまな影響の発現には個体差も大きく、体内摂取量が同じでも影響が発現する者もいればしない者もいるというように、個体の感受性などで影響の発現は異なるためです。歯磨剤の使用量と飲み込み量によっては、永久歯に軽微な白斑が現れる可能性は否定できません。米粒大というのも、リスク回避のために極度に使用量を制限した結果だと考えられます。
ただし、毎日一定量のフッ化物配合歯磨剤をそのままチューブから食べたりしない限りは、明らかな歯の形成不全などの健康障害は起こらないと思われます(イギリスでフッ化物配合歯磨剤を毎日食べて歯のフッ素症を起こした子どもの報告がありますが、これは非常に稀な例です)。
また、頭の片隅に入れておいてほしい情報として、「MIH」があります。これは最近、小児歯科の領域で問題になっている歯の形成不全で、第一大臼歯と永久切歯(前歯)に限局して生じるものです。むし歯が蔓延していた時代には気づかれなかった永久歯の形成不全が、むし歯の減少により認知されるようになったと思われます。欧米では21世紀初頭から、日本でも2012年ごろから調査が行われていて、諸外国では5~25%、日本でも12~20%という罹患者率の報告があります。 MIHの発症原因については、さまざまな要因との関連が疑われていますが、どれも確証は得られていず、原因不明とされています。このように、歯のフッ素症以外でも永久歯に突然の形成不全が起こる可能性もありますので、あまり後悔や心配をしすぎず、今後の対策を考えましょう。
まずは、3歳半という年齢に合わせた適切な方法でブラッシングを行ってください。フッ化物配合歯磨剤の使用量は豆粒大(5mm程度)とし、1日2回(就寝時と他に1回)使用しましょう。子ども自身がみがくときは、適量の歯磨剤を保護者が歯ブラシにとってあげ、みがき方を教えるとともに、歯磨剤の吐き出しやうがいを練習させましょう。歯みがき後の飲食を控えることも大切です。
あと、かかりつけ歯科医を決めて、定期的な歯科健診やブラッシング指導などの保健指導を受けていくこともお勧めです。むし歯予防だけでなく、歯並びの相談などにも乗ってもらって信頼関係を築いておけば、万一、歯のフッ素症の徴候がみられた場合にも適切な対応(専門の医療機関の紹介などを含めて)をしてもらえることと思います。