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トップ連載・読み物 インタビューシリーズ第10回 唐澤真弓さん その2

インタビューシリーズ:親も子もトライ&エラー

日々、親ごさんと接しているかたや、子育て奮闘中のかたにお話を伺っていきます。

シリーズ第10回 その2
子育ては「答え」を
自分で作っていく作業

唐澤真弓さん

唐澤真弓さん
プロフィール
東京女子大学現代文化学部
コミュニケーション学科教授

今回のお客様は東京女子大学教授の唐澤真弓さん。それぞれの国の文化の違いが、子育てや教育にどんな影響を与えているのか、それが子どもの心の発達にどう関わるのか、国際比較を研究しています。ところ変われば、子育ての常識も変わるようです。

Part1 正しい子育ての方法はひとつではない
Part2 子育ては「答え」を自分で作っていく作業
Part3 自分の意見を言える子どもに育つには?
Part4 同じであれ、という雰囲気のなかで、自分らしさを大切にするには?

2008年2月8日掲載

編集部:前回は、国によって価値観も違うし、子育ての考え方や方法も違うのだというお話を伺いました。

唐澤:同じ日本でも、時代の流れのなかで、子育ての考え方は変わりますね。
たとえば、以前は抱っこしすぎると「抱きグセがつく」と心配する声もありましたが、最近は、抱っこして泣き止むならどんどん抱っこしましょう、という考え方に落ち着いています。

私たちは、ふだん無意識のうちに「正しいしつけの方法がある」と思ってしまっていませんか?

編集部:そう思って、正しい答えを探そうとします(笑)

唐澤:でも実は、正しい子育ての方法は一つではないんですね。

唐澤真弓さん

編集部:そう考えると、なんだか安心します。

その一方で、迷いも生じますね。子どもへの接し方やしつけの方針がほかの人と違うと、両方とも間違っていないと言われても、とまどってしまいます。自分のやり方がよいのかどうか、子育ての結果はすぐに出ないので、なおさら不安になることもありますね。
たとえば、お菓子を欲しがって泣いている子どもに買ってあげたものかどうかとか、歩きつかれて抱っこをせがむ子にどこまでがんばらせるのかとか・・・毎日の生活のさまざまな場面で迷い、決断を迫られます。

唐澤:正しい答えがひとつなら、誰かに教えてもらえますが、子育てでは答えを自分でつくっていかなければなりません。子育てが難しいのはそこだと思います。

大学の教え子たちにもよく話すんです。「テストの答えは探せばどこかにあるけれど、卒論は自分で答えをつくりださなければならない。それは大変だけれど、きっと将来の子育てで役に立つよ」と。

編集部:ほんとうにそうですね。

唐澤真弓さん

唐澤:「子どもの気質」によっても、接し方は違うと思います。
子どもに何か問題が起こると、世間はとかく母親のせい、子育てが悪かったと言いがちです。でも最近の研究で、子どもの気質によるところも大きいとされるようになりました。
やはり、気難しい子ども・・・なかなか眠りにつかない子や、こだわりが強い子は、育てるのが難しい。
また、こちらから笑いかけてもなかなか笑い返してくれない子というのも、難しい(笑)。
たとえば、一度笑いかけて笑い返してくれないと、もう二度と笑いかける気になれなかったりしませんか? それと同じことが、親子間でも起こると思います。

編集部:そういう子に、親はどう接すればよいでしょう?

唐澤:笑いかけても笑い返さないのは、その子の「気質」「らしさ」と受け止めて、その子が何に喜ぶか反応を見ていくとよいと思います。
笑わなくても、その子なりの表現をしているはずで、そこに注目すれば楽しい時間を過ごせる。
「隣の子はニコニコしているのに、なぜウチの子は?」と考えてしまうと、つらいばかりでなく、本来のその子の良さを見逃してしまいます。
もちろん、ほかの子と比べて参考になることもありますが、決して同じ子どもを育てているわけではない。そのことを心に留めなければならないと思います。


ミニコラム 日本の常識、海外の常識

子どもの癇癪は気をそらすに限る(タイ)

タイのお母さんの話です。
「日本では、たとえばお菓子を欲しがって泣きわめく子どもに一生懸命言い聞かせるお母さんをよく見かけるけれど、タイでは『あっ、面白い電車が通るよ』『あれ? 鳥がいるよ』と気をそらすの。ウソでもいい。子どもは次に楽しいことがあれば、自分が泣いていたことさえコロリと忘れるわ」
たしかに、日本では「わかるまで言い聞かせる」「叱る」というパターンが多いかも?