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幼い子どもの友だちづきあい ~こんなときはどうする? ケーススタディ~

わが子を「友だちの多い子」「人づきあいの上手な子」にと、願う親ごさんが多いようです。
けれど、その具体策については、さまざまな経験や意見が語られていて、「こうすればよい」という方向性はなかなか見えてきません。
そこで、親は子どもの友だち関係についてどう考え、どう対応すればよいのか、具体例を手がかりに、臨床心理士で、ほあし子どものこころクリニック副院長の帆足暁子先生に聞きました。
(※ 月刊母子保健2008年4月号より転載・一部改訂)

ケースその1
友だちの多い活発な子に育てたい。いつから集団遊びをさせればいい?

帆足 1歳代の子に集団遊びをさせようとしても発達的に無理でしょう。1~2歳半くらいのころは分離不安がもっとも強い時期で、その時期に無理強いするのは逆効果。分離不安を強めてしまうことになりかねません。誰かの家に何組かの母子が集まって、母親同士が楽しくおしゃべりしている側で遊ぶのは大丈夫でも、お教室や集団遊びのサークルなどに通うのは負担が大きい。何事も子どもの発達に合わせて行うのが基本です。

――発達に合っているかどうか、育児書などが参考になりますか。

帆足 育児書はあくまで一般論。わが子の反応を見て判断するのがいいですね。発達に合えば喜んで楽しく遊びますが、嫌がるなら合っていないということ。嫌がる子に強制するのはやめましょう。親は、子どもに転ばぬ先の杖を持たせたいと思うものですが、かえって子どもを追い詰めてしまう場合も多い。何かあったときに子どもと一緒に考えていくことが、親にも子どもにももっとも負担の少ないやり方だと思います。

ケースその2
幼稚園などへの入園を控えて、引っ込み思案で新しい環境に馴染みにくいのが心配。

――親は慌てて子どもの集まる場所に連れて行き、「仲間に入りなさい」と背中を押したりしがちです。

帆足 その気持ちもわかります。でも、引っ込み思案な子は「あそこに入って大丈夫」という確信が持てないと入れない。強制するのではなく、その子が「大丈夫」と思えるまで一緒に待ってあげるのがいいでしょう。たとえば、公園や児童館に行って友だちが遊んでいる様子を一緒に見る。お母さんと一緒なら遊べるというなら、母子で仲間に入る。そうして、「幼稚園楽しみだね。新しいお友だちができるかな」と、その子のペースに合わせた方法でゆっくりと幼稚園への橋渡しをしてください。

――親がしてはいけないことはありますか。

帆足  「入園前に絶対にこれだけは」などと、気負いすぎないほうがいい。子どもの不安をあおってしまいます。「ちゃんとやっていけるかしら」「言いたいことが言えるかしら」と心配しすぎないことも大事。親が過剰な不安を抱えると子どもはその「不安」の期待に応えようとします。幼稚園に入れると決めた以上、子どもと園を信じてお任せしようと親も覚悟を決めたほうがいいですね。

――親が自分の気持ちをコントロールできない場合もあるということですね。

帆足 ええ。心配しすぎるのは子どもの成長にマイナスだと心に留めて自分の気持ちを抑えてほしい。そして、なぜ私は不安なのだろうと自分の気持ちに向き合うことも大事でしょう。

ケースその3
公園遊びを始めたばかり。おもちゃの取り合いですぐにトラブルになってしまう。

帆足 とくに2歳前後はトラブルが起こりがちで、お母さんも初心者だから対応に困ってしまうのですが、これは当たり前のことなんです。子どもは1歳から2歳くらいに「自分」と「自分でない人」との区別ができてきて、そのために「自分のもの」という所有意識が芽生えてきます。だから自分のものは貸せないし、一方「自分のものにしたい」という意識も強いので、人のものをほしがるのは「よく育っている証拠」。でも、社会的マナーも必要だから、その二つを分けて考えるといいと思うんです。
誰かのおもちゃを取り上げて泣かせてしまったら、相手の子どもに「ごめんね」と謝ってから「取ってはだめよ」と教えて、相手のお母さんにも「ごめんなさい」と謝ったほうがいい。でも、家に帰ってまで「ダメでしょ!! なぜわからないのっ」と、叱る必要はありません。「遊んでみたかったね。でも、お友だちのだから使えなかったね。残念ね」と、子どもの気持ちを受け止めて言葉にしてあげましょう。

――逆に、わが子が取られて泣かされているのに相手の親子は知らんぷりという場合もあります。

帆足 その場合にきちんと相手の親子に話ができれば一番よいかもしれません。でも、なかなかできないもの。その場合も、わが子の気持ちを受け止める。「いやだね。あとでママと一緒に返してって言おうね」と言葉をかけて、「あなたの気持ちはわかる」というメッセージを伝えてほしいと思います。

――「次はこうしたら」と、具体的なスキルを教えたほうがいいですか。

帆足 結果を求めなければね。でも、「こうしなさいって言ったのに、なぜ言えないのっ!!」と、イライラが増すなら言わないほうがいい。子どもは「こうしなさい」と言われて、その通りに動けるものではありません。が、子どもなりに工夫もする。子どもは体験の中から多くを学んでいるのです。だから、「やり返しなさい」などと頭ごなしに言うのは避けたい。やり返せる子は言われなくてもするし、できないことをやれと言われるのは自分を否定されたという思いにつながってしまうので、子どもとのやりとりの中で、「これはどうかな」「こう言おうか」と、できそうなことを一緒に考えるのがいいと思います。

ケースその4
活発で自己主張が強く、友だちに乱暴してしまう子に何を、どう言い聞かせる?

帆足 友だちに乱暴してはいけないということは伝えなければなりません。でも、「してはいけない」と教えればやらないかというと、そんなことはない。子どもは何度も言われながら少しずつ自分のものにしていくもの。その過程では、ダメだとわかっていてもやらざるを得なかった自分の気持ちをわかってくれる人が必要です。
そもそも、子どものけんかで手を出したほうだけが悪いとは限らない。手を出した理由があるはずで、それはわかってあげてほしい。ただし、親が謝る姿を見せることは大切だと思います。たとえ自分には正当な理由があると思っていても、親が自分のために一生懸命に他人に頭を下げる姿は子どもの心に残って親との関係の基盤になると思います。その一方で、どうしても謝りたくない子どもの気持ちも汲んであげられたらと思います。

――ただ、相手にケガをさせてしまうと、親は思わず強く叱ってしまいます。

帆足 まずは驚いて叱りたくなる気持ちになるでしょう。でも、叱りすぎたと思ったら、「さっきは叱りすぎちゃってゴメンね。お母さんはびっくりしちゃったの。○○ちゃんにケガをさせてほしくなかったの」と、自分の気持ちを説明することも大切です。

ケースその5
大人しくて泣き虫でいじめられやすい子。親はどうサポートすればいい?

帆足 感受性が豊かで自己主張の苦手な子や、嫌なことをされても「イヤ」と強く言えない子などはいじめられやすい。いじめる側も相手の「イヤ!」という気持ちが強く伝わってくると気が済むのに、反応が薄いと「これでもか」とエスカレートしてしまうことがあります。サポートするときに大切なのは、子どもが自分で解決するしかないのだと親は心を決めること。1、2歳のころは抱っこして泣き止むまで付き合ってあげればいいのですが、4歳ころからは友だちとのトラブルも多くなり、子どもも悩むことができるようになる。そのときは「つらかったね」「嫌だったね」と子どもの心に寄り添って、「どうしようか」と一緒に考えてあげましょう。
大切なのは子どもの心に寄り添う立場を守り、「イヤってちゃんと言いなさいっ」などと叱らないこと。子どもだってそうしたいと思ってる。でも、できないからつらいんです。そこをわかってあげて、「いまできることを一緒に考えて見つけよう」とすることでしょう。

――子どもに「ああしようか」「こうしてみようか」と考えられる選択肢を与えるということですか?

帆足 その通りです。そして、「こうしたら、あの子はなんて言うかな」「あの子がこう言ったらどうしようか」と、シミュレーションして予測を立て、最後には自分自身で決定する。そういうやりとりの中で、子どもは自分なりの対応を見つけていくと思います。