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発育・発達

Q. 3歳8か月。先天性心疾患と染色体異常による低身長にホルモン補充療法の効果はある? (2014.2)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳8か月の女の子です。現在、身長83cm、体重10.5kgです(−4D)。在胎37週で生まれ1,700gと小さかったため、さまざまな検査をしたところ、先天性の心疾患と稀少染色体異常があることがわかりました。染色体異常といってもあまり例のないもので先生方もよくわからないようです。ただ、最近になって低身長のことが気になったので検査してもらったところ、成長ホルモン等の分泌には異常がなく、染色体異常のせいではないかと言われました。曲線も徐々にですが右肩上がりではあります。SGAとして治療を受けることも可能だが、このようなケースでは将来的に効果が期待できないから治療はしないとのことですが、もしも改善の可能性があるのなら治療をしたほうがいいのではないかとも思え、悩んでいます。娘の場合、治療を断念するしかないのでしょうか。

回答者: 多田裕先生

 まず、ご質問にある「標準偏差(SD)」について簡単に説明しましょう。これは、同じ年齢の子どもの身長の平均値からのばらつき、つまり分布の幅を「標準偏差」という数値で示し、子どもの身長の高低を同じ年齢の子の平均値からSDの何倍離れているかによってあらわす方法で、SDスコアが(−2SD)より低い場合を「低身長」としています。

 低身長症の原因はさまざまで、甲状腺ホルモンや成長ホルモンなど内分泌系の異常によるもの、ターナー症候群やプラダー・ウィリー症候群など染色体疾患によるもの、あるいは胎児期の栄養状態が悪かった場合や、遺伝的な素因も原因となります。

 また、出生時の身長・体重が在胎週数に比べて大きく下回る赤ちゃんを「SGA児」と呼んでいます。SGA児であっても2〜3歳頃には身長・体重が標準値に追いつく場合も多いのですが、追いつかない子のなかに成長ホルモンが正常に分泌しないことが原因で起こる低身長(「成長ホルモン分泌不全性低身長症」といいます)の場合があり、近年、こうした子には成長ホルモンを補う治療が適用されるようになりました。さらに、成長ホルモンの分泌に異常がない場合も体のほうの反応が悪いために身長が伸びないケースがあり、SGA児で低身長が改善しない場合で保護者が治療を希望する場合には成長ホルモンを外から補う治療が行われます。

 さて、ご質問のお子さんですが、在胎37週で生まれて出生体重が1,700gだったとのこと。37週の女児の平均体重は2,500〜600gとされているので、かなり小さな赤ちゃんで「SGA児」だったことがわかります。

 ただ、その原因が先天性心疾患と染色体異常であることから、成長ホルモンを補う治療をしても効果が低いというのが主治医の見解なのだろうと思います。確かに、そうした基礎疾患があると治療効果は出にくいのですが、ご両親が「少しでも改善の可能性があるなら治療を受けさせたい」と希望されるなら、合併症のないSGA性低身長症のお子さんほどの効果はないかもしれませんが、治療を受けてみるのもよいのではないでしょうか。

 まずは、低身長症に詳しく治療経験が豊富な小児科医師のいる大学病院やこども病院、専門病院などを訪ねて、これまでの発育状況などを伝えて相談してみることをお勧めします。3歳8か月という現在の年齢は、治療を始めるかどうかを考える時期としてはよい時期だろうと思います。