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病気・予防接種

Q. 生後2か月。近所の小児科医に予防接種はまだ早いと言われました。 (2014.3)

  • (妊娠週数・月齢)2か月

生後2か月になり予防接種デビューをするはずでしたが、近所の小児科の先生に早すぎると言って帰されてしまいました。先生は、「ヒブと肺炎球菌は同時接種をしないし、打ったところで大した免疫はできず他のリスクを増やすだけ。私が母親なら生後6か月まで待つ」と言われましたが、それも一理あるのでしょうか? 帰宅後ネットなどで調べてみたのですが、やはり予防接種にはさまざまな意見があるようで、子どものためにもっともよい方法がわからず悩んでいます。

回答者: 横田俊一郎先生

 予防接種についてはさまざまな意見の方がいますので、親ごさんはそれを聞いて迷われることが多いと思います。大事なことは、正確な事実を知って、それをもとに考えることです。間違ったデータや思い込みをもとに発言された内容は、信用できないばかりでなく、誤った判断を生む可能性があることを忘れてはなりません。

 ここで話題になっているヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンによって予防できる病気、すなわち細菌性髄膜炎などの重症細菌感染症がどの程度日本で起こっているかをまず考えてみましょう。

 日本では2008年12月にヒブワクチン、2010年2月に小児用7価肺炎球菌ワクチンが導入されましたが、導入された時点ではこれらの病気がどの程度発生しているかを調べるシステムがありませんでした。そこで、2013年4月に感染症法が一部改正され、髄膜炎を含む侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症が全数把握疾患に決められ、報告を義務づけられました。しかし、これ以前の全国的なデータはありません。

 そんななかで、鹿児島県では鹿児島大学が中心となって、2007年から全県下の細菌性髄膜炎を把握する事業が始まっていました。「鹿児島スタディ」と呼ばれ、鹿児島大学小児科のHP(※1)から内容を見ることができます。

 このデータや他の県のデータをまとめて考えると、ワクチン導入前の日本では年間約1000例の小児の細菌性髄膜炎が発生し、原因は約6割がヒブ、約3割が肺炎球菌によるものと考えられます。また、ヒブ髄膜炎の2〜5%、肺炎球菌髄膜炎の10〜15%が死亡し、生存した子どもの10〜15%に何らかの後遺症が残ります。

 また、乳児のどの月齢に多いかという問題ですが、生後3か月を過ぎると発生が増え、生後6か月から1歳までにもっとも多く見られることが、厚生労働科学研究で示されています(※2)。生後6か月から接種を始めるのでは、免疫ができる前に多くの乳児が感染する可能性があります。

 ワクチンの導入でどの程度髄膜炎が減ったかは、上記の鹿児島スタディできれいに示されています。ヒブ髄膜炎は90%以上減少し、肺炎球菌髄膜炎も減っていますが、ワクチンに含まれる7種類以外の型の菌による感染症が残っているので7価ワクチンから13価ワクチンに変更されることになりました。

 最後に副反応ですが、厚生科学審議会・ワクチン分科会副反応検討部会という部会が副反応をまとめていて、最新のものは厚労省のHPから見ることができます(※3)。

 ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンとも報告頻度は0.005%程度、死亡例もごく少数ありますが、因果関係は証明されないものがほとんどです。この時期に多い乳幼児突然死症候群(SIDS)にたまたまワクチン接種が重なった可能性も指摘されています。ちなみに、これらのワクチン接種が始まってからもSIDSの発生頻度は減少し続けていますので、ワクチンとSIDSに因果関係があるとは考えられません。

 諸外国は日本よりずっと先にこれらのワクチンを導入していて、その結果が多数報告されています。それらによると大きな効果が示されており、副反応も問題になっていないという事実も大切な判断材料だと思います。

 これらの事実を確かめて、子どもにとって何がいちばん良いかを判断していただければと思います。