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発育・発達

Q. 臍帯のねじれによる栄養不足のためSGA児でした。発育への影響はありますか。 (2014.7)

  • (妊娠週数・月齢)0か月

予定日を3日過ぎて生まれましたが、出生体重が2,000gほどしかありませんでした。臍帯がねじれていて胎児に栄養が十分にいかなかったそうです。こういう赤ちゃんの場合、今後、何か医療的な対応が必要になるのでしょうか。また、成長や発達に何か影響を及ぼすことがありますか。

回答者: 多田裕先生

 生まれたときの体重が2,500g未満の赤ちゃんを「低出生体重児」といいますが、その原因によって大きく2つの種類に分けられます。

 ひとつは、在胎週数が短かったために発育が未熟な状態で生まれてくる場合で、「早産児」と呼ばれます。

 もうひとつは、予定日近くまで母親の胎内にいたのに何らかの原因で大きくなれなかった場合で、こうした赤ちゃんのことを最近では「SGA児」と呼んでいます。早産児も在胎週数に比べて発育が悪いとき、こう呼ばれます。

 早産の場合も同様ですが、予定日近くに生まれたSGA児も、母体側の疾患や、胎盤や臍帯などに何らかの原因や理由があったためなのか、あるいは赤ちゃんの側に何か要因があったためなのか、本来の発育ができなかった原因をきちんと調べることが大事です。ときには、赤ちゃんに心臓疾患や染色体異常など基礎疾患が潜んでいることもありますし、もともと遺伝的に小柄な体質の赤ちゃんだということもあり、それぞれの原因に応じた処置や対応が必要だからです。

 ご質問の赤ちゃんは出産予定日を過ぎて生まれたのに体重が2,000gしかなかったとのこと。臍帯がねじれていたことが原因で胎盤の血液が臍帯を通して胎児に十分に流れなかったことから栄養不足になり、発育が阻害されたのだと主治医が診断しているので、出生時の体重が少なくなるような他の異常はなかったのだろうと思います。

 胎児期に栄養不足の状態が長く続くと、頭や脳など体のもっとも重要な部分の発育に栄養が使われて、他の発育、とりわけ皮下脂肪の蓄積が不十分なまま生まれてくることになりがちです。

 そうした赤ちゃんに出生後に生じる、もっとも大きな問題は低血糖です。SGAで小さく生まれた赤ちゃんは皮下脂肪などのエネルギー源の蓄えが少ないうえ、前述したように体の大事な部分は発育しているのでエネルギーを使うため、栄養が足りなくなって低血糖になってしまうことがあるのです。

 低血糖になると、けいれんや無呼吸が起き、のちに発達が遅れたり、赤ちゃんの健康に悪い影響を与えることがあります。それを防ぐため、自力で十分な栄養摂取ができるようになるまで点滴や早期の授乳などで栄養を補う処置が必要です。

 また一般的に、早産で小さく生まれた赤ちゃんは肺の機能が未熟で酸素が十分に取りこめなかったり、体温が維持できなかったり、さまざまな問題が起きやすいため、保育器に入ったり、必要があれば酸素を補ったりし、赤ちゃんの状態を注意深く見ていくことにしています。しかし、ご質問の赤ちゃんのように予定日近くで生まれた赤ちゃんは、体重が少なくても体の機能は成熟していることが多いので、生まれた直後は観察のために保育器に入ることがありますが、合併症がなければ通常は早期にコット(赤ちゃん用のベッド)に出られます。

 新生児期に異常が見られなかった赤ちゃんは、その後医学的な処置が必要になることは少ないのですが、まれにではありますが、赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼすような合併症や、先天的な病気や異常が潜んでいることもあり、小さく生まれた赤ちゃんは1歳くらいまでの間は定期的に医師の経過観察を受けて、発育・発達が順調かどうかを確認してもらうことが大切です。

 その時期を過ぎたあとは、長い目で大らかに成長を見守っていけばよいでしょう。SGA児として生まれた赤ちゃんの身長は約9割が2、3歳までに標準の範囲に入ります。しかし、約10%が標準に追いつかず、そういうお子さんは大人になっても小柄なままでいる可能性が高いことがわかってきました。そこで最近では、家族の希望があり医師が適用であると判断した場合には、成長ホルモンで治療できるようになりました。経過観察を受けていくなかで、医師に相談していただくといいでしょう。

 その一方で、小さく生まれた赤ちゃんが出生後に過剰な栄養を摂り続けて肥満になると、将来、生活習慣病になるリスクが高まるともいわれています。そうしたことも頭の片隅に置きながら、しかし、あまり心配せずに子育てを楽しむことがお子さんの成長にも良い影響を与えるように思います。